BMW 8シリーズ クーペ 「美しさと性能を兼ね備えたフラッグシップ」のユーザーレビュー

トシ棒 トシ棒さん

BMW 8シリーズ クーペ

グレード:M850i xドライブ クーペ_RHD_4WD(AT_4.4) 2018年式

乗車形式:マイカー

評価

5

走行性能
5
乗り心地
5
燃費
-
デザイン
5
積載性
4
価格
5

美しさと性能を兼ね備えたフラッグシップ

2022.6.17

総評

不満な点もあるにはあるが、スタイリングが素晴らしいので帳消し。
個人的には非常に気に入っているが、「ラグジュアリー」と「スポーツ」の両立を狙った結果、中途半端な立ち位置となってしまった感は否めない。
満を持しておよそ20年ぶりに復活した「8シリーズ」だが、もう後継モデルは作られないような気がする。
満足している点


・ 優雅でスリークな王道クーペデザイン
・ 盤石のスタビリティと俊敏なハンドリングの共存
・ 前車F32 ALPINA B4以上の稀少性、つまり不人気(笑)
  (G16グランクーペは時折見かけるが…)
・ レベル2を実現した「ドライビングアシストプラス」の運転支援機能
不満な点

・ 競合モデルに比べると高級感や特別感に欠ける
・ いまどきシートベルトハンドオーバーがない
・ フル電動シートなのにバックレストを倒すときは「ヒモ」🤣
・ サンルーフやアコースティックガラスがオプションでも選べない
デザイン

5


【エクステリア】
BMWは、当時『世界一美しい』と称賛されたE24 6シリーズや先代E31 8シリーズなどを筆頭に、伝統的にクーペデザインを得意とするメーカーである。
G15 8シリーズもグリーンハウスが小さく車高が低いこともあり、非常に伸びやかで優雅。
最近のBMWにしてはフロントオーバーハングが長めなのも、そう見える一因だと思う。空力的にも有利なはず。

リア周りは、僕が「クーペデザインの肝」としてこだわり続けている「後ろ斜め45度」から眺めると、ルーフからCピラー、リアフェンダー(ショルダー)に至る部分のデザイン処理にBMWらしさを感じる。
(好みの問題ではあるが、メルセデスやレクサス/トヨタのクーペはココの処理が重く見えるモデルが多いように思う。)
後方に向かって絞り込まれたグリーンハウスと、左右に張り出したショルダーの対比でリアから見ると迫力がある。

穿った見方をすれば、アストンマーティンDB9あたりの焼き直しに見えなくもないが、個人的にはノッチバックスタイルの2ドアクーペとしては文句なしのデザイン。
ただ、少しオーソドックスかつクリーン過ぎて、メルセデスSクラスクーペやベントレーコンチネンタルGTのような威厳や押し出しには欠ける。



【BMWらしさについて】
BMWはかなり保守的(※)な会社であり、エクステリアデザインも様々な要素に縛られている。
(※ 世間的にはメルセデス=保守的、BMW=アバンギャルドと見られているが、それは乗っているオーナーの傾向であって自動車メーカーとしては完全に逆。先進的なメルセデスに対し、BMWは「超」が付くほど保守的な同族経営企業である。)

最近はキドニーグリルを大きくしてみたり、目を細くしてみたり試行錯誤(迷走?)しているようだが、G15 8シリーズは、
 ・ キドニーグリル
 ・ ホフマイスターキンク
 ・ 4灯式ヘッドライト
 ・ L字型テールライト
という伝統的なエレメントを残した「最後」の傑作クーペではないかと思う。

その裏で、非常に興味深いのは、もう一つの長い伝統であったサイドの「キャラクターライン=プレスライン」を捨てて、「面」と「絞り」で見せる手法を採っていること。
気づきにくいポイントだが、実はBMWの長い歴史の中でキャラクターラインを完全に排除したモデルはi8とG14/G15/G16 8シリーズしか存在しない。
(G22/G23 4シリーズは部分的にG15のデザインを引き継いだものの、うっすらとキャラクターラインは残している。)



【インテリア】
インテリアのデザインもBMWらしく非常に保守的。
全体的にはオーソドックスで慣れ親しんだ安心感はあるものの、直截に言えば古典的かつ面白みはない。
(やはりインテリアにおいても先にデザイン言語を変えてきたのはメルセデスで、BMWも最近になってようやく手を入れ始めたが、2018年デビューのG15はまだ古いスタイルのまま。)

目を惹くようなインテリアではないもののマテリアル自体の質感は悪くない。
(最近のメルセデスはパッと見は豪奢だが、使っているマテリアルの品質は確実に下がった。アウディも一時期の高品質感は薄れてきた気がする。)
コントロールセンター、オーディオパネル、ライトスイッチなど細かいところで他シリーズとの共通部品が多いのは少々残念。

ダッシュボードからドアトリムは連続的にデザインされ、乗員を包み込むようにゆるやかにラウンドしている。
最近は室内を広く見せるためにダッシュボードを直線基調、さらには両端を奥へ反らせて、あえてドアトリムと連続性を持たせないデザインが主流の中、非常に古典的なスポーティネスの表現で逆に新鮮さを感じる。
G15は独立したクーペモデルとして、セダン系モデルに引っ張られることなく自由にデザインできるので、見た目の広さよりもスポーツカーらしい包まれ感を優先したということだろう。
個人的には、広い室内幅を活かしてドアに厚みを持たせながら、ダッシュボードとドアトリムをなだらかに繋げるAピラー根元部分がお気に入りのポイント。

走行性能

5


【郊外~高速道路】
V8 4.4Lの大排気量ツインターボは530ps/750Nm、0-100kmh 3.7秒と必要十分なパワー。
速すぎる感じはないが、いつの間にか速度が乗ってしまうためリミッターの存在が恨めしい。
ただ、少しパンチに欠けるのでECUチューニングがサブコンの導入を検討中。

高速域は非常に安定しており、ALPINA B4に比べても体感で30~40kmhは低く感じる。
やはり高速走行安定性の観点では車重は正義。
ただ、ひとたびワインディングに入ると、約2トンという車重を忘れてしまうほどのハンドリングマシーンに変貌する。
タイトなコーナーでは鋭い回頭性でグイグイと切れ込み、中~高速コーナーではスキール音が上がるような速度でも終始安定している。(このクルマでドリフトする勇気はないのでもちろんグリップ走行。)
下り(特に連続するS字)は別として、上りに関してはパワーがあることも相まって、300kg近く車重が軽い前車F32 ALPINA B4よりも確実にコーナリングスピードは高い。

初めて本気で走ったときは、『何なんだ?これは』としばらく考え込んでしまった。

考察するに、おそらく、これこそがAWD(xDrive)とAWSの恩恵なのだろうが、Quattroのようにコーナリング中、常に何かアシストされているような違和感はなく、基本的には荷重移動含めてFRと同じ感覚でコントロールできる。
(もちろんFun to DriveなのはxDriveだが、どちらがより速くクールにコーナリングできるかと問われれば確実にQuattroだろう。)

【市街地】
狭い道やコインパーキング等では1900mmの車幅を意識せざるを得ないが、後輪操舵のおかげもあって基本的に取り回しは楽。
最小回転半径 5.2mのため、前車F32 ALPINA B4よりもむしろ小回りが効く。



【エンジンについて】
BMWの定石通り、大きなN63型V8エンジンをバルクヘッドぎりぎりまで押し込んで奥(フロントミッドシップ)に搭載しているため、第1、第5シリンダーぐらいの位置にサスペンションのストラット取付部が来る。
(同じFRベースでもメルセデスだとストラット位置はエンジンの中間ぐらい、アウディの場合はエンジンのほぼ全体がオーバーハング部分に載る。)
また、排気系のレイアウトはもちろんBMWが元祖の「ホットインサイドV (Hot-V)」だが、特許技術の「クロスバンク・エキゾースト・マニフォールド」は採用されていない。(これがMモデル用S63エンジンとの大きな違いとなる。)

「COMFORT」モードでは低い回転数を保ったままポンポンとシフトアップしていき、ほとんどアクセルを踏まずとも流れをリードできる。
「SPORT/SPORT PLUS」モードになるとバブリング音の演出も加わり、かなり迫力のある排気音に豹変する。
「ECO PRO」は使ったことがないのでノーコメント。
乗り心地

5


コンベンショナルなバネサスだが、純正の脚回りはヌルっと滑らかで非常に乗り心地が良い。(ぶっちゃけ前車F32 ALPINA B4以上のヌルヌル感。)
かといってダンピングが不足しているわけでもなく、超高速域までフラットライドが持続する。特に「ADAPTIVE」モードの自動制御が秀逸。
「アダプティブMサスペンション・プロフェッショナル」に備わるアクティブスタビライザーも効いており、コーナリング中の横Gはかなり軽減される。特に助手席はかなり快適に感じるようだ。
これまでに乗ったクルマの中で初めて『これなら車高調は要らないな』と思えたサスペンション。(もちろんサーキットや峠を走り回りたいなら話は別だが。)
見てくれの車高ダウンで「KW HAS」を導入したために少しバランスが崩れてしまったのが残念。

標準はランフラットタイヤだが、ゴツゴツした感じは一切伝えてこない。
おそらくサスペンションだけでなく、「カーボンコア(CLAR)」によるボディ剛性の高さも奏効しているはず。
自分は納車後3ヶ月ほどで非RFTの「ミシュラン PS4S」に履き替えたが、以前試乗したときに履いていた「ミシュラン PS3 ZP」ならそのまま脱RFTする必要はなかったかもしれない。
同じ☆マーク承認RFTでも、納車時に付いてきた「ピレリ P ZERO(PZ4) RF」はゴロゴロ、ザラザラとした感触が常につきまとうのが難点。

ロードノイズもよくチェックされている。
「BMWにしては」という注釈付きであれば十分に静かで、FOCALの「調音施工」によってさらに快適になった。
ただし、その代わりに風切り音が少し気になる場面も。やはりアコースティックガラスが欲しい。

メリノレザーシートはBMWらしく表皮の張りが少し強めで(もちろんダコタに比べるとかなり柔らかいが)、メルセデスSクラスクーペのようにフンワリ包み込むような感じはない。
シートヒーターだけでなくベンチレーションも付いているので蒸れにくい。ただし、ベンチレーション作動時のファンの音がちょっと耳障り。

後席は荷物置き場で人を乗せる機会は滅多にないが、居住性は絶望的。
天井も低く身長160センチ以下の女性や子供でないとまともに座れない。
シートの造りは別としてスペース的には911とほとんど変わらないレベル。
積載性

4


トランクの容量は420L(VDA法)と十分な大きさ。
(レクサスLCも同じ2+2クーペで似たような外寸だがトランク容量はこの半分以下。やはり欧州車はパッケージングが上手いと思う。)
ただし、開口部は高くて狭いため重量物の積み下ろしは面倒。
また、トランクフロア下に105Ahのメインバッテリーが鎮座しているため、深さも少々浅め。(ちなみにエンジンルーム内にも60Ahのサブバッテリーが積まれている。)
内部は背伸びしても到底手が届かないぐらいの奥行きで、トランクスルーを使わずとも少し斜めにすればキャディバッグを縦に積むことができる。
スリムなキャディバッグであれば手前側両サイドの凹みを使って横積みも可能。
燃費

-

燃費は特にチェックしていないが、おそらく通常時で5km/L前後だと思う。
ガソリンタンクは68Lと決して大きくはない。この車両サイズなら80Lぐらいは欲しかった。
価格

5


もともと「M850i」は全部載せに近いので「吊し」のままで十分だと思う。
何かオプションを追加するとしたら、標準のアルミ製ルーフに比べて僅かながら1kgほど軽量化できる「カーボンルーフ」がおそらくイチバン人気。
ちなみに標準のアルミルーフも、カーボンルーフと同じデザインの「ダブルバブル」形状になっている。
個人的には10kg重くなってもいいから「電動ガラスサンルーフ」が欲しかったが、オプション設定すら存在しないのでどうしようもない。
(ぶっちゃけ生まれて初めてサンルーフのないクルマを買った…)
その他に人気のあるオプションは「B&Wサウンドシステム」や「ナイトビジョン」あたりだろうか。
故障経験
まだ納車後半年程度しか経っていないため、今のところ機関系、電気系すべてノートラブル。

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