マツダ デミオ 「俺の妹がこんなに可愛いわけがない  デミオ 15S」のユーザーレビュー

zato787 zato787さん

マツダ デミオ

グレード:15S ツーリング(AT_1.5) 2018年式

乗車形式:試乗

評価

4

走行性能
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乗り心地
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燃費
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デザイン
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積載性
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価格
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俺の妹がこんなに可愛いわけがない  デミオ 15S

2018.10.19

総評

「ポン付け排気量」

とでも言うべきか。 他は全然変わらないのに、メリットの方がデメリットを上回っている。ライトサイジングで、どんな場合でも燃費がよくなるとは言えないが、運転はより楽しくなった。デミオの1500化は論理的な帰結であり、かなり前から、次期アクセラの生産タイミングに合わせての切り替えが決まっていた。 現行アクセラは、開発費用もかけ過ぎだったが、生産費用も高い。マツダのクルマの中で、ロードスター(とRF)の次に利益が薄いのがアクセラであり、アクセラより台数が出るデミオに1500エンジンを継続活用することで、総合的な利益率の向上を狙ったのである。

今回は、「なぜ1500だけに切り替えたのか」という理由を、販売側面から追っていくことにする。

「デミオ、いいけど高いからね」

珍しくないお断りの言葉だが、その言葉の裏には、「内容の割に高い」という意味が十分に含まれている。 Vits1.0のような、明らかな廉売モデルに比べて、物理的に「高い」と言われるならまだ理解できる。 販売側だってもう少し説明の仕方も、売り方も工夫できるだろう。予算第一でクルマを選んでいる人に対して、実売価格で20万円以上も価格差のあるデミオが選ばれるケースはまずないからだ。

問題は、「高い」という言葉の真意が、「お買い得じゃない」と言ってるケースだ。デミオを理解している人ならば、デミオは内容の割に高くないと思っているのだが、それが全然伝わらないのである。

その主たる原因は、アクアとNote e-Powerの存在である。価格面、性能面での本来のライバルはXDで、何故と思うかもしれないが、ディーゼルには抵抗のある人もいるし、短距離運用が多いコンパクトカーにとって、ディーゼルが適切なのかと疑問を持つユーザも少なくない。 では、XDより28万円安いガソリンモデルを試乗してみると「なんだか遅くて、価格なりの差があるのね」と言われる。翻ってハイブリッドとガソリン1.3を見積もり価格で比較して安いことはわかるが、1.3には絶対的なお得感が足らないのだ。無茶な話に見えるのだが、「買わなかったユーザ」の行動を追った結果、こんな理由があったのだ。上級グレードだと、動力性能の余裕のなさがさらに残念な結果につながる。


 デミオ15 Touring 特別仕様車
 廉価モデルと同じアンダーパワーが残念だった。


排気量拡大によって、「ゆとりあるスムーズな走りの実現」かつ、「エンジン効率の良い領域を有効に活用できるから、アクセルの踏み込みやシフトダウンの頻度が減少し、実用領域における燃費の向上にも貢献します」という広報のコメントも、それなりの説得力を持つと言えるだろう。 SKYACTIVE-Driveの変速プログラムを更新できていないなど、いくつかやり残したことは残っているが、低回転でシフトアップできるため、車内はかなり静かになり、動的能力も向上したから、試乗するとすぐに出力の余裕と静粛さの向上を感じることができる。 これまで比較されていたアクアも、e-Powerもエンジン音が耳障りでうるさいことが欠点である故に、対抗可能な商品力を高めることに成功したと言えるだろう。ハイブリッド群との燃費の差は、実用燃費に近いWLTCと顧客に説明している。 ハイブリッドの実用燃費がカタログ値の半分も行かないことは、ユーザも既に知っているから、一定の説得力はあると思う。


 デミオは実燃費がよく、しばしばカタログ燃費を発揮する。


一般的とは言えないが、お勧めしたいグレードは15SのMTである。乗りだし価格は15MBよりも安いのに、同等のトランスミッションを楽しむことができる。 レギュラーとハイオクの違いはあれど、基本的なエンジンの特性は同じで、6500回転までちゃんと回るので、15SのMTでのドライブも同様に楽しい。スイフトスポーツより約50万円も安い点も魅力だ。 マツコネも装備されるので、ナビ・バックモニタもわずかなオプション費用で装備できて、実質的な乗り出し価格が安い。 970kg/110馬力と、パワーと重量のバランスがいいから、公道でのドライビングが楽しく、レギュラーで燃費が良いこともお財布に嬉しい。

2014年から市場に展開されている豊富なアフターパーツの多くが使えるので、カスタマイズの範囲も広く、MTの運転を安価に楽しむクルマとして最高の一台だと思う。

マツダの末妹の走りの楽しさは健在である。

満足している点
前席優先ながら、実はそれなりに使える後席、まあ許せる広さの荷室、コンパクトカーの中でも抜きんでたバランスと操安性の高さ、特徴的なデザインなど、デミオがこれまで持っている長所はそのままである。 フロントの重量増は、2台並べて乗り比べた場合のプラシーボ効果を除けば、かなりわかりづらいレベルの差でしかない。


 デミオ15S Touring

排気量アップはメリットの方が大きい。エンジンを1.5に変更した結果、出力の増大に伴う実用回転数の低下とエンジン騒音・振動の低下と、1速→4速までの変速タイミングが短くなった。1500になった明確な違いは、「静かで他のコンパクトカーより速い」ことですぐに体感できる。 1.3では各ギアでもう少し上の回転数までひっぱらないと有効な出力を発揮できないため、変速が遅くなり、エンジンノイズが他車と同様に室内に入り込む傾向があったが、1.5ではより低い回転域で、短時間でシフトアップできるようになった。 排気量拡大の効果は、加速時の余裕としても感じられる。 高回転まで回した時のエンジン音は快音ではないが、他のコンパクトカーのエンジン音と比べて不快な音ではなく、平均的なマツダの4気筒の音なので不満はない。


エンジンは、ほぼアクセラと同じもので、違いは、排気管の構造とECUの設定が調整されているだけで、それ以外は同じスペックである。

デミオ用
110ps /6000回転 14.4kgm/4000回転

アクセラ用
111馬力/6000回転 14.7kgm/3500回転

SkyActiveの代名詞たる、4-2-1集合排気管はデミオには搭載されていない。それ故に、低速トルクはアクセラ用エンジンに劣っているが、スペックはともかく、アクセラの生産コストが高いのは、こういう「見えない拘り」の積み重ねであり、アクセラより200kgも軽いデミオならば、4-2-1排気管を搭載せずとも、必要な出力は十分に発生できる。

デミオは、特別仕様車の内装のレベルが似合うクルマになった感じで、ちょっと余裕のあるコンパクトカーが欲しいというニーズに良くマッチすると思う。 トヨタ、日産のハイブリッド車に比べて、安全性、走りの素直さ、総合的な静粛性において、1.5になったことで優れていると感じてもらえるだろうから、ハイブリッドに高いお金を出したくないと思うユーザは、デミオを選んでくれるケースが増えそうである。  今乗っている1.3をわざわざ売りに出してでも買いかえるほどの差はないが、1.3と1.5の価格が同じだという条件で考えれば、1.5の方が優れている。


 デミオ15S Touring

MT車の比較も気になると思う。 ハイオク仕様の15MBと比べると、15MBは、圧縮比が12→14に上がり、排気管も4-2-1となりスポーツ度が増すが、最高出力、最大トルク発生回転数は、それぞれ6000回転、4000回転と同様である。 ハイオク仕様らしい、爆発力の高さと6000回転を超えてもパワーが垂れないのが15MBの魅力だが、MT車のギア比は同じだし、高回転の特性もパンチ力こそ劣るが、出力差の数値が示す通り、両車に大きな差はなく6500回転までちゃんと回る。

ロードスターより軽い車重に同等クラスのエンジンを積んでいるので、圧縮比12.0のレギュラー仕様でも十分に走りを楽しめる。15MB(MT)との価格差は思いのほか大きい。15S(MT)149万円にお勧めの8.5万円のLEDオプションを加えたとしても15MBの156万円と同等レベルの価格なのだ。 15MBはモータースポーツ用のベース車の位置づけだから、実用車として必要な装備がほとんどついていないにも関わらず、この値付けである。 普段使いをする条件で比較すれば、マツコネが標準で、オーディオもナビもバックモニターも搭載できる15Sの方が一般的な使い方にずっと向いている。 LEDオプションをつけると、オートエアコンとLEDヘッドランプも付くから、その差はさらに広がる。


 デミオ15S(MT)


不満な点
デビューから4年で熟成されているし、1500化による大きなネガはない。このクルマは、1500で走らせることを前提に設計されたクルマだからだ。

製造コストのことを考えなくて良いならば、CX-3に実施した改定を転用すればもっと改善できるところはある。しかし、販売戦略を考えると、全ての装備を上級車種と同じにすることはできない。 何もかもCX-3と同じにしたことが、マーケットでどんな愚かな結果を招くかをマツダは学んだから、今回の改良ではCX-3に実施した数々の改良は、デミオには採用されなかった。

だから、CX-3と同様にドアの厚みを変えれば、リアシートに発生するゴロゴロしたロードノイズが静かになることはわかっているし、駆動系の振動周波数とボディの振動周波数が揃う周波数に制振をすれば、室内をもっと静かにできることもわかっているけれどあえてやらなかった。 快適装備が追いつかないのは仕方ないが、安全装備においても、最新のプロセッサを搭載した夜間対人認識機能は、デミオの搭載が見送られたことに失望の声は上がった。 私も安全性には最大の装備をつけるべきだとは思うが、価格上昇が許されない前提では、高価な装備が搭載できないのは当然で、デミオとの差別化が重要課題になっているCX-3の立ち位置からみても、デミオに上級車種と同等の装備は与えづらい実情がある。


  デミオハンドブレーキ
  CX-3に採用されたセンタコンソール、電動パーキングブレーキは搭載されない。

この新プロセッサを含むi-ACTIVESENSEシステムの納入原価が高いのは、CX-5以上の価格クラスのクルマに搭載するために開発された装備であるからで、そもそもCX-3に搭載することにすら議論があったのだ。 CX-3は思い切ってレンジを変えねばならない理由(「ビリギャルだったCX-3が生きる道」参照)があるから、あえて搭載したわけで、価格を変更しないデミオに搭載するのは難しい。

そういう、CX-3と比べた「残念な格差」を除けば、デミオ1.5ガソリンのネガは、さして大きくない。 初期ロットで気になったのは、1500ガソリンに合ったSKYACTIVE-Driveの設定が十分できておらず、SKYACTIVE-Dと同じ変速プログラムを載せたことによる、変速タイミングの問題くらいだ。 SKYACTIVE-D用の出力ベースで変速タイミングを設定しているため、2速→4速の間でシフトアップするタイミングが速いのだが、それも致命的なネガではなく、修正することは難しくない。

SKYACTIVE-Driveは、必要トルクの増大に応じて、キックダウンの処理を行う制御が入っているが、15Sも平坦地では、時速38km以上では4速にシフトアップされる。4速で38km/h~50km/hで加速を必要とするためにスロットルを少し開くと、ガソリンエンジンでは発生トルクが小さいため、2秒程度反応がほとんどないまま、3速にシフトダウンする。 この2秒の反応劣化で、ドライバーがスロットルを踏む量が必要以上に増えて、2速にキックダウンすることも起きる。 これは、マツダが嫌っている「躍度が変化する」小型車の代表的な動きだ。 13Sの変速プログラムではそのようなことは起きなかったし、Sportモードにすれば、使用する回転域が上がるため、同様な問題起きない。 これは、ハードの問題ではなく、SKYACTIVE-Driveのプログラムの問題で、変速制御を修正すれば治る問題なので、次回のアップデートでプログラムが更新されるだろう。


  デミオ15S Touring SKYACTIVE-Drive変速機

心配になる燃費は、1.3の実用燃費が優れていて、60km/h程で有料道路を走ると、25km/Lくらい走って、カタログのJC08と同等レベルの高い燃費性能を発揮できていた。1.5化されたことで、低負荷領域の巡航では燃費は排気量相応に悪化するものの、市街地での走行や高速道路の走行では、ライトサイジングの効果がでて、実燃費は1.3と同等レベルに収まっている。

今回の年次改良は、ガソリンエンジンの排気量が1500ccになったことが主な差異であり、デミオより新しい設計のクルマと比較したり、在来からあるネガを述べても意味はないと思う。

初めてデミオを買おうと思った人は、グレードの選択に悩む可能性があるかもしれない。
しかし、対価に対する満足度で選択する方法で見ると年次改良前と選択肢は変わらず、15SにLEDのメーカーオプションを加えたモデルか、15S Touringベースの特別仕様車がお買い得だと思う。もう少し豪華な内装が欲しくて、革シートがお好みならば、L Packageを買っても後悔はしないと思う。 もし、ATでなくとも良いというならば、本当にお勧めしたいグレードは、15SのMTだ。


デミオ L Package内装
ウレタンがシート内部に上手く配置されている

デザイン

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走行性能

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乗り心地

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積載性

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燃費

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価格

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故障経験

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