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コンパクトハッチバック最新事情鼎談。渡辺慎太郎&渡辺敏史がCセグメントを語る

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コンパクトハッチバック最新事情鼎談。渡辺慎太郎&渡辺敏史がCセグメントを語る

BMW 1 series vs Mercedes-Benz A-Class vs Volkswagen Golf vs Peugeot 308 vs Mazda 3

BMW 1シリーズ vs メルセデス・ベンツ Aクラス vs フォルクスワーゲン ゴルフ vs プジョー 308 vs マツダ 3

コンパクトハッチバック最新事情鼎談。渡辺慎太郎&渡辺敏史がCセグメントを語る

モータージャーナリスト界の“ダブル渡辺”が語る

全長4.5m以下で大人4人がきちんと乗れる5ドアのハッチバック。ベーシックカーの原点ともいえるその領域で牙城を築いたのはフォルクスワーゲン ゴルフだが、いまはぞろり強豪が本丸に居並んでいる状態だ。

今回は自動車ジャーナリストの渡辺慎太郎氏、渡辺敏史氏両人に5台の「今日本で乗れるCセグメントハッチバックの代表格」に試乗してもらった。欧州対日本、ドイツ対フランス対日本、プレミアムブランド対ベーシックブランド。様々に棲み分けできる5台の試乗を通して見えてきたものは何か。GENROQ Web編集長の野口 優がふたりに訊いた。

ゴルフとの差が縮まってきた

野口 優(以下、野口):今日はおふたりにフォルクスワーゲン ゴルフ、BMW 1シリーズ、メルセデス・ベンツAクラス、プジョー 308、マツダ3に乗っていただきました。改めて5台を同時に比較してみての感想を聞かせてください。

渡辺慎太郎(以下、慎太郎):これまではゴルフが別格だったけど、その突出していた“差”がかなり縮まっていますよね。

渡辺敏史(以下、敏史):それはホントその通りです。

慎太郎:Cセグメント全体のレベルがすごく底上げされてきたんですよね。Bセグメントの話で恐縮ですが、この間トヨタ ヤリスに乗ったらすごく良く出来てた。日本車の場合、小さいFF車は価格も安い分それなりの商品になりがちだったけど、ヤリスはアーキテクチャからしてしっかりしている。

野口:ヤリスは「TNGA」プラットフォームですよね。

敏史:そう、TNGAのGA-Bです。

野口:やっぱりTNGA自体が良いんでしょうか? CH-Rも高く評価されているし。

敏史:トヨタについて言えば、あのアーキテクチャになって動的なレベルはガンッと一段上がってます。それは間違いない。

慎太郎:ヤリスに乗ったら、いろんな意味で「これなら欧州車とそんなに変わらないかも」と感じました。思い出したのはフォルクスワーゲン ルポ。

敏史:ボクはまだ量産仕様には乗っていないんですが、袖ヶ浦サーキットでプロトタイプに乗ったときはたまげるくらいのシャシー性能でした。トヨタのTNGAアーキテクチャは確実に動的面において、それまでとは比較にならないくらいレベルアップを果たしていると思います。そういう意味でいうと、今日の試乗車の中にカローラがあっても面白かったかも。あればTNGAのGA-C。

308の乗り味にくっきり出ていた「お国柄」

野口:全体的に、FFのプラットフォームはこれまでより格段に良くなっているんでしょうか? シャシーレベルでも十分満足させてくれるというか。

敏史:と思います。今日改めてゴルフはすごいなと思ったけど、慎太郎さんが言っているとおりゴルフの圧倒的優位性というのに他のフォロワーがきっちりキャッチアップしてきている。だからそんなに差がないものになっているかなと。

野口:たとえば今日はドイツ、フランス、日本のFFハッチバックが揃いましたが“お国柄”というのはありますか?

敏史:今日の試乗車の中で一番お国柄感があったのは、やっぱりプジョー。大きい負荷がどん、とかかったときにふわっと受け止めてくれるところとか。気持ちいいな、フランス車だな、って感じましたよね。

慎太郎:たぶん、このクラスでお国柄とかメーカーごとの特色がはっきり出てくるのはこれからの段階じゃないかと思うんです。いまはボトムアップの時期。みんながゴルフに追いついてきて、これから特徴とか商品力を出していかないといけなくなる。そういう視点から見ると、1シリーズの特徴的な曲がり方というのは、今後のFF市場を見据えて“印象に残る”ような味をつけたのかもしれません。ある意味、あえてトライをしたような。

野口:FFなのにFRのように曲がるという。

慎太郎:そうそう。

敏史:1シリーズは真っ直ぐ走っている分には、そんなに気になる部分はないんですよ。ランフラットタイヤなのに乗り心地いいし、ノイズレベルも低い。でも曲がると「ウワッ」というか(笑)。

慎太郎:(笑)。

敏史:デジタルっぽい曲がり方をしますよね。ダイアゴナルな姿勢というのが、Aクラスとかマツダはわりと綺麗に出てくるけど、1シリーズは徹底的に水平に曲がっていく。

マツダ3に垣間見えるW124の味

野口:打倒欧州という感じで登場したマツダ3はどうですか? 良い線いってます?

敏史:個性があるかというと、ちょっと難しいかもしれない。今日のエンジンは1.5リッターだったから非力なせいもあって、高校球児みたいな全力感はありましたけれど。ゴロでもダッシュみたいな(笑)。

野口&慎太郎:(笑)。

慎太郎:マツダ3は今回初めて乗ったけど、以前インタビューしたマツダのエンジニアの言葉の意味が分かりました。「今度のマツダ3とCX-30はメルセデスのW124を徹底的に研究した成果がようやく出始めたモデルなんです」とおっしゃっていたんで、どんな風に出ているのか楽しみだった。で、今日乗ってみるとなるほど、と。スロットルペダルを踏んでからトルクが立ち上がるまで最初にちょっとした間というかタメみたいのがあってからモリモリモリモリと上がっていくところとか、ステアリングを切ってから荷重移動して旋回が始まっていく過渡のところとか、そういうところになんとなく「あーW124ぽいっていうのはこういうところを狙ってるのかな」というのは見えました。ただし、成果はあくまで出始めたところであって、彼らもW124の真似をするつもりはない。「W124を参考に、マツダの味はどうあるべきなのかを探っているところです」とその時には言っていました。だから、この物語はもっと先に続いていくんでしょう。

野口:なぜいまW124なんでしょう。

慎太郎:W124開発当時、メルセデスは大体160km/hから180km/hの高速巡航を目安に、とにかくどっしり安定して安心して長距離を走れるように作っていたんですね。いまはもう200km/h以上でアウトバーンをかっ飛んでるから乗り味は変わっちゃったけど。で、日本の法定速度は相変わらず100km/hとか120km/hだから、W124あたりのバネ上の動かし方とか直進安定性とか、クルマのまとめ方っていうのは日本の道路事情にすごく合ってる。だから彼らは試験車としてW124と・・・。

敏史:ルノー キャトル。

慎太郎:あとメガーヌR.S.だったかな。

敏史:キャトルはリヤが独立じゃないから、たぶんその参考でしょうね。合理性があってミニマルなデザインで、我々が昔から親しんできた欧州車的な価値観でまとめてるのって意外とマツダ3なんですよ。作っている人たちがそういうクルマが大好きなんでしょうし。お手本にしていたら欧州側のほうが変わってきちゃってるっていうのが面白いけど。

買い得感で勝るのは日仏勢

慎太郎:308は、昔某誌の長期テストでディーゼルモデルに乗っていたときからすごくいいクルマだと思ってた。だから若干心配しているのは、フランス車の中だと若干ドイツ車寄りのプジョーということもあって、次期型308がもっとドイツ車寄りになっちゃってたらヤだなって。

敏史:最近のグループPSAはそれぞれの持ち分がはっきりしてきていますよね。プジョーはスポーティなハンドリング、シトロエンはぽわんとした乗り味で。

野口:DSはプレミアム感を出す、と。でも、バリューフォーマネーという点で言うとボクは308がお買い得だと思いました。モデル年次が古いので比較できない点も多々ありますけど、あの乗り味は唯一無二だと思います。そこまで攻め立てる気にさせない乗り心地だけど、でもじつは攻めようと思えば攻められるポテンシャルもある。そのあたりがマニアックだなあとは感じました。

敏史:バリューフォーマネーでは、やっぱりマツダ3は強い。今回は1.5リッターの一番安いエンジンのモデルだったというのもあるにせよ、230~240万円でひと通りのものはついているし。ADASはイマイチでしたが。

野口:いまやADASは購入理由のひとつとして重要な要素ですよね。レベルが高いのはやっぱりメルセデスとBMWですか?

敏史:群を抜いている、とまではいかないけどやっぱりメルセデスはトップ。近しいところに1シリーズもいると思います。

野口:マツダはどうしてイマイチなんでしょうね?

敏史:そんな機械任せでクルマを動かすなんてどういう精神なんだ!って怒られちゃうのかも(笑)。運転は楽しむものなんだ!って。

メルセデスがADASやインフォテインメントに力を入れる理由

野口:いまのクルマはインフォテインメント系とか色々な機能がついています。そのあたりで一番頑張っているのはメルセデスでしょうか?

敏史:多機能性でいうと、やっぱり「メルセデスとBMW、あとそれ以外」という感じでしょう。スマホとの親和性をはじめ、そういう部分を充実させているのはドイツ勢です。ゴルフも次の8代目でそこを埋めてくるつもりだと思うんです。でもプレミアムブランドが作ったCセグメントの価値をそういうところに見いださないといけないとしたら、スマホと繋がるとかどうでもエエわ、というユーザーだと選択肢がぼやけてきちゃう。

慎太郎:マツダ3はデザインを商品力のひとつにしてますよね。メルセデスがADASやインフォテインメントを商品力にしているように、マツダはデザインで興味を惹くようにしている。

敏史:マツダ3で良かったのは、やはり彼らがこだわったインターフェースですね。あとブレーキ。でもそれがマツダの個性かというと、お客さまには届きづらい。BMWみたいにさーっと曲がった方が分かりやすいっちゃ分かりやすい。分かりやすくないっていうのがマツダ3の難しいところなんでしょうね。

野口:今日、5台を見ていて改めて思ったのは、それでもやっぱりマツダは薄味かなと。周りのアクが強すぎるせいかもしれないけれど。

敏史:デザインも引き算モードに入っていますよね。

慎太郎:メルセデスのゴテゴテ感て、有名ブランドのバッグに通じる部分がある。あちこちマークがついていてお上品とは言い難い。でも売れる。マツダはもっとこう、地味だけどセンスが良い方向を目指しているようです。ディーラーのCIを変えたときには、お客さまにお渡しするノベルティもデザイン部監修のお洒落な財布なんかに変えたんだよね。

敏史:4~5年前まではママレモンだった(笑)。

慎太郎:そう。サランラップとか(笑)。

CセグメントのFFハッチバックが向かう未来は

野口:ところでやっぱりFFといえばパッケージ面での利点が大きいと思いますが、そのアドバンテージはどのクルマにも活かされていましたか?

敏史:全般に言えるのが、後席はわりとざっくり見切っているなという印象です。パーソナルカーとしてCセグメントが普通に使われている、つまり1~2名乗車が多いという側面が大きいのかなとは思います。ファミリーカーとしてのニーズがそれほど無くなってきているという。でも、意外と想定していたより真っ当だったのが1シリーズ。後席もちゃんとしたスタンスで座れて運転席よりちょっと目線が高くなっていたりとか。4人乗ることを考えて一所懸命作っているんだなと。

慎太郎:ボクも1シリーズのリヤの作りの良さにはビックリした。

野口:Cセグメントはゴルフに追いつき追い越せで全体のレベルがうんと上がってしまった。そういう意味では今後ドラスティックなステップアップというのはありそうですか。

慎太郎:Cセグメントというのはフォルクスワーゲンとかプジョーとか、昔からそれをやってる人たちが作ってマーケットを形成してきました。そこにBMWとかメルセデスとかが上から降りてきた。今まで高いものを作って売ってたから、値段に対してどういうものがついていると人は喜ぶかとか、豪華に見えるかとか、そういうことをよく知ってるわけです。そういう人たちが作ったCセグメントのクルマには、ある意味分かりやすさがある。いいか悪いかはともかく、メルセデスとBMWは非常に分かりやすい。エアコンの吹き出し口が光るとか。買った人がどうすれば嬉しさを感じるかをよく分かっていると感じますよね。“たくさん付いている感”とか、ああいう発想は昔からCセグメントをやっている人たちにはあまりないかもしれない。機能優先で質素でなるべく値段を抑えて、というのが善とされてきたから。そこに新しいアプローチを持ち込んだのがプレミアムメーカー。後からゴルフが8代目でそれに追いつくという、ちょっと逆転現象みたいなことも出てきたわけで。今後は商品力をきちんと出していかないと売れない。そういう意味ではこれからいろんな勝負が見られるかもしれません。

敏史:ハード面は、現在の状況でちょっとずつステップアップしていくのかなと思います。オールアルミモノコックとか、よっぽどの飛び道具でも出てくれば別かもしれないですけど。でもここのセグメントはコストとの勝負という面がすごくあるからそこまで大胆なことはできないと思う。ドラスティックな変化を望んでいる人には退屈なのかもしれないけど、本来クルマってそういうものでしょう。

PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)

まとめ/三代やよい(Yayoi MIYO)

【SPECIFICATIONS】

BMW 118i Play

ボディサイズ:全長4335 全幅1800 全高1465mm

ホイールベース:2670mm

車両重量:1390kg

エンジン:直列3気筒DOHCターボ(B38A15A)

総排気量:1499cc

ボア×ストローク:82.0×94.6mm

最高出力:103kW(140ps)/4600-6500rpm

最大トルク:220Nm/1480-4200rpm

トランスミッション:7速DCT

サスペンション:前シングルジョイントスプリングストラット 後マルチリンク

駆動方式:FWD

タイヤサイズ:前後205/55R16

最高速度:213km/h

0-100km/h加速:8.5秒

車両本体価格:375万円

メルセデス・ベンツ A200 d

ボディサイズ:全長4440 全幅1800 全高1420mm

ホイールベース:2730mm

車両重量:1510kg

エンジン:直列4気筒DOHCターボ(OM654q)

総排気量:1949cc

ボア×ストローク:82.0×92.3mm

最高出力:110kW(150ps)/3400-4400rpm

最大トルク:320Nm/1400-3200rpm

トランスミッション:8速DCT

サスペンション:前マクファーソンストラット 後トーションビーム

駆動方式:FWD

タイヤサイズ:前後225/45R18

最高速度:220km/h

0-100km/h加速:8.1秒

車両本体価格:410万円

プジョー 308 テックパックエディション BlueHDi

ボディサイズ:全長4275 全幅1805 全高1470mm

ホイールベース:2620mm

車両重量:1330kg

エンジン:直列4気筒DOHCターボ(DV5)

総排気量:1498cc

ボア×ストローク:75.0×84.8mm

最高出力:96kW(130ps)/3750rpm

最大トルク:300Nm/1750rpm

トランスミッション:8速AT

サスペンション:前マクファーソンストラット 後トーションビーム

駆動方式:FWD

タイヤサイズ:前後205/55R16

最高速度:204km/h

0-100km/h加速:9.7秒

車両本体価格:320万7000円

フォルクスワーゲン ゴルフ TSI ハイライン マイスター

ボディサイズ:全長4265 全幅1800 全高1480mm

ホイールベース:2635mm

車両重量:1320kg

エンジン:直列4気筒DOHCターボ(EA211)

総排気量:1394cc

ボア×ストローク:74.5×80.0mm

最高出力:103kW(140ps)/4500-6000rpm

最大トルク:250Nm/1500-3500rpm

トランスミッション:7速DCT

サスペンション:前マクファーソンストラット 後4リンク

駆動方式:FWD

タイヤサイズ:前後225/45R17

最高速度:212km/h

0-100km/h加速:8.4秒

車両本体価格:370万円

マツダ 3 15S ツーリング

ボディサイズ:全長4460 全幅1795 全高1440mm

ホイールベース:2725mm

車両重量:1340g

エンジン:直列4気筒DOHC(P5-VPS)

総排気量:1496cc

ボア×ストローク:74.5×85.8mm

最高出力:82kW(111ps)/6000rpm

最大トルク:146Nm/3500rpm

トランスミッション:6速AT

サスペンション:前マクファーソンストラット 後トーションビーム

駆動方式:AWD

タイヤサイズ:前後215/45R18

最高速度:-

0-100km/h加速:-

車両本体価格:231万5989円

【問い合わせ】

BMW カスタマー・インタラクション・センター

TEL 0120-269-437

メルセデスコール

TEL 0120-190-610

プジョーコール

TEL 0120-840-240

フォルクワーゲン カスタマーセンター

TEL 0120-993-199

マツダコールセンター
TEL 0120-386-919

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みんなのコメント

7件
  • ゴルフ一択なり。
  • クルマの気持ちよさは値段じゃ決まらない所があるわな。けどこのそうそうたるメンツで、マツダ3が1500ってのはアンフェアじゃないかい。
    日本のCセグハッチバックならカローラ、インプレッサも欧州車に負けないいいクルマだと思う。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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