現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 日産「MID4」はなぜ市販されなかったのか!? 幻に終わった和製スーパーカーを振り返る

ここから本文です

日産「MID4」はなぜ市販されなかったのか!? 幻に終わった和製スーパーカーを振り返る

掲載 更新 49
日産「MID4」はなぜ市販されなかったのか!? 幻に終わった和製スーパーカーを振り返る

■本格的な和製スーパーカーのデビュー

 日産は1980年代の中頃、『1990年までに走りにおいて世界一を狙う』というスローガンを掲げ、これを「901活動」と名付け、プロジェクトをスタートさせました。

これが「プリウス」なの!? 「フェラーリ」そっくりなプリウスが登場!

 この901活動実現に向けて開発されたモデルが、日本市場をターゲットとした「R32型 スカイラインGT-R」、北米市場をターゲットとした「Z32型 フェアレディZ」、そして欧州市場をターゲットとしたのが「P10型 プリメーラ」です。

 この3台は、いまも語り継がれるほどの優れた性能とデザインによって、実際にヒット作になりました。

 一方で、これら3車種と並行するように、あるプロジェクトが日産社内で動いていました。それが本格的な和製スーパーカーである日産「MID4(ミッド・フォー)」の開発です。

 エンジンをリアミッドシップに搭載した4WDのスポーツカーを意味するMID4は、1980年代におこなわれていた研究開発の成果を、モーターショーの場で発表することも目的とした実験車両として製作されたコンセプトカーです。

 実際に1985年のフランクフルトモーターショー、そして第26回 東京モーターショーの日産ブースでお披露目され、来場者の目を釘付けにします。

 この東京モーターショーでは、日産だけでなく各メーカーも4輪操舵や4WD、DOHC4バルブエンジンなど、次世代の新技術を発表していましたが、日産はMID4だけでなく、後に市販された「Be-1」を展示するなど、話題が豊富でした。

 FRPでつくられたMID4のボディは、フェラーリ「512BB」をイメージさせるスーパーカーのフォルムで、高性能車では定番だったリトラクタブルヘッドライトを採用した「クサビ型」のシャープなデザインを採用。

 ボディサイズは全長4150mm×全幅1770mm×全高1200mmと当時としては大柄で、車重は1230kgと比較的軽量でした。

 エンジンはリアミッドシップに横置きに搭載された、最高出力230馬力を発揮する3リッターV型6気筒DOHC24バルブで、このエンジンは後の「VG30DE型」のプロトタイプです。

 駆動方式はセンターデフにビスカスカップリングを組み合わせたフルタイム4WDを採用。サスペンションは4輪ストラットの独立懸架とし、リアにはR31型 スカイラインに採用した後輪操舵機能「HICAS(ハイキャス)」を搭載することで、低中速域でのシャープなハンドリングと、高速域での安定性を両立していました。

 また、ブレーキは4輪ベンチレーテッドディスクとし、タイヤは205/60VR15と、いまでは小径ですが当時としては大径かつ低扁平率のスポーツカーらしい足まわりとなっています。

※ ※ ※

 こうして、センセーショナルなデビューを飾ったMID4は、東京モーターショーの話題を独り占めしましたが、2年後の第27回 東京モーターショーには、大きく進化したMID4が再び現れることになります。

■市販化に向かって動き出したMID4 IIだったが……

 MID4の発表から2年後、1987年に開催された第27回 東京モーターショーの日産ブースに、大幅に進化した「MID4 II」が出展されました。

 MID4 IIの外観は、ややクラシカルだった先代から変貌し、未来感のあるフォルムとなっています。ボディサイズは全長4300mm×全幅1860mm×全高1200mmと、ひとまわり大きくなり、車重も1400kgと重くなっていますが、これは後述するエンジンの変更や補機類の追加によるものです。

 また、外観以上に変化したのがエンジンとシャシで、最高出力330馬力のV型6気筒DOHCツインターボエンジンの「VG30DETT型」を、リアミッドシップに縦置きに搭載。ラジエーターとふたつのインタークーラーをエンジンの横にレイアウトしたことで、ボティサイドにはエアインテークが開いています。

 5速MTのトランスミッションはエンジンの前方に配置され、駆動方式はビスカスカップリングとセンターデフを組み合わせたフルタイム4WDを踏襲。

 サスペンションはフロントにツインダンパー式のダブルウイッシュボーン、リアにはHICAS付きのマルチリンクを採用し、路面の追従性向上と運動性能が飛躍的にアップしています。

 ブレーキは4輪ベンチレーテッドディスクを採用し、タイヤサイズはフロントが235/55ZR16、リアが255/50ZR16の前後異径サイズです。

 内装もモダンになり、乗員を包み込むようにドアからコクピットまでラウンドするパネル形状となり、スイッチ類をメーターナセルに集中することで機能的に配置。

 再び東京モーターショーで話題をさらったMID4 IIは、展示されるより前にジャーナリスト向け試乗会がおこなわれ、高性能ながらじゃじゃ馬的な操縦性ではなく、スムーズに乗れるスーパースポーツと評されます。

 内外装の仕上がりはいつ市販化されてもおかしくないほどのクオリティで、実際に1985年頃から市販化に向けた検討が始まっており、MID4 IIは初期のプロトタイプという位置づけでした。

※ ※ ※

 こうして市販化に向けて動き出したMID4は、開発と同時に生産についても綿密な検討がおこなわれ、1980年代の終わり頃には現実味をおびていました。

 しかし、さらなる検討の結果、市販化は中止という経営判断が下されます。

 その理由としては、当時、日本は好景気にわいていましたが、日産の財務状況は過剰な設備投資のため悪化し始めており、MID4の市販化による莫大な開発費用と工数の捻出は難しいということでした。

 バブル崩壊で開発中止となったクルマはいくつもありますが、MID4はバブルの真っ最中に中止となったということです。

 ファンの期待に反して市販には至らなかったものの、MID4の開発で確立した技術の多くは、フェアレディZやスカイラインGT-Rなどの市販車で生かされ、日の目を見ることになります。

 MID4とMID4 IIは、神奈川県座間市にある展示施設「日産ヘリテージコレクション」に保存されており、現在は新型コロナウイルス感染拡大の影響で見学を中止していますが、再開されれば実車を間近で見ることができます。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

ヒョンデ、新型高級SUV「アイオニック9」でレンジローバーに対抗 過去最大のEVがデビュー
ヒョンデ、新型高級SUV「アイオニック9」でレンジローバーに対抗 過去最大のEVがデビュー
AUTOCAR JAPAN
勝田貴元選手は甘口派!! 好きなトッピングが衝撃!! モリゾウさんもカレー大好きだった件
勝田貴元選手は甘口派!! 好きなトッピングが衝撃!! モリゾウさんもカレー大好きだった件
ベストカーWeb
トヨタ新型「“4WD”スポーツカー」初公開! “現代版セリカ”な「2ドアクーペ」! 「旧車デザイン」&300馬力「ターボエンジン」採用の「GR86」米に登場
トヨタ新型「“4WD”スポーツカー」初公開! “現代版セリカ”な「2ドアクーペ」! 「旧車デザイン」&300馬力「ターボエンジン」採用の「GR86」米に登場
くるまのニュース
「金田のバイク」でおなじみのSFアニメ「AKIRA」 11月30日にトムス・エンタテインメントが無料配信
「金田のバイク」でおなじみのSFアニメ「AKIRA」 11月30日にトムス・エンタテインメントが無料配信
バイクのニュース
ジャガーが3年前に開発中止した大型SUV「Jペイス」 全長5m強のプロトタイプ、画像で明らかに
ジャガーが3年前に開発中止した大型SUV「Jペイス」 全長5m強のプロトタイプ、画像で明らかに
AUTOCAR JAPAN
寒風吹きすさぶ自動車各社、日産は北米の従業員6%が希望退職、フォードは欧州で4000人削減[新聞ウォッチ]
寒風吹きすさぶ自動車各社、日産は北米の従業員6%が希望退職、フォードは欧州で4000人削減[新聞ウォッチ]
レスポンス
子育てもひと段落したのでスズキ「ジムニー」にVWゴルフから乗り換え…「オープンカントリーR/T」をセットして趣味環境は整いました
子育てもひと段落したのでスズキ「ジムニー」にVWゴルフから乗り換え…「オープンカントリーR/T」をセットして趣味環境は整いました
Auto Messe Web
「最悪の出来事だ……」ヒョンデ、タイトル王手ヌービル苦しめたWRCラリージャパンでのトラブルを謝罪。ターボ関連の疑い
「最悪の出来事だ……」ヒョンデ、タイトル王手ヌービル苦しめたWRCラリージャパンでのトラブルを謝罪。ターボ関連の疑い
motorsport.com 日本版
「すごい衝突事故…」 東富士五湖道路が一時「上下線通行止め!」 ミニバンが「横向き」で“全車線”ふさぐ… 富士吉田で国道も渋滞発生中
「すごい衝突事故…」 東富士五湖道路が一時「上下線通行止め!」 ミニバンが「横向き」で“全車線”ふさぐ… 富士吉田で国道も渋滞発生中
くるまのニュース
「GT-R」の技術が注ぎ込まれたV6ツインターボ搭載、日産『パトロール』新型が中東デビュー
「GT-R」の技術が注ぎ込まれたV6ツインターボ搭載、日産『パトロール』新型が中東デビュー
レスポンス
「アルピーヌA110RGT」が初のヨーロッパラウンド以外となるラリージャパン2024に参戦!
「アルピーヌA110RGT」が初のヨーロッパラウンド以外となるラリージャパン2024に参戦!
LE VOLANT CARSMEET WEB
バイクニュース今週のダイジェスト(11/18~22)
バイクニュース今週のダイジェスト(11/18~22)
バイクブロス
超クラシック! ホンダが新型「ロードスポーツ」発表で反響多数! ロー&ワイドの「旧車デザイン」に「スタイル最高」の声! 女性にも人気らしい新型「GB350 C」が話題に
超クラシック! ホンダが新型「ロードスポーツ」発表で反響多数! ロー&ワイドの「旧車デザイン」に「スタイル最高」の声! 女性にも人気らしい新型「GB350 C」が話題に
くるまのニュース
上質な乗り心地が最高! 軽二輪クラスのスクーター5選
上質な乗り心地が最高! 軽二輪クラスのスクーター5選
バイクのニュース
タイヤに記された「謎の印」の意味とは? 気になる「赤と黄色マーク」の“重要な役割”ってなに? 気づけば消えるけど問題ないのか?
タイヤに記された「謎の印」の意味とは? 気になる「赤と黄色マーク」の“重要な役割”ってなに? 気づけば消えるけど問題ないのか?
くるまのニュース
メルセデス・ベンツの新世代4名乗りオープンカーのCLEカブリオレに高性能バージョンの「メルセデスAMG CLE53 4MATIC+カブリオレ」を設定
メルセデス・ベンツの新世代4名乗りオープンカーのCLEカブリオレに高性能バージョンの「メルセデスAMG CLE53 4MATIC+カブリオレ」を設定
カー・アンド・ドライバー
アキュラIMSA車両ドライブしたフェルスタッペン、デイトナ24時間は出ないの?「出るには十分な準備をしたいけど、今は不可能だ」
アキュラIMSA車両ドライブしたフェルスタッペン、デイトナ24時間は出ないの?「出るには十分な準備をしたいけど、今は不可能だ」
motorsport.com 日本版
約183万円! 三菱「新型“5ドア”軽SUV」発表に反響多数! 「走りがいい」「好き」の声!半丸目もカッコイイ「ミニ」が話題に
約183万円! 三菱「新型“5ドア”軽SUV」発表に反響多数! 「走りがいい」「好き」の声!半丸目もカッコイイ「ミニ」が話題に
くるまのニュース

みんなのコメント

49件
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村