ホンダ フィット 「1.5Lのガソリンモデルでも十分な走り」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

西村 直人
西村 直人(著者の記事一覧
交通コメンテーター
評価

3

デザイン
4
走行性能
3
乗り心地
3
積載性
4
燃費
4
価格
3

1.5Lのガソリンモデルでも十分な走り

2022.11.28

年式
2020年2月〜モデル
総評
コンパクトカーは難しい時代になった。競合モデルが増えたこともそうだし、軽自動車がより豪華で快適に、そして安全になってきたことから、価格面での追い上げも食らっている。ただ、フィットは初代からMM思想(N360から貫かれている居住空間を広く、メカ部分を最小にする)を武器に、時代とともに進化してきた。センタータンクレイアウトによる空間の活用もそのひとつだ。コンパクトカーに道具としての高い実用性を求めるならフィットのガソリンモデルは十分な性能。価格面でも満足できるはずだ。
満足している点
ほのぼのとした雰囲気そのままのモデルだ。装備、走行性能などからは過剰と思われる部分はすべて排除され、日常の運転、最高の移動手段としての役割を果たせるよう、しっかり基本を見つめた車作りがなされている。一見すると薄味だが、日々の相棒として使っているうちに身体にスッとなじんでいく、そんな印象だ。フロントウインドの左右方向視界を先代の69度から90度へ拡大させ、これを「パノラマフロントウィンドウ」と名乗るが、言葉に偽りなく目の前に広がる景色はまさにパノラマだ。
不満な点
過剰でないということは、ユーザーにとっては物足りなさを感じる。ボディカラーにしても、パキッとしたカラーリングはなく、当時流行のアースカラーと呼ばれた、ほんのりとした色合いが多い。インテリアにしてもシンプルを好む層には受け入れられるが、メーター周りは使われているフォントの問題もあり、どこかスカスカ感が否めない。水平基調を目指した視界はたしかに広く快適だが、デザインとしては凝ったものではないので、実用車っぽさも感じる。少しだけ強い個性がどこかにあれば良かったと思う。
デザイン

4

初代フィットのイメージが随所で重なる4代目。隣に並べてみれば違いは歴然だが、4代目の特徴であるLEDヘッドライトの造形は初代(こちらはハロゲンバルブ式)をイメージさせるし、全体のシルエットにしても各部の曲線をうまくつなげた表現方法にはやはり共通項がある。眼力とボディデザインが高い次元でバランスしているあたりに、4代目が初代とオーバーラップしたのだ。この標準モデルから最低地上高を25mmアップさせ樹脂製アーチモールを前後フェンダーに備えたのが「CROSSTAR」だ。
走行性能

3

直列4気筒1.5Lは118PS/14.5kgf・m。改良が加えられたCVTとの組み合わせにより、市街地から高速道路まで1人ないし2人で移動するには実用十分な動力性能をもつ。エンジンは各部の摺動抵抗を下げつつ、電動サーボ式油圧システムをアイドリングストップ時だけでなく、走行時にも使用することで、機械式油圧システムの負荷を減らし燃費数値を改善。CVTにはアクセルペダルの踏み込み量に応じてエンジン回転数が段階的に向上する「ステップアップシフト制御」を組み込んだ。
乗り心地

3

全般的にソフトな足回りだ。しかし、ロールはじんわり起こり、ピッチングも急激ではないので落ち着いた印象が強い。CVTの制御が改善されたことで走りにリズムが生まれたことから、滑らかなアクセルワークを受け付けるようになった。よって、ソフトな足回りとの相性がよく、全般的に運転操作そのものが丁寧になる。ブレーキは制動力そのものは強力で十分な性能だが、ペダルの初期タッチに荒さがあり、かなりゆっくり踏み込まないといわゆるカックンブレーキになりやすかった。
積載性

4

ラゲッジスペースは従来型からテールゲートの開口幅を拡大した。下側は830mm、上側で1020mmとし、開口幅も1080mmに拡大。後席を前倒しすることで大きな荷物の積載が可能。また、助手席と助手席側の後席を倒せば長尺物も積み込める。さら後席はセンタータンクレイアウトを活かし、後席座面を跳ね上げることで後席足下部分がまるまるラゲッジスペースになる。アームレストは大型で、フレキシブルアタッチメントテーブルを活用すれば、利便性が向上する。
燃費

4

ガソリンモデルの試乗ステージは、郊外路と高速道路の混合コースで、で距離換算でいえば郊外路が約60%だった。走行距離は約45km。ここを平均車速38km/h程度で走行し、燃費数値はちょうど20.0km/Lだった。カタログ記載のWLTP総合モード値が18.7km/L(WLTP郊外モードは19.8km/L)だから、おおよその値だった。特別なエコラン走法はしていないので、流れに合わせて運転すれば誰でもこの数値が記録できる。ガソリンはレギュラー指定だ。
価格

3

登場時の価格はガソリンモデルで1,592,800円からだ。「ベーシック」を名乗るこのグレードは、価格重視であることから必要最低限の装備に留まっている。競合他車との価格競争力を高めるグレードであるため、とりわけ快適装備が省かれている。実質的には、ひとつの上のグレード「ホーム」(1,826,000円)の装備類がファーストカーとしてはふさわしい。2種類の表皮を組み合わせたコンビシートとなり、インテリアでは本革巻ステアリングや合皮タイプのソフトパッドを備える。
西村 直人
西村 直人
交通コメンテーター
WRカーやF1、MotoGPマシンのサーキット走行をこなし、4&2輪のアマチュアレースにも参戦。物流や環境に関する取材を多数。大型商用車の開発業務も担当。国土交通省「スマートウェイ検討委員会」、警察庁「UTMS懇談会」に出席。自動運転技術の研修会(公的/教育/民間)における講師を継続。警視庁の安全運転管理者法定講習における講師。近著は「2020年、人工知能は車を運転するのか」(インプレス刊)。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員日本自動車ジャーナリスト協会会員
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