この記事をまとめると
■アメリカは国土が広大であるがゆえにクルマの事情が各エリアで大きく異なる
交通違反でも射殺される可能性はゼロじゃない! アメリカで取り締まりを受けたら行動には要注意!!
■デトロイトではエンジン車がまだまだ多い一方で、カルフォルニアでは電気自動車が多い
■エントリーカー的な小排気量コンパクトカーのラインアップが各メーカーで減っている
アメリカは地域ごとでクルマ事情がまったく違う
今回、ミシガン州デトロイト市で開催された、北米国際オートショー(通称デトロイトショー)の取材を終えた帰国途中に、カリフォルニア州ロサンゼルス市とその周辺を訪れた。その昔、南カリフォルニア在住の事情通から「南カリフォルニアだけを見て、アメリカを語ったつもりでいるな」と言われた。
言わずと知れた広大な国土を持つのがアメリカ。東西両沿岸部と内陸部など、地域によって新車販売の動向も大きく異なっているのである。日本車など海外ブランド車は東西両沿岸部ではかなりの頻度で見かけることができる。
日本の輸入車ディーラーを見てもわかるとおり、アメリカでも海外ブランドディーラーは人口が密集し、感度のいい人たちが多く住む地域を中心にディーラー網構築をしている。海外ブランドながら、アメリカの新車販売2021暦年締め年間新車販売ランキングで初めてアメリカでブランド別トップとなったトヨタは、内陸部でも販売ネットワークで強みを見せることで、ほかの海外ブランドに差をつけているともいわれている。
「内陸部でも州都や中核都市などでは、タクシーでもプリウスが当たり前のようになっています。そして感度の良い人たちはプリウスなどのエコなクルマに乗るようになってきました。“ハイブリッド=トヨタ=プリウス”というような認識も大げさではありません。その点でも、トヨタは強みがあるといえるでしょう」(事情通)。
デトロイトでレンタカーを借りようと、営業所で指定された駐車エリアへ行くと、停まっているレンタカーはGM(ゼネラルモーターズ)車ばかりであった。日本車はアメリカでも半導体不足の影響をまだ引きずっているともいわれ、生産体制が完全復調ではないともいわれており、小売り販売に車両を優先的にまわしているようで、フリート販売にまで車両がまわらないように筆者には見えた。また、レンタカー会社も新型コロナウイルスの影響で経営状態がボロボロでもあり、そもそも新車への入れ換えも思うように進んでいないようであった。
レンタカーを借りてデトロイトの街なかへ出ると、走っているのはICE(内燃機関)車ばかり。しかも、「えーっとこのクルマは?」と車名を思い出すのもままならないような、GMやフォード、ステランティス(クライスラー系ブランド)といったアメリカンブランド車ばかりが走っていた。もちろん、デトロイト及び周辺都市にはアメリカンブランドの本社や工場、関連企業が多数あるのだから、そのような地域に住んでいれば知り合いにアメリカンブランド関連に従事している人もいて当たり前となるだろうし、消費者マインドとしても、アメリカンブランドを応援したいという気持ちが強いから、これらが目立つ風景となっているのは当たり前と言えば当たり前ともいえる。
そして、ロサンゼルスへ移動。同じレンタカー会社の空港営業所へ行くと、GMのシボレー・マリブというセダンが目立つものの、デトロイトでは目立っていたGM系のSUVは激減し、アメリカンブランドではフォードのSUVがパラパラある程度。日系ブランドでは日産車が目立ち、ローグ(エクストレイル)やパスファインダー(SUV)、アルティマ(セダン)などが停まっていた。
デトロイトではほとんど見かけなかったヒョンデや起亜といった韓国系も多く、VW(フォルクスワーゲン)車も停まっており、レンタカー会社の営業所だけでも見える風景は随分異なっていた。また、レンタカーでもBEV(バッテリー電気自動車)のテスラをチョイスしている人が多いのも「カリフォルニアらしいなぁ」と思ってみていた。
カルフォルニアではBEVが一気に普及
カリフォルニアは、アメリカでも「カリフォルニアだけ」と言ってもいいほど、BEVの普及がめざましい地域。街なかへ出ればまさにBEVがビュンビュン走りまわっている。昨年訪れたときは圧倒的にテスラ車が多く、”テスラだけ”ともいえる風景だった。今年もテスラが多いことは変わらないが、VW ID.4やヒョンデ・アイオニック5、起亜ソウルEVなどテスラ以外のBEVが目立っていたのに驚かされた。
「カリフォルニアでは、そもそも高値傾向の続いていたガソリン価格が再び上昇傾向となっています。日々の移動手段がほぼマイカーとなるロサンゼルス地域では、とくにサラリーマン世帯が乗っていたICE車のダウンサイズや、ICE車からBEVへ乗り換えるのが顕著となっております。そもそもテスラ車も値下げを行っており、全般的にいままでより所得の低い層へ(いまは二極化が目立つものの、いわゆる中間所得層)のBEV普及へトレンドが移行しているように見えます」(事情通)。
富裕層の間では「テスラに飽きた」という様子も目立っていると事情通は語ってくれた。値下げにより、もはや自分たち(富裕層)の乗るクルマではないという認識もあるようだ。富裕層は「ネクストテスラ」として、BEVベンチャーなどがラインアップする高額BEVへ乗り換えているように見えた。つまり、いままではBEVはセカンドカー扱いだったが、「段々ファーストカーという見方になってきているのかなぁ」とも筆者は考えている。
日本国内では、「いくらBEVが普及しても化石燃料で発電するのだから、発電時に温室効果ガス出すでしょ」との話が出るが、カリフォルニア州ではすでに全域へ供給する電気はほぼ太陽光や風力などのクリーン発電となっており、電力需要の増える朝夕などに限り、従来の発電所も活用しているとの話であった。
カリフォルニア州は面積自体がかなり広大なうえに、内陸部はほぼ砂漠となっている。その砂漠をレンタカーで走れば、道路沿いのそこかしこにメガソーラー(大規模太陽光発電所)や、広大な風力発電所が存在している。そのため、いままでもロサンゼルス地域とネバダ州ラスベガスとを結ぶ州間高速道路15号線(インタ―ステート15号線/I-15)の、ロサンゼルスとラスベガスの中間地点の砂漠地帯に十数器のテスラの充電ステーションがあったのだが、今年訪れるとその充電ステーションの近くにはさらに数十器となるスーパーチャージャー充電器を備えた広大なテスラの充電ステーションが完成していたI-15ではサービスエリアでも急速充電施設が新たに設置されており、人気のない砂漠のなかをひた走るロサンゼルス~ラスベガス間であっても不安なくBEVで移動することが可能となっている。
生活圏内の移動については、カリフォルニア州はすでに補助金を交付し戸建て住宅のかなり多くには充電施設が設置されており、自宅での充電で事足りる状態となっている。つまり、BEVで不便を感じるということはほぼほぼなくなっているように見える。アメリカのなかでもカリフォルニア州が突出してNEV(自然エネルギー車)の普及に取り組んでいるのも事実。
さらに課題として事情通は、「すでに各メーカーの新車ラインアップをみると、所得がそれほど豊かではない人向けの、日本でいうところのエントリーカー的な小排気量でコンパクト、そして廉価なICE(内燃機関)を搭載する実用車が減っているのが気になります」という問題提起もある。
中古車という選択もあるが、中古車となると世代が古くなるのは当たり前。となると排気量は大きめで、最新のICEに比べれば環境性能だけでなく燃費性能も劣る。補助金などのインセンティブを利用しても割高なBEV(新車)への乗り換えが難しい層も多く、いまのガソリン価格高騰の影響を所得の低い人ほど受けることになる。
「ハイブリッド車の中古車があるのでは?」との話もあるだろうが、アメリカではカリフォルニアですらハイブリッド車が注目されてきたのは最近で、プリウス以外では現時点では中古車流通は少なめとなっている。今後は選択肢として存在感を見せそうだ。
富裕層メインからだんだん中間所得層へBEVの普及が進んでいるカリフォルニア州。所得の低い人たちへのBEV普及はシェアリングで対応との話もあるが、どのように今後普及を進めていくのか、その進め方をじつに興味深く今後もウォッチしていきたい。
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みんなのコメント
更には他国からの輸入に頼らなくても
十分な原油量が採取できる見込みが出てきた
その上でガソリン車なのかEVなのかは
各州の判断による