■スバルのAWDはなぜ誕生? 東北電力からの依頼に応えたのがきっかけ
スバルと言えば「4WD(AWD)」を思い浮かべる人が多いかもしれません。
そんなスバルの4輪駆動システムはどのような経緯で誕生したのでしょうか。
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そもそもの始まりは、1960年代終わりから1970年代初めにまで遡ります。
この年、東北電力から送電線保守作業用にスバル1000バンを4WD化することができないかという改造依頼が宮城スバル自動車に持ち込まれました。
それまでの4WDはジープタイプで、主に積雪地や荒れ地での業務連絡用に使われており、それは東北電力も同様の使い方でした。
ただ、車体が大きく重いことで運転しにくいうえに乗り心地もよくありません。
さらに暖房の問題などもあり、雪のない日には誰も使いたがらず、もっと使えるクルマをという組合員から要望も強かったそうです。
また整備性や経済性にも問題を抱えており、夏はバン、冬はジープと使い分けていた関係もあり年間維持費は4億円もかかっていました。
そこで東北電力が考えたのは、前輪駆動の乗用車の後輪も同時に駆動したら、暖房が良く効き、乗り心地が良く、静粛で、軽量で燃費が優れた四輪駆動車が出来て、1台で一年中利用できるのではないかというものでした。
そこで東北電力は宮城スバル自動車に依頼したのです。もともと宮城スバル自動車と東北電力の担当者同士が公私ともに親交があったことから、この話に至ったようです。
そこで、宮城スバル自動車はスバル1000バンをベースに、1100ccのエンジンに換装。
さらに日産ブルーバードのリアサスペンションやデフなどを使って4WDに改造し雪道での走行試験を行いました。
その結果が非常に良かったことからメーカーのスバル(当時の富士重工業)にも相談し、それをきっかけに4WD化への取り組みを開始。商品性に関しての見通しがあったわけではありませんが、未開拓の分野に挑戦しようと1971年にスバル技術本部に専門の4WDチームを発足させたのです。
そうして1971年の第18回東京モーターショーにスバル1300Gエステートバンをベースにした4WDのプロトタイプを発表。
それをベースに12月には東北電力、白馬村、飯山農協、防衛庁などに向けて限定発売し、データを収集したのち、1972年8月にレオーネバンとして国産初の量産乗用AWDとして正式に発売。こうしてスバルのAWDの歴史が始まったのです。
■4WDからAWD、スバル独自の「SYMMETRICAL AWD」とは
そしていま、スバルならではの走りをコアバリューに魅力的な商品を投入しています。
その要のひとつがAWDです。
その“スバルならではの走り”とは、あらゆる路面、天候において、すべてのユーザーが、運転席でも助手席でも、あるいは後席でも、快適に安心して、そして楽しく乗れること。
これを具現化するためにスバルは、長年磨いてきた独自のAWDシステム、“SYMMETRICAL AWD”というコアテクノロジーを核としたクルマ作りを行っています。
そして、”より安全に、より愉しく“を高い次元でバランスさせながら、SYMMETRICAL AWD を進化させてゆくことがスバルのクルマ作りの使命と考えているのです。
SYMMETRICAL AWDは、軽量・コンパクト・低重心の水平対向エンジンと左右対称の縦置きパワートレーンから構成されていて、きわめて優れた重量バランスを実現しています。
つまりSYMMETRICAL AWDは、AWDのメリットである“安定性/スタビリティ”、“駆動力/トラクション(安心感、安全性)”に、SYMMETRICAL AWDならではのメリット“優れた重量バランス”を融合し、高度な“敏捷性/アジリティ(愉しさ)”をも備えています。
そのため、高い走行安定性、コントロール性、さらには危険回避性を実現すると同時に、自然なドライブフィーリングが得られているのです。
この、SYMMETRICAL AWDが生まれながらに備えている“素性”は、一般的なAWDシステムが後付けのデバイスなどで補っても実現することのできない、物理的なアドバンテージだといえます。
このように運転の愉しさとともに、安全性を大幅に高めることに貢献するAWDをスバルは自社の重要な財産と捉え、日々技術開発に努めています。
今後電動化技術が進み、このSYMMETRICAL AWDも新たな局面を迎え、いま以上に素晴らしい技術を備えて来るでしょう。
しかしその根底には、スバルのAWDの始まりのように、人々の生活にいかに役立つことができるかという思いが常に流れていることを忘れてはいけません。単なる技術屋の独りよがりではないのですから。
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