スイッチを「OFF」にしても「AUTO」に戻る
2020年4月以降に発売される新車から、周囲の明るさが一定以下になるとロービーム(すれ違い用前照灯)を自動で点灯する「オートライト」の装備が義務化されます。薄暮れの時間帯に交通事故が多い実態を踏まえた措置です。
「やけに赤信号に捕まる…」には理由あり ドライバーが気づかない信号の仕組み
今回の法令の条文では「自動点灯に係る機能については、手動による解除ができないものでなければならない」と明記されています。では夜間に前照灯を消したい場合、どうなるのでしょうか。
すでに新法規に対応しているクルマでは、ランプスイッチが大きく変化しています。
2019年7月に発売されたダイハツの新型「タント」。ランプスイッチのポジションはこれまで「〇(OFF)」「AUTO」「スモール(車幅灯や尾灯など)」「前照灯」の4つでしたが、これが「〇」「AUTO」「前照灯」の3つになり、かつ「AUTO」がデフォルト(標準)の位置になりました。スイッチを「〇」の位置にして手を離すと、「AUTO」へ自動的に戻る仕組みです。
「走行中は前照灯を消灯できません。車速3km/h以下で『〇』に回すと前照灯が消え、そのまま約1秒スイッチを保持するとスモールランプなども消えますが、発進すればすべてのランプが自動点灯します」(ダイハツ)
マツダは2019年5月発売の「マツダ3」、9月発売の「CX-30」に新法規対応のランプスイッチを導入。ポジションは「OFF」「AUTO」「スモール」「前照灯」の4つですが、やはり「AUTO」がデフォルトで、「OFF」や「スモール」に回した場合は「AUTO」に自動で戻るとのこと。ホンダも、2019年8月発売の新型「N-WGN」に、同様のスイッチを導入しています。
ライトを手動でオフにできるが、問題がない新法規対応のクルマも
ヨーロッパではすでに2011(平成23)年からオートライトの装備が義務化されており、今回の日本の措置はそれにならう形ですが、オートライトを「手動で解除できない仕様」と規定しているのは独自のことです。現在、メルセデス・ベンツのクルマにはランプスイッチに「OFF」のポジションがないものの、アウディやBMWにはそれがあり、夜間でもドライバーが任意で前照灯を消すことができます。
今後、こうしたアウディなどのランプスイッチも仕様が変化するかと思いきや、アウディでは従来のままで、すでに2019年モデルで「日本の新法規への対応を完了している」と話します。
「当社では2019年モデルから、デイタイムランニングランプ(DRL)を全車で標準装備しています。これを一定の要件で備え付けたクルマの前照灯は、2020年から日本で適用されるオートライトの要件に適合するものとみなす、とされています」(アウディ・ジャパン)
DRLは、前照灯の一部あるいは別ユニットとして設けられる、常時点灯を目的としたランプのことです。ヨーロッパでは2011(平成23)年から、前照灯などとは別個にDRLの装備も義務化されていましたが、日本では義務化されていません。また2016年に「昼間走行灯」として法令に要件が定められるまでは減光のうえ、車幅灯と同じ扱いでした。
現在の日本車ではオプションでDRLを装着できるケースも増えており、その多くは任意の消灯も可能です。一方、アウディが日本向けモデルで標準装備しているDRLは、ヨーロッパのものと同様、エンジンONとともに自動点灯し、任意の消灯ができません。つまり、前照灯を消してもDRLは常時点灯するので、昼夜にかかわらず、ドライバーによる完全消灯はできないそうです。
なおダイハツは新型「タント」に、ハイビームをオートで点灯し、対向車などの動きに合わせて部分的に遮光する「ADB(アダプティブドライビングビーム)」もオプションで用意しています。「これがあれば、手動によるハイビーム、ロービームの切り替えも基本的には不要になり、いよいよランプスイッチに触る機会は少なくなっていくでしょう」とダイハツは話します。
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