SUV人気はますます高まる一方で、さまざまなタイプのモデルが登場している。そうした中、なんと600psを超える「スーパーSUV」が続々と発売され、世間を賑わせている。今回はドイツプレミアム4社が放つスーパーカー顔負けの驚速のSUVの個性の違いを検証してみた。まずは4車それぞれがどんな特徴を持っているかを解説。意外な共通点やコンセプトの違いなどをここで浮き彫りにしていこう。登場車種はアウディRS Q8/メルセデスAMG GLE 63 S 4MATIC+/BMW X6 Mコンペティション/ポルシェ カイエンターボS Eハイブリッド。(Motor Magazine 2021年8月号より)
ニュルブルクリンクで鍛え抜かれた強者のSUV
渡航が制限されている直近2年ほどは叶っていないものの、1990年代後半から、世界の自動車開発の聖地と言われている「ニュルブルクリンク」に可能な限り足を運ぶように心がけてきた。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
通い始めた当時はインダストリアルプールと呼ばれるメーカーのテスト枠も今ほど密集していることはなく、走行するチャンスにも恵まれた。R8やカレラGTなどがまだ開発段階で、ニュルブルクリンクの主役は次世代のスーパースポーツモデルといった印象で、走行台数も車種も限られていた。
そんな時の出来事だが、背の低いテスト車両がお決まりだった頃、それまでに見たことのない巨大なテスト車に遭遇した。サイズにしてみたら当時日本でも流行り始めたミニバンのエスティマよりひと回りは大きくて背も高く感じられた。それが200km/hオーバーの高速コーナリングを難なくこなし、なかなか追いつくことができない。直線スピードもその姿からは想像できないほどに速かった。
数年後その正体がBMW X5であったことが判明。ニュルブルクリンクでSUVをテストするなど、日本車ではなかなか考えられないが、20年以上前から欧州では鍛え続け、現在のラインナップを構築している。
当然、今回の4モデルもその例に漏れることはない。ここ数年走っているモデルは、背の高いのが当たり前。1990年代のスーパースポーツモデルの開発シーンと同様に、超高速コーナーをいとも簡単にすり抜け、ジャンピングスポットも揺れひとつ残さずピタリと通過する。直近ではタイヤのスキール音だけを残すBEV仕様が増えてきているものの、現在の主役は明らかにSUVだ。
足まわりや4WDの違いにより走りの味付けが大きく異なる
その実力を今回、日本で乗り比べるチャンスを得た。駐車場に並ぶ各車は、どれもミニバンよりも幅広で、大径タイヤが足もとを固めて威圧感がある。都内を抜けるのにどれも手に余るように見えるが、覚悟を決めて走り出すと意外なほど周囲を見渡しやすい。
最初に乗ったカイエンは4台中もっとも全高が抑えられノーズが絞り込まれているせいもあるが、何よりも操作感が良い。ポルシェ特有の剛性感の高いステアフィールと精度の高さによって、正確な反応を示してくれる。
これは高速や、ワインディングに入っても変わることなく、一体感のある走りはボディが大きくなっても変わりはない。路面の継ぎ目などでの衝撃緩和はピカイチで、振動も残らない。操作に対しても、外からの入力に対しても、無駄な動きがなく、それが街中での乗りやすさにもつながっている。
対照的なのはX6 Mだ。正確な動きはBMWらしく、常にダイレクト感があって、ドライバーの期待を裏切らない。乗り心地はゴツゴツと硬く、段差乗り越えなどでも収まりは早いものの最初の一撃は大きい。コンペティションという名のとおり、唯一エアサスペンションを用いず、走りに特化させた最速モデルらしさが光る。
RS Q8やGLEはカイエン同様にエアサスペンションを採用していて、乗り味はカイエンの快適さとX6 Mのダイレクトさを両立させている印象だ。街乗りではカドを丸めつつ、高Gでは腰のある収まり感を生み出す、電子制御サスセッティングと言える。
ワインディングに入ると、乗り味はそれぞれ微妙に異なってくる。高速コーナリングではどのモデルもロールをあまり感じさせず、背の高さはまったく気にならない。しかし、日本の狭い道路事情ではサスペンションセッティングばかりではなく、4WDシステムの味付けなどによって、個性の違いを味合わせてくれた。
たとえば、カイエンはモーターとのトータルパワーでクラストップの680psの大出力を旋回加速時にうっかり掛けてしまうとリアタイヤがキュッと鳴き、ステアリングフィールは軽めになるも素直にラインをトレース。旋回初期はリア寄り駆動により、フロントの仕事を邪魔させず、速度上昇に伴い安定方向と向かわせようとする。
同様にX6 Mも旋回中にパワーを掛けていくと、ダイレクトに625psが路面を蹴り上げる。リアを少し沈ませつつ、フロントが同時にコーナーの狙った先に進路をピタリと定めようとする駆動力配分を持つ。常に進路と駆動力がドライバーの意思通りに動いてくれる一方、ハンドルには路面からの反力が大きく、力まずにはいられない。
RS Q8は唯一4輪同サイズのタイヤを履いていることもあって、駆動力は落ち着いている。他車同様に旋回加速をしていっても常にボディが安定方向に終始しているし、直進時のフル加速時も4輪同時に路面を蹴り上げる印象が強い。滑りやすい路面であってもフロントがしっかりと引っ張って行ってくれることから、おそらく発進加速や不整地でのアタックを試みても、4車中もっとも楽に好タイムが出せるはずだ。
GLE 63はどちらかと言えばRS Q8のように高い駆動力を持ち味としていながら、前後駆動力配分を穏やかに進行させ、フル加速時や旋回加速時の姿勢を安定させる。旋回初期にはフロントの自由度を保ちながらも、加速状態に移ると進路を定めていくような、前からの牽引力を生かしたり、旋回中に安定した後はリアから蹴り上げるようなダイレクト感がある。
ニュルで鍛えただけあってどれも走りの安定感は抜群
この4モデル、すべてが600psを超す大パワーモデルながら、個性はさまざま。その力を4輪同時に受け持たせることで姿勢に乱れのないRS Q8や、絶妙な駆動力配分によってハンドリング性能を演出したGLE 63、そしてカイエンやX6 Mのようにドライバー優先のセッティングを行うなどの差こそあれ、どれもたどりつくのは高い安定性だ。車高が高くても、大パワーであっても安全に走れる機能を生み出したのは、まさにニュルブルクリンクで鍛え上げられた結果だ。
もっとも、固くしてロールを抑えれば良いのではなく、接地性を失わせないことが大事だから、足もとはしっかりと動かして、ボディはふらつかせない。そんな味付けこそがこの4車共通の持ち味。その中で、駆動力と電子制御サスペンションがいかに乗り味を作り込むかが各メーカーのこだわり。
そんな中で、パワーの演出はわかりやすい。X6はモーターが付いていないから、常に力強いエンジンフィールでダイレクトさを持ち味としているし、遠慮なく高回転まで回しきる。ハンドリング同様、パンチ力にかけてはライバルより約10%大きな4.4Lのピュアガソリンユニットを最大限発揮させる大胆さが気持ちいい。
カイエンも同様ながら、モーター駆動によって高速でもちょくちょくエンジンはストップするし、街乗りではヒューンという音がかすかに届いて、切れ味の良いエンジンと、次世代ユニットの滑らかさとの共演に心くすぐられる。
RS Q8はカイエン同様に後輪操舵を持つことで、4WDの安定感と街乗りでの取り回しの良さを両立させ、同様にパワーフィールもRSボタンを押さない限りは600psのパワーは静々と力を出し続ける。オールラウンダーとしての乗り味は、まさにクワトロ技術の集大成と言える出来映えだ。
GLE 63はエアサスペンションとの組み合わせやAMG初の電動化で、重厚さの中に快適性や実用性を高めるなど、走りのブランドを牽引する姿が浮かび上がる。
20年以上前にドイツでの衝撃的なテストシーンに遭遇して以来、SUVの走りの進化には興味がそそられてきたが、各モデルが安定感を極めて高めつつも、しっかりと異なる乗り味を作り上げてきたところに、技術と歴史の差を感じずにはいられない。
日々進化し続けてきた結果生まれたこのスーパーSUVたちは、時代の要請から生まれたスポーツモデルの答なのだろう。(文:瀬在仁志/写真:小平 寛)
アウディRS Q8 主要諸元
●全長×全幅×全高:5010×2000×1700mm
●ホイールベース:2995mm
●車両重量:2410kg
●エンジン:V8 DOHCツインターボ
●総排気量:3996cc
●最高出力:441kW(600ps)/6000rpm
●最大トルク:800Nm/2200-4500rpm
●トランスミッション:8速AT(ティプトロニック)
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・85L
●WLTCモード燃費:7.1km/L
●タイヤサイズ:295/35R23
●車両価格(税込):1869万円
メルセデスAMG GLE 63 S 4MATIC+ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4955×2020×1785mm
●ホイールベース:2995mm
●車両重量:2520kg
●エンジン:V8 DOHCツインターボ+モーター
●総排気量:3982cc
●最高出力:450kW(612ps)/5750-6500rpm
●最大トルク:850Nm/2500-4500rpm
●モーター最高出力:16kW(22ps)
●モーター最大トルク:250Nm
●トランスミッション:9速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・85L
●WLTCモード燃費:8.7km/L(EU準拠)
●タイヤサイズ:前285/40R22、後325/35R22
●車両価格(税込):1958万円
BMW X6 Mコンペティション 主要諸元
●全長×全幅×全高:4955×2020×1695mm
●ホイールベース:2970mm
●車両重量:2370kg
●エンジン:V8 DOHCツインターボ
●総排気量:4394cc
●最高出力:460kW(625ps)/6000rpm
●最大トルク:750Nm/1800-5860rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・83L
●WLTCモード燃費:7.4km/L
●タイヤサイズ:前295/35R21、後315/30R22
●車両価格(税込):1899万円
ポルシェ カイエン ターボS Eハイブリッド 主要諸元
●全長×全幅×全高:4926×1983×1673mm
●ホイールベース:2895mm
●車両重量:2490kg
●エンジン:V8DOHCツインターボ+モーター
●総排気量:3996cc
●最高出力:404kW(550ps)/5750-6000rpm
●最大トルク:770Nm/1960-4500rpm
●モーター最高出力:100kW(136ps)/2800rpm
●モーター最大トルク:400Nm/100-2400rpm
●システム最高出力:500kw(680ps)
●システム最大トルク:900Nm
●トランスミッション:8速AT(ティプトロニックS)
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・75L
●WLTCモード燃費:30.3-31.25km/L(EU準拠)
●タイヤサイズ:前285/40R21、後315/35R21
●車両価格(税込):2441万円
[ アルバム : 刺激的な「ドイツスーパSUV」の個性Part2 はオリジナルサイトでご覧ください ]
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みんなのコメント
まー今のBMWをほしいとなんて思わないけどなw