ホンダ ZR-V 「シビッククラスのジャストサイズSUV」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

西村 直人
西村 直人(著者の記事一覧
交通コメンテーター
評価

4

デザイン
3
走行性能
4
乗り心地
4
積載性
5
燃費
4
価格
4

シビッククラスのジャストサイズSUV

2023.1.26

年式
2023年4月〜モデル
総評
ボディサイズからして現行型シビックがベースだ。日本市場にもジャストフィットする高いまとまり具合で、実際、混み合った都市部から高速道路まで手の内に収まる安心感がある。走行性能の高さをうたうSUVは多いが、ZR-Vは徹底的にオンロードに的を絞り、背の低いスポーツモデルのような俊敏さを持たせた。シビックタイプRを血筋に持つだけはある。4WDでは雪道での走破性能を高めている。
満足している点
全長4570mm、全幅1840mm、全高1620mmと日本の道路で扱いやすいボディサイズである点。加えて、運転席からの視界がとても広いから、毎日の移動が楽しく、そして安全になる。現行のフィットからはじまった死角の少ない開けた視界は、どのモデルでも好評だ。なかでもZR-Vでは着座位置を人間工学上、理想とされる600mm台後半にすることで乗降性能も高めた。後席での開放感も高い。
不満な点
じつはウィークポイントらしい点が見つからない。たしかに、ベースであるシビックにしても車両価格が高いとの声があるが、装備内容を確かめてみると競合車よりも標準装備が多いことから、横並びにすれば差額はごく僅かだ。筆者が気になるのは、フロントデザイン。グリルの形状がどうもボディ全体のしなやかさと逆行していると感じてしまう。この先発売されるであろう、後付けパーツに期待したい。
デザイン

3

全体的なシルエットはオーソドックスなSUVそのもの。塊感が強く、左右対称のデザインが強調されているので安定感も高い。とくにリヤセクションはボテッとなりがちなSUVのなかでも適度なシャープさがあってスマートだ。インテリアデザインも昨今のホンダ流で極めてシンプル。海外市場では質素が過ぎるとの評価もあるようだが、日本市場ではむしろ落ち着いていて良いとの声が多い。
走行性能

4

直列4気筒2.0L直噴エンジンに2モーターシステムを組み合わせたe:HEVと、直列4気筒1.5Lターボ+CVTの2本立てだ。e:HEVにはZR-V専用のドライブモードとなる「スノーモード」を国内ホンダ車として初搭載した。1.5LターボはVTEC機構を搭載し高回転域までパワフルだ。しかし、ZR-Vのキャラクターには電動モーター駆動によるトルクフルなe:HEVが似合う。
乗り心地

4

フロントにストラット式サスペンション、リヤにはマルチリンク式サスペンションを組み合わせた。このマルチリンク型は、事実上の従来型である「CR-V」の機構をベースに、ZR-V向けにブッシュ特性からバネレート&ダンパー減衰力を最適化して搭載した。e:HEVは終始しなやか。後軸重の増加が効いている。1.5Lターボは全車速域で軽快な乗り味。とくにFFモデルはその傾向が強い。
積載性

5

じつに使いやすい。床面がフラットなだけでなく、左右側面の張り出しが対称なので、たくさん積み込んだり、大きな積荷も楽に収納できる。地上から開口部までは645mmと、このクラスのSUVにしては低いから上げ下ろしも簡単だ。ラゲッジルーム長は後席を倒せば1590mmと長く、左右ホイールベース間も1030mmと幅広い。9.5インチのゴルフバックが3個収納できる。
燃費

4

2.0Lエンジンが直噴化されたシビック/ZR-Vでは、エンジン自体の熱効率をポート噴射時代のピンポイントから中〜高回転域まで拡大したことで、e:HEVならではのエンジン直結モード時の燃費数値がグンと伸びた(最高で実測24km/L)。平均車速13km/h程度の市街地走行でも実測で20.0km/Lを超えるから、大容量バッテリーを搭載したBEVと並ぶLCA換算でのCO2排出量だ。
価格

4

294万9,100円〜411万9,500円がZR-Vの価格帯だ。1.5LターボのFFで300万円を切っている。このご時世、300万円は確かに高額だが、先進安全技術群である「Honda SENSING」は標準装備だし、電動開閉式のパワーテールゲートまで付いてくる。上級グレードの装備もオプション装備で選べるから、必要なものだけチョイスすれば良い。選択の幅はそれほど大きくないが、満足度は高いはずだ。
西村 直人
西村 直人
交通コメンテーター
WRカーやF1、MotoGPマシンのサーキット走行をこなし、4&2輪のアマチュアレースにも参戦。物流や環境に関する取材を多数。大型商用車の開発業務も担当。国土交通省「スマートウェイ検討委員会」、警察庁「UTMS懇談会」に出席。自動運転技術の研修会(公的/教育/民間)における講師を継続。警視庁の安全運転管理者法定講習における講師。近著は「2020年、人工知能は車を運転するのか」(インプレス刊)。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員日本自動車ジャーナリスト協会会員
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