スペーシアギア
この記事をまとめると
背高のクルマだらけのいま「横風」対策も進んでいた! いまどきのクルマが軽でも「横風安定性」が高いワケ
■三菱デリカミニとスズキ・スペーシアギアとホンダN-BOXジョイを長距離試乗
■パッケージングを比較して日常の使い勝手を検証
■燃費を計測しながらそれぞれを試乗インプレッション
アウトドア系スーパーハイト軽の実力とは
大阪オートメッセ2025に東京から往復の道中、何かとロングツーリング比較するのはWEB CARTOP編集部の定番企画。今年は、旬のSUV風タッチを採り入れたスーパーハイト軽3台、三菱デリカミニとスズキ・スペーシアギア、ホンダN-BOXジョイを、燃費を含めて乗り比べてみた。
東京―大阪間を軽で往復……と聞いて、いかにも日常使いの範囲を超えた苦行を出発前は予想していたが、3台とも長距離移動はそれなり以上に快適で、結果的に思いのほか、疲れは少なかったことは白状しておく。まったくの同条件でこそないが、ドライバー含め大の男が常時2~3名、数泊分の荷物ともども乗車していたにもかかわらず、だ。でもそれがすなわち、アウトドア系スーパーハイト軽は長距離ツーリングに向く、といった結論ではない。限界が見えたからこそ、むしろ軽スーパーハイトワゴンの得意な領域がはっきりした。
今回、連れ出した各車のグレード内訳は、デリカミニだけ4WD仕様で「Tプレミアム」、スペーシアギアは「ハイブリッドXZターボ」、N-BOXジョイは「ターボ 2トーン」。前2者がMHEVで電気モーターのアシスト駆動が入るのに対し、後1者は純ICEとなる。いずれも内装や装備にアウトドア&レジャー感をトッピングした仕様だが、Bピラーレスでない点も共通項だ。
まず外観は、逆光シルエットだけで3台を区別するのは至難の業だろう。だからこそフロントマスクやライトまわり、ガーニッシュやサイドのプレスラインにデザイン要素が集中する訳だが、逆にいえば全長3395×全幅1475mmは3車とも共通。全高はルーフレールのないN-BOXジョイだけが1790mm、対してスペーシアギアが+10mm、デリカミニは+40mm。
ホイールベースは順に2520mm、2460mm、2495mmで、N-BOXジョイがもっとも長くスペーシアギアがもっとも短く、25~35mm刻みでデリカミニが中間となる。いずれも軽自動車枠いっぱいのなかで最適化されたがゆえのフォルムといえ、これらのわずかな違いが意外と車のキャラや走り味に出ているのだが、それは後述する。
コクピットまわりのインテリアでは、全車とも9インチモニターとナビゲーションはオプション扱いで、トリムや調度の方向性にキャラが見え隠れする。
まずSUVライクな軽を先駆けたデリカミニは、タッチセンサー式のエアコン操作パネルとシフトコンソールがピアノブラック調仕上げで、高級感を醸し出す。
その分、メーターパネル内の液晶面積は小さめながら、速度計とレブカウンターというアナログ2連装メーターは確信犯ともいえる本格ぶりだ。加えてボタンを押した際の節度感など、操作系のタッチにも軽自動車離れしたところがある。
一方で、メーターパネル内がほぼ液晶&デジタルの演出でヘッドアップディスプレイまで備わり、ダッシュボード中央のインフォテイメントと機能や表示の連携が先進的と感じるのはスペーシアギア。エンジンをONにした際に車体をぐるりと見まわす全方位ビューは、まるでドローン映像のようで、周囲の景色も読み込んでいるので、安全確認の一助にもなる。
スペーシアギアの運転席は、基本的にボタン類がすべて乗り手の方を向いているといった作りで、スイッチは多いが整然とレイアウトされているため、必要な機能を見つけやすいことは間違いない。慣れたら替わりの利かないほど多機能でアクセス性の高い操作系といえるだろう。
逆にN-BOXジョイの運転席まわりは、シンプルに大切な要素だけ焦点を当てることで、使いやすさを磨いたミニマリスト志向といえる。メーターパネルは7インチTFT液晶モニターなので、機能や表示が限られているわけではない。ブラウン系のチェック柄シートに合わせたベージュのダッシュボードなど、全体の素材感やハーモニーで頭ひとつ抜きんでている。
ドアノブカバーのビス頭がやや目立つが、ドアパネル側エルボーレストがコンビシートと合わせた人工レザー仕様で、側面までに包み込みつつステッチが縫い込まれるなど、「大きめ細部」にはこだわりがある。
ちなみに3車中もっともアウトドア色が薄いライト志向で、ステアリングヒーターは省かれているが、ステアリング両手位置にエアコンの風が当たる配置で、こういう無から有を作る賢さがN-BOXジョイの得意とするところだ。
後席ユーティリティに関しては、磨き抜かれた日本のガラパゴス軽のなかで、電動自動引き込み式のスライドドアやシェード、2列目からも荷室側からもアクセスできるリヤシートの可倒性などに、大きな差はない。4WDであるためデリカミニの荷室床高がやや高いこと、N-BOXジョイは床下に収納スペースが備わるぶん、助手席下のアンダーボックスが省かれていること、また後席サーキュレーターもないことぐらいだ。
ただ、ラゲッジ用途の解釈が相当に異なる。デリカミニとスペーシアギアのフロアボードは樹脂製で泥汚れにも強い作りで、スペーシアギアに至ってはラゲッジフロアも防汚タイプで、開口部下端には自転車を出し入れする際のガイドまで設けられている。
一方で、N-BOXジョイは「ふらっとテラス」と称して、ラゲッジフロアからボード、リヤシート裏まで例のチェック柄で統一され、車中泊とはいかないまでも単なる荷室よりもワンルーム的なパーソナルスペースとしている。
惜しむらくは、ボード側とリヤシート側でチェック柄の合わせがズレていなければ、スキなくお洒落だったのだが。
途中1回給油で500km以上を走れるアシの長さ
そして気になる走りや動的質感は、街乗りの速度域ならいずれのスーパーハイト軽も甲乙つけがたい。純ICEのN-BOXジョイの分が悪いかと思いきや、CVTの制御ごと下支えのしっかりしたスムースさで、痛痒なく素直なドライバビリティが際立つ。スペーシアギアはステアリングの手応えの軽さがそのままフットワークの軽さになっているが、やや細かなピッチングが神経質。
デリカミニは4WDで重量がかさむぶん、電気アシストが切れるとエンジンが大きく唸るが、ハンドリングと乗り心地のしっとりバランスは好ましかった。
高速道路にステージを移すと、3車の方向性や個性にまた違いが出てきた。後席の乗り心地は、シートスライド量が多くて視線が高く、後車軸まわりの挙動が落ち着いているデリカミニがいちばん快適といえた。高速巡航でも接地性が薄れる感覚がほとんどなく、基本的なメカニカルグリップがしっかりしていると感じさせる。雪道や悪路ではさらに頼もしいのだろう。
スペーシアギアは高速での直進時、ステアリングの中立付近がやや定まりづらい感触だった。後席では、足もとに備わるマルチユースフラップで座面長を伸ばしたりオットマンにして足を浮かせたり、充実装備にモノいわせ、寛ぎポジションはとりやすい。が、高速巡航中のハーシュネスを足まわりが吸い込み切れず、身体が要らぬ浮遊感に苛まれる。アームレストもあるが、あくまで短中距離移動での道具性が個性で、街なかでのコミューターが本分といえる。
N-BOXジョイは高速道路でも、街乗り時と地続きの、雑味の少ないスムースライドを感じさせた。合流の局面など中間加速でもっとも扱いやすいのはi-VTEC+ターボだったし、3車中随一のロングホイールベースも手伝ってか、もっともクセの少ない直進安定性、車線変更時のヨーの収まりも自然だ。
ただ、後席の乗り心地もそれなりに快適だが、前席といちばん差があるのもN-BOXジョイで、撥水加工シート生地のせいか、横方向サポートが落ち着かない。逆にいえば前席=ドライバーズシートが、それだけ快適なのだ。
ただし、走りの面でどのスーパーハイト軽にも共通することは、往復の両日とも冬の寒波で強い北風が吹きつけていて横風に3車ともめっぽう煽られ、しっかりステアリングを保持しての修正舵が必須だったこと。
それでも車線を守れる程度に走れることを賞賛すべきかもしれないが、大の男が着座して握り拳×2ほど頭上が余っていることを思うと、高速移動で要らぬ苦労を背負うことと、何がトレードオフになっているのか、考えさせられる。
それに第二東名120km/h区間では、やはりというべきか3車とも燃費が目に見えて悪化した。それまでの燃費に比して、約16%悪化したのは4WDかつMHEVのデリカミニ、約14%ほど下がったのがスペーシアギア、約10%にとどめたのがN-BOXジョイだった。
とはいえ大阪を全車満タンで出発して、中間の浜松SAで給油1回、それだけで東京は羽田近くまで3車とも走り切るという、アシの長さは確認できた。
街なかを多く含む京阪区間での燃費は、走行距離36kmに対しデリカミニが16.1km/L、N-BOXジョイが20.6km/L、スペーシアギアが24.5km/Lと圧倒的だった。ただし、スペーシアギアがほぼひとり乗りで有利だったこともあり、続く高速区間ではドライバー以外の人員を乗せ替えながら、完全イコールでないとはいえ均等化を図って計測した。
東京は羽田に着いた時点で、3車それぞれのトリップメーター走行距離と表示燃費、ガソリン補給量による実測実費は、デリカミニが(518.7km走行、平均14.2km/L、途中給油量18.83リットル・3822円、最終給油量20.64リットル・3756円)、スペーシアギアが(523.4km走行、平均20.2km/L、途中給油量12.96 リットル・2631円、最終給油量15.55リットル・2830円)、そしてN-BOXジョイが(515.5km走行、平均18.9km/L、途中給油量12.29リットル・2495円、最終給油量14.96リットル・2725円)だった。撮影の都合で3車は同じルートとはいえ同じ走行距離を同じペースで走ったわけではなく、表示値を実測の給油量で割れば、誤差ゼロはN-BOXジョイだけで、デリカミニは8%ほど、スペーシアギアは10%ほどサバ読み側に誤差が出ていた。
いずれにせよ、ルーフレールなしでわずかながら前面投影面積が少なく、ロングホイールベース化の恩恵を最大限に活かしたN-BOXジョイが、大崩れしにくい好燃費を発揮し、過剰な装備機能の‘レス化’を個性に替えて抜きん出た。
アウトドア・タッチで個性あふれるスーパーハイト軽は、すでに省燃費だけで選ばれる対象ではない。だからこそ日常用途プラス近隣への週末レジャーでバイパス道路を走るぐらいが、本来の使われ方だろう。成熟というか飽和し切った軽自動車の不満な点が、いずれトレッドや重心高が限られるがゆえの不安定さに起因していることを鑑みれば、そろそろコミューターとしての軽自動車規格と開発余地は限界といえるだろう。
軽は必需品だからこそ同程度のユーザーコストで、より都市間移動や高速域でアクティブ&パッシブセーフティが高い、そんな「次世代スーパー軽」的なスモールカー枠を促す税制や仕組みを、大真面目に考えるべきなのだ。
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みんなのコメント
カタログデータでは三菱の燃費が一番いいことになっていたが、一番良かったのがワゴンRでワーストがek ワゴンだった。
ekワゴンは当時軽自動車唯一の電子スロットルでアクセルが開きにくく鈍足のため、他車に遅れないようアクセルを必要以上に踏んでしまったために燃費悪化を招いたのかもしれない、と記事では分析していた。
やがて、三菱の燃費偽装が報道されたとき、実際に走らせて得たカートップのデータは正しかったんだな、と思った。