■ミニバンやSUVのスポーツモードはなんのためにある?
ミニバンやSUVなど、いわゆるスポーティではないモデルにも「スポーツモード」が採用されているケースは少なくありません。
そこにはどのような理由があるのでしょうか。
スポーツカーは多くの人を魅了する華やかさを持っているものの、実際の新車販売に占める割合は決して高くはありません。
一方、「スポーツモード」を採用しているモデルという視点で見ると、その数はそれなりに多いことがわかります。
たとえば、それぞれ名称は多少異なるものの、トヨタやホンダのハイブリッド車のほとんどにスポーツモードが備わっており、そのなかにはトヨタ「ノア/ヴォクシー」やホンダ「ヴェゼル」のようないわゆるスポーティなモデルではないものも含まれています。
また、スズキ「ハスラー」のような、軽自動車にもスポーツモードが備わっている例が見られます。
スポーツモードを使用すると、トランスミッションやエンジンの制御プログラムを変更することで加速性能が向上するなどの効果があるほか、メーターパネルの色が変化するなどして雰囲気を高める例も見られます。
さらに、一部の高級車などではサスペンションや駆動形式のセッティングも変化するなど、クルマのキャラクターが大きく変わる場合もあります。
では、なぜいわゆるスポーツカーではないモデルにも、スポーツモードが備わっていることが多いのでしょうか。
この点について、とある新車系の販売店関係者は次のように話します。
「スポーツカーの販売台数自体は決して多くはありませんが、スポーツカーに乗ってみたいというお客様自体は少なくありません。
ただ、特にファミリー層などは実用性の問題などからスポーツカーを選ぶことが現実的ではなく、やむをえずミニバンやSUVを選ぶケースも見られます。
また、スポーツカーを保有していたものの、ライフステージの変化によって泣く泣く手放さざるを得ないお客様もいらっしゃいます。
そうしたお客様にとってスポーツモードは、ミニバンやSUVを受け入れるひとつの『妥協ポイント』となっているようです。
そういった意味では、スポーティなルックスのミニバンやSUVが増えていることと共通していると思います」
■ニーズの多様化で「走行モード」の中身も進化している?
一方、自動車メーカーの立場からは、スポーツモードのまた違った役割が見えてきます。
ある自動車メーカーの関係者は次のように話します。
「かつては専用開発の部品が多かったこともあり、モデルごとのキャラクターは必然的に異なっていました。
しかし、現在では少数のプラットフォームから複数のモデルを開発する手法が一般的となっており、かつてと比べるとモデルごとの個性を引き出すことが難しくなりつつあります。
特に『走り』に関わる部分はどうしても均一化してしまいがちです。
そこで、スポーツモードを採用することで、同じクルマのなかに複数のキャラクターを持たせるという方法をとることが多くなってきたと考えられます」
プラットフォームをはじめとする部品の共有化が進んだことで、クルマの基本性能は大きく向上したと言われています。
また、コスト削減にも大きく貢献していることは言うまでもありません。
ただ、近年ではユーザーの嗜好も多様化しており、自動車メーカー各社は少数のプラットフォームから多様なユーザーニーズに対応することが求められるようになっています。
そして、スポーツモードの採用はそうした課題に対する有効な解決策のひとつとなっているようです。
それに加えて、電子制御技術の進歩により、制御プログラムの変更がしやすくなったということもスポーツモードを採用するモデルが増えてきた背景にあるようです。
※ ※ ※
スポーツモードを採用しているモデルの多くは「エコモード」も採用されています。
これは、スポーツモードとは反対にアクセルレスポンスや空調などを制御することで、燃費性能の改善を図るというものです。
つまり、スポーツモードとエコモード、そしてノーマルモードという3つのキャラクターを使い分けられるモデルが増えていることになります。
またヒョンデ「アイオニック5N」では、走行モード以外にブーストモードのような瞬間的に出力を向上させる仕様があるなど、今後も「走りの味付け」は広がりそうです。
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みんなのコメント
峠道とかで、エコモードだとすぐシフトアップしてエンジン回転数下げるのできびきび走れないとき、スポーツモードあるとちょっと助かる。
でもね、マニュアルならどんなときも自分の判断しだいなのわよ…