高級ミニバン市場を作ったのも超豪華2列シートを開拓したのもエルグランドのはず。でも今やアルファード一強に……この2台にこれほどまで差がついたキッカケってなによ!? そしてエルグランドに足りない要素って!?
文:青山尚暉/写真:ベストカーWeb編集部
20倍も売れているアルファード!! エルグランドが勝つために必要なコト5選
■元祖はエルグランドなのに……時代はアルファード一強!!
モデル途中のビッグマイチェンで兄弟のヴェルファイアを大きく突き放したアルファード。今やファミリーだけでなくVIPも愛用するほど
国産ハイエンドミニバンは何? と聞かれて、誰もが真っ先に頭に浮かぶのは、トヨタ アルファードではないか。
今や国産ハイエンドミニバンを望む一般ミニバンユーザーはもちろん、VIP、芸能人の移動手段としてアルファードは絶大なる人気を誇る。
かつてクラウンやレクサス LSに乗っていたお偉いさん、芸能人もこぞってアルファードに乗り換えているほどで、永田町を走り、一流ホテルの大宴会シーンでのホテル前やTV局に並ぶクルマを見ても、それは明らかだ。
が、国産ハイエンドミニバンにはもう1台、日産 エルグランドがあることを忘れてはならない。
しかし、上記のシーンでエルグランドは極めて少数派。街を走る数、高速道路を疾走する姿、スーパーマーケットやレジャーランドの駐車場に止まっている数からしても、もはや国産ハイエンドミニバンは数的にも王者アルファード一強と言っていい。
■トヨタ本気の反撃!! アルファードは遅れて登場も当初からハイブリッドも
初代モデルはデビュー直後にハイブリッドを追加するなど、エルグランドにはない仕様を追加するなど本気の反撃であった
とはいえ、振り返れば国産高級ミニバン市場を開拓したのは日産 エルグランドのほうで、その初代は販売チャンネル別のE50型キャラバン・エルグランド、ホーミー・エルグランドであり、デビューは1997年に遡る。
初代は大ヒット。商用車のキャラバンやホーミーとは異なる多人数乗用車=高級ミニバンとして、月間1万台を売っていたほどである。
その2代目は2002年にデビュー。まだ商用車由来のFR(後輪駆動)、高いフロアを採用していたものの、それなりに売れていた。
だが、風向きが変わったのは同年同月の2002年5月に打倒エルグランド(!?)として登場したトヨタ アルファードの存在だった。
すでに前輪駆動を採用し、よりフレッシュで堂々感あるエクステリアデザイン、フロアの低さや室内高の高さで勝負。
しかも、ガソリン車のみの(今でも!!)エルグランドに対して、デビューから1年ちょっとの2003年7月に、すでに待望のハイブリッドモデルを追加していたのだ。
当時の試乗会で、開発陣から「大きく重いアルファードのようなクルマにこそ、燃費向上のためのハイブリッドは必要なのです」という力強い言葉を聞いたことを今でも忘れない。
■販売台数は1/20に……高級車なのにアルファードは2022年に10位と大健闘
何度も改良を重ねているが、未だハイブリッドの設定はなし。先進安全装備に至っては昨今の軽自動車よりも機能が少ないといった点も
それから約21年。現在のアルファードとエルグランドの関係を見てみると、アルファードの1人勝ち状態が続いている。
現行モデルのアルファードは2015年に発売された3代目であり、本年フルモデルチェンジが予定されているが、モデル末期でも爆発的に売れてたは周知の通り。
具体的には2022年の年間販売台数は6万225台。これは全乗用車の中で堂々の10位というものだ。直近の2023年1月でも5144台も売れているのだから、人気に陰りは一切ない。
一方、現在販売されているエルグランドはE52型として2010年に登場した3代目。もう13年も経つ古参である。
この世代でプラットフォームがやっとFF化され、発売当時はその先代に対する洗練度に感動したもの。
世界初となる中折れ機能つきキャプテンコンフォータブルシートや電動3列目席格納機構の採用に驚かされたものの、やはりアルファードと比較すると分が悪かったのも事実。
エルグランドの2022年年間販売台数は2214台、2023年1月は254台の販売台数でしかない。
■エルグランド敗因はハイブリッドなしと幅広デザイン!!
その大きな理由として挙げられるのが、ハイブリッドモデルが今の今になってもないこと。
それはAC100V/1500Wコンセントの有無につながり、車内でノートPCを使って仕事をしたいユーザーにとっては、AC100V/1500Wコンセントは必須。当然、非電動車のエルグランドにはなく、その違いは大きい。
エクステリアデザインもアルファードはより堂々感がある。とくにリヤスタイルは、アルファードはほぼ長方形でバーンと立派に見えるのに対して、エルグランドは台形スタイルでルーフにいくにしたがって絞られる先細デザイン。どちらが堂々と見えるかは一目瞭然だ。
■室内高の差で快適性も大違い!! 2列目は当然3列目もアルファード絶対有利
オットマンなど豪華な2列目を当たり前のモノにしたのはエルグランドであった。そして中折れ機能付きは未だアルファードも採用していない豪華装備
両車ともに特等席として立派な2列目キャプテンシートを用意しているが、ここで差がつくのが実は室内高。エルグランドの室内高は1300mm。対するアルファードは1400mmだ。
アルファードの開発陣に以前、「ミニバンの室内を広々と見せ、広々と過ごすには室内高1400mmが不可欠」と聞いたことがある。
よって、スライドドアを開けた瞬間、室内空間がより広く見えるのはアルファードのほうなのである。全高にしてもアルファードの1950mmに対してエルグランドは1815mmでしかない。
細かい話をすれば、身長172cmの筆者のドライビングポジション基準で2列目席の広さは、アルファードが頭上に270mm(エグゼクティブラウンジシート)、膝周りに最大510mm(エグゼクティブパワーシート)。
対してエルグランドは同250mm、最大430mmでしかない。
3列目席はアルファードの場合、頭上に145mm、膝周りに最小130mm(2列目席スライド位置による/ベンチシートは最大255mm)。
エルグランドの3列目席は頭上に140mm、膝周りは最小40mmだ(2列目席スライド位置によって215mm以上になる)。
また、2/3列目席の乗降性にかかわるスライドドア部分のステップ地上高もアルファードが有利。
具体的にはどちらも2ステップの乗降になるのだが、アルファードの1段目は地上380mm、フロアは地上450mm。
エルグランドは1段目の地上400mmはともかく、フロアはそこから95mm高い495mmと、アルファードより45mmも高く、乗降容易性としてもアルファードが上回る。
しかも、ファミリーカーとしてこのミニバンを使うシーンでは3列目席の乗車の機会も多いはず。
3列目席のかけ心地、とくに着座性、立ち上がり性にかかわるフロアからシート座面前端までの高さ=ヒール段差はアルファードのほうが高く、より座りやすく、立ち上がりやすい利点さえ持っているのだ。
ちなみに2018年のビッグマイナーチェンジで、アルファードの顔つきがヴェルファイア以上に迫力あるものになった時点で、アルファードとヴェルファイアの関係も大きく変わり、その後のアルファード一強状態を決定づけたと言えるだろう。
■新型エルグランドはe-POWERで巻き返しか!?
セレナに高級グレードが用意されてもやっぱりエルグランドは必要なモデル!! 打倒アルファードで登場を期待
エルグランドがなぜ、アルファードに勝てないかの理由をまとめると、主にデザイン、ハイブリッドの有無、室内高、乗降性、3列目席の居心地……ということになるのではないか。ガソリン車としての走りはなかなかなのに、である。
そうした様々な要因、商品性から、国産ハイエンドミニバンはアルファードの一強となっているというわけだが、もしエルグランドが新型となりe-POWERモデルが追加。
そしてプロパイロット2.0が搭載されるようなことになれば(現行型では基本設計の古さから無理な話だが)、今ほどのアルファードとの差はなくなるかも知れない。
日産最上級ミニバンのエルグランドが、e-POWERやプロパイロットを引っ提げてぜひとも復権してほしいところである。国産Lクラスミニバンの選択肢がアルファード一択ではつまらないではないか!!
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みんなのコメント
日産がようやく新型で挑戦するって良い事だよ。
膨大な開発費もいるだろうし、これぞライバルってとこだろう。
方や10年も前の車を中国生産して日本で売ろうとするメーカーもあるけど。