毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。
時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。
ついに価格判明! 日産 エルグランド 10年目の改良モデルは10月12日デビュー!!
しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。
訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はホンダ キャパ(1998-2002)をご紹介します。
【画像ギャラリー】ベースモデルとなったロゴとも比較! ホンダ キャパの画像をギャラリーでチェック!!!
文:伊達軍曹/写真:HONDA
■オデッセイ、ステップワゴンに続く新世代のマルチワゴンとして登場したキャパ
扱いやすい5ナンバーサイズのトールワゴンとして質実剛健な作りを有していたが、その質実剛健さが市場には「地味」と受け取られ、実際、特に派手なポイントはなかったため人気薄となり、1代限りで消えていったコンパクトカー。それが、ホンダ キャパです。
ホンダ キャパ。オデッセイ、CR-V、ステップワゴン、S-MXなどを送り出した「クリエイティブ・ムーバー(生活創造車)」の第二ステージ「「J・ムーバー」シリーズの第1号として登場
1990年代半ばのホンダは「生活創造車」をテーマに、オデッセイやCR-Vなどを「クリエイティブ・ムーバー」シリーズと呼んでいました。
そしてそこから派生したコンパクトクラスを「Jムーバー(ジョイント&ジョイフル・ムーバー)」と呼び、その第1弾として1998年に発売されたのがキャパでした。
ベースとなったのは当時のホンダの主力コンパクトカーだった「ロゴ」で、全長と全幅は3775mm×1640mmと小ぶりですが、全高はロゴより160mm高い1650mm。
そして室内寸法も長さ1750mm×幅1335mm×高さ1240mmと、ちょっとしたミニバン並みの広さです。
キャパのベースとなったロゴ(1996-2001年)
この余裕ある室内サイズを生かしたキャパは、実用的な小型車でありながら座り心地の良い大ぶりなシートを採用し、足元のゆとりも十分。
後席には、クラス最大級となる250mmのスライドが可能な「マルチモードリアシート」が採用されていました。
キャパの車台は前述のとおりロゴがベースではあるのですが、厳密にいえば新設計。
ロゴの車台の上にもう1枚のキャビンフロアを配置した新骨格の二重フロア構造「デュアルデッキパッケージ」を採用していたのです。
補強材をフロア下に埋め込むことで高強度ボディとし、前席シートレールやリアヒーターダクトなどをフロア下に埋め込むことにより、いわゆるフラットフロアも実現。
キャパ開発にあたりホンダがめざしたのは乗る人のゆとりを最大限に広げる
「リラックス・コンパクト」の具現化だったという。なお「CAPA」は「才能」「包容力」「収容能力」などの意味をもつ英語「CAPACITY」からの造語
さらにこの二重フロアは「室内の静粛性」にも大きく貢献していました。
搭載エンジンは最高出力98psの1.5L直4SOHCのみで、トランスミッションは「ホンダマルチマチック」と命名されたCVT。
駆動方式は当初FFのみでしたが、1999年のマイナーチェンジ時に4WDが追加されました。
キャパは走りにおいてもまずまず優秀でした。
ホンダ車としてはアンダーパワーといえる最高出力98psのエンジンでしたが、特に力不足であると感じることもなく、良好な視界としなやかな乗り心地、そして二重フロアならではの良好な静粛性により、長距離クルーズも苦としないコンパクトカーに仕上がっていたのです。
そんなホンダ キャパではあったのですが、残念ながら販売は低迷。
次世代コンパクトである「フィット」をベースに作られた「モビリオ」の登場後もしばらくは併売されていましたが、2002年1月、キャパはその生産と販売を終了しました。
■地味さが命取りに!? ホンダ キャパが一代限りとなった理由
地味ではあるものの、けっこういい車(実用的で、なおかつまあまあ走りの良い車)ではあったホンダ キャパが、1代限りであえなく消滅してしまった理由。
それは、本稿のなかで繰り返し使ってきた単語である「地味」であるというのが、主たる理由でした。
キャパにはわかりやすいスペック上の華がなく、全体や各部のデザインも、良く言えばオーソドックスで好ましいのですが、あえて悪く言うなら「没個性的で地味」といった感じになります。
リアビュー。特別仕様車の設定や2度に渡るマイナーチェンジ、4WD車の投入車などもふるわず、2002年1月に生産・販売を終了したキャパ。RVブームのなかにあってキャパの外観は今よりももっと地味に映ったのかもしれない
個人的には、地味であることが悪いとはまったく思いませんが、やはりRV(レクリエーショナル・ヴィークル)ブームの中を生きていた多くのユーザーとしては、「せっかくだから、もう少し遊び心のある車を買いたい……」と感じたのでしょう。
そういった意味でホンダ キャパも、過不足ない1.5L自然吸気エンジンをメインとしつつも「ちょっとパワフルな過給器付きグレード」をカタログにちょい足ししたり、せっかく広大なフラットフロアなのですから、「ATはコラムシフトにして、室内をウォークスルーにする」などの細工を施していたならば、もしかしたらもう少し売れたのかもしれません。
しかしそういった“遊び心”という側面は、キャパの実質的な後継モデルであるモビリオが引き継いだというか実現させましたし、「大きすぎないサイズの、背が高い実用車である(それでいて走りも悪くない車である)」というキャパの基本コンセプトは、現在のホンダ フリードでしっかり花開いているようにも思えます。
そう考えると、キャパの誕生と消滅も決して無意味ではなかったはずだと、今にして思うのです。
■ホンダ キャパ 主要諸元
・全長×全幅×全高:3775×1640×1650mm
・ホイールベース:2360mm
・車重:1110kg
・エンジン:直列4気筒SOHC、1493cc
・最高出力:98ps/6300rpm
・最大トルク:13.6kgm/3500rpm
・燃費:14.8km/L(10・15モード)
・価格:155万8000円(1998年式 D)
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みんなのコメント
ロゴは名車ですよ。
当時、鳴り物入りで発売されたヴィッツでしたが
国の衝突安全テストでモデル末期のロゴに完敗。
対応に追われている間に
ホンダは初代フィットを発売。
トヨタはゴタゴタで完全に振り回されて
販売台数はアッという間に抜かれた。