自動車関連の記事、とりわけ国産車メーカーの新車ニュースで見かける「OEM」という単語、皆さんはその意味をご存知だろうか。本記事では「OEM」について、具体例とともに解説していく。
「OEM」=他社ブランドの製品を生産し提供する会社のこと
OEMとは、英語の「Original Equipment Manufacturer」の頭文字を取った略語のことで、「オリジナル製品の生産者」となる。これだとイマイチピンとこないので、ケンブリッジ ビジネス英語辞典を引いてみると「a company that makes parts and products for other companies which sell them under their own name or use them in their own products」と定義されている。
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意訳すると、「他社のために部品や製品を生産して、その他社ブランド名で販売する会社」となり、つまり「自社で製造した商品を、他社ブランドから販売する会社」ということを意味する。日本では、この製造会社だけでなくこのシステムで生産された商品そのものや、製造を委託する行為自体にまで「OEM(この場合はOriginal Equipment Manufacturingの略)」という用語の使用範囲が拡大している。
また、OEM受託企業は、自社ブランドを持たずに商品の製造のみを専門に行う会社、もしくは自社ブランドを保有しているが、生産能力の余剰分を他社の商品の製造のために割り当てている会社の2パターンがあり、自動車メーカーの場合は後者にあたる。(※例外として、トヨタ「スープラ」やメルセデス・ベンツ「Gクラス」等を生産しているオーストリアの「マグナ・シュタイヤー社」は、自社ブランドを持たず、OEMを専門としている)
OEMの例
OEMという単語自体は自動車だけでなく、家電・電子部品・スマートフォン・食品など様々な分野でも耳にすることが多い。例えば、Apple社は製造工場を持たないため、台湾のFoxconn社にiPhoneの製造を委託している。ちなみに、このFoxconn社は任天堂のNintendo Switch、ソニーのPlayStation、マイクロソフトのXboxといったメジャーなゲーム機に加え、GoogleのPixelシリーズ、先述のiPhone、ノキアのブラックベリーなどのスマートフォンの委託製造業者でもあり、世界最大級のOEMとしても知られている。
プライベートブランド(PB)との違い
他社に生産を依頼して自社ブランドで売ると聞くと、プライベートブランドとの違いについても気になるところ。実際、形態としてはOEMとPBは同じだが、委託元が流通業者の場合にOEMではなくプライベートブランドと呼ばれる。
わかりやすく言い換えると、コンビニエンスストア(セブンイレブンやローソンなど)やスーパーマーケット(イオンや西友など)の流通・小売業者が、自社ブランド(セブンプレミアムやトップバリュ)として販売するオリジナル製品はPB商品と呼ばれ、一方で自動車メーカーや家電メーカーのような製造業者であればOEM商品と呼ぶというように、「呼び方」を分けているだけでやっていることは同じということなのだ。
共同開発との違い
共同開発は、メーカー同士が協力して開発し、開発費用を分担することで開発・生産のコストを減らすために行われる。開発に参加したメーカーは出来上がった商品をそれぞれのブランドで販売するという点で、OEMとは異なる。
自動車での例を挙げると、トヨタとスバルが共同開発したGR86とBRZ、トヨタとBMWがタッグを組んだGRスープラとZ4が共同開発車両に当たる。また、OEM車両だと供給元の車両とほぼ同じ内容でメーカーバッジのみ付け替えた状態で発売されることが多いのだが、共同開発だと各メーカー独自の味付けがなされる場合がある。
例えば、GR86とBRZはフロントやリアのデザインだけでなく、エンジン特性やスタビライザー、サスペンションスプリング、フロントハウジングなどがBRZと異なる設計に変更され、共同開発の兄弟車とは思えないほど作り分けがなされている。
OEMの供給側・販売側のメリット
他社生産の製品を販売する側には4つのメリットがあり、
1. 生産能力をカバーできる:自社に生産設備・人材がなくてもすぐに商品を作れる
2. 生産コストを削減できる:設備導入費・人件費・材料費などの初期費用抜きで商品を生産できる
3. 在庫リスクが少ない:自社生産では大量生産による在庫リスクが発生するが、OEMなら少量生産が可能
4. 販売や新商品の開発に専念できる:生産関連の工程を他社に委託するので、その分の時間や予算を商品PRなどに充てることができる
が挙げられる。
自動車メーカーでは、最近は環境性能や安全性能の要求水準がどんどん上がり、新車開発のコストが高騰しているため、「開発・生産コストを抑えて車種のラインナップの拡充ができる」ことを理由に広くOEMが浸透している。
とくに軽自動車ではOEMの比率が高く、例えば、マツダはもともと自社で軽自動車の開発・生産を行っていたが、事業の合理化などを理由に撤退した。しかし、軽自動車市場から完全撤退してしまうと販売機会を逃してしまうため、スズキの軽自動車をOEMで調達しマツダブランドで販売している。つまり、OEM車というのは、「自社で開発するほど重要な車種とは言えないが、かといってなくなってしまうと困る車種」を他メーカーに供給してもらい販売しているのである。
一方で、他社に製品を提供する側にも3つのメリットがあり、
1.売上高が向上する:他社ブランドの販売力によって生産量を増やせるため、売上高を確保できる
2.仕事の量が安定する:生産設備の余力を他社商品生産に充てるので、稼働停止期間が生まれにくくなる
3.技術力が向上する:他社製品を製造することにより、自社商品の開発だけでは身につかないノウハウを取得できることもある
自動車メーカーの場合、OEM車両を提供する側には「自社ブランドのディーラーネットワークで販売する以上の台数を生産できるため、製造単価を抑えて売上高を向上できる」という利点がある。
国産車ブランドのOEM車種一覧表
■トヨタ生産・他社販売のOEM車
[ 表が省略されました。オリジナルサイトでご覧ください ]
■ダイハツ生産・他社販売のOEM車
[ 表が省略されました。オリジナルサイトでご覧ください ]
■日産生産・他社販売のOEM車
[ 表が省略されました。オリジナルサイトでご覧ください ]
■スズキ生産・他社販売のOEM車
[ 表が省略されました。オリジナルサイトでご覧ください ]
■関連記事リンク
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みんなのコメント
日本車だぜ
知らなかったわ。