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社運をかけた失敗作 お粗末なシティローバーと隠れた名車ストリートワイズ 誕生秘話

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社運をかけた失敗作 お粗末なシティローバーと隠れた名車ストリートワイズ 誕生秘話

会社を救えなかった名車と迷車

MGローバーは、満を持して投入したシティローバーとストリートワイズに望みを託していた。

【画像】先進的なクロスオーバー車とインド産の小型車【ローバー・ストリートワイズとシティローバーを写真で見る】 全14枚

しかし、MGローバーは2005年4月、10億ポンド以上の負債を抱えて破綻する。親会社BMWがフェニックス・ベンチャー・ホールディングスにはした金で売却してからわずか5年後のことであった。社名をローバーからMGローバーに改めたが、BMWが巧みに保持したミニとフォードに売却されたランドローバーという2つの貴重なブランド資産を失ったばかりである。

MG TFの好調な販売、ZR、ZS、ZTのヒット、英ロングブリッジの不動産の売却にもかかわらず、MGローバーは中国企業の手に渡る。社運をかけた2台の新型車、シティローバーとストリートワイズも会社を救うことはできなかった。これは、2台の(短い)物語である。

先進的なローバー・ストリートワイズ

2003年に登場したローバー・ストリートワイズは、ひときわ目立つ存在だった。MGローバーの当時のラインナップは、旧式化した25と45、洗練された75、人気のTFなどで構成されていた。SUV風に仕上げたハッチバックはまだ一般的ではなく、ストリートワイズは未知の領域に足を踏み入れることになったのだ。

タフな見た目とは裏腹に、ストリートワイズはまさに「路上」用に設計されている。ローバーはこれを「アーバン・オンローダー」と呼び、自動車業界では鼻で笑われたが、このアイデアは後のクロスオーバーや都市型SUVのトレンドを予見するようなもので、むしろ先見の明があるように感じられる。

「ストリートワイズは、普通のクルマよりもタフで、世界で最も困難な運転環境の1つである都市で生き残り、繁栄するよう意図的に設計されています」とローバーは述べている。

ストリートワイズは1999年に発売されたローバー25がベースになっているが、その25は1995年の200をベースとしている。25が「旧式」なら、200はもう「老朽」であり、先進的な新型車など作れるはずもなかった。でも、作ってしまったのだ。車高を上げ、ボディクラッディングやルーフバー、アロイホイールを装着し、インテリアに手を加えることで驚くべき進化を遂げた。

巧妙なことに、ストリートワイズは「The New Streetwise by Rover(ローバーの新型ストリートワイズ)」と銘打たれ、メーカー名よりもモデル名の方が強調されていた。

まずまずの高評価 仕上がりも良好

当時、ストリートワイズを評価した自動車評論家の中には、その可能性を見いだせない人もいたが、手前味噌ながらAUTOCAR英国編集部のスティーブ・クロプリー(現編集長)の眼は衰えていなかった。初試乗の後、彼はこう言った。

「ローバーは、標準的なローバー25のサスペンションを1インチ上げ、大きなホイールとタイヤを装着し、ノーズとグリルの樹脂成形品、ホイールアーチ、サイドラビングストリップ、そしてノーズとテールのストレーキを加えることで、『オールロード』に仕上げている」

「短いが、ルーフレールもある。インテリアでは、明快なダッシュボード、太いシフトノブ、サイドボルスターを惜しみなく施した格好良いシート、そして後部にはローバー25のベンチシートではなく個別のシートがある。このクルマを見せた4人の若いドライバーは、間違いなく気に入ってくれたので、ストリートワイズには見込みがありそうだ」

こうしたまずまずの見通しは数字に現れている。2003年に2688台、2004年に8182台(唯一、通年で販売)、2005年に1977台が販売された。欧州での相対的な成功を考えれば、ローバー25の「ジャッキアップ」の結果は許容範囲内と言えるだろう。欧州の中古車販売サイト「AutoScout24」を覗いてみると、今もそれなりの台数が売買されていることがわかる。

お手頃な価格設定 未来の名車?

ストリートワイズは2003年、1.4LのAシリーズ・ガソリンエンジンと2.0LのLシリーズ・ターボディーゼルを載せて発売されたが、2004年には最高出力110psの1.6Lガソリン(MT)と118psの1.8L(CVT)も登場し、ラインナップが強化された。発売当初のグレードは「ベーシック」、「S」、「SE」の3種類で、3ドアと5ドアが選択可能だった。

エントリーモデルの価格は、現在の貨幣価値で9295ポンド(約150万円)とお買い得だった。確かに、スチールホイール、3ドア、84psの1.4Lガソリンエンジンは我慢しなければならなかったが、2003年当時9000ポンド強で買えるものはそう多くはなかった。ベース仕様のシトロエンC3やフォード・フィエスタ、ミッドレンジのダイハツ・シリオンやフィアット・プント、あるいはローバー25 1.4i Eなど、その仲間内でも非常にお買い得だった。

25を都会の戦士に変えることを任された自動車デザイナーのピーター・スティーブンス氏は、以前、ストリートワイズを未来のクラシックと評したことがある。オンライン記事へのコメントで、「走行距離が少なく、状態の良い、黒のストリートワイズを探すべきだ」と述べたのだ。2007年のことだった。それから16年、英国の道路には約600台が走っており、その他にもSORN(基本的に使用せず保管)として登録されているものがある。

また、MGローバーはストリートワイズ向けに豊富なアクセサリー製品群を発表し、「殺風景な都市環境において、あなたのステータスを高める方法」と称した。16インチから17インチのアロイへのアップグレード、ルーフクロスバーの追加、ランドローバー風のライトガード、フロントフォグランプ、サイドバー、フロントナッジバーの装着が可能であった。まるで、アウトドア用品店Mountain Warehouseのようにコーディネートすることができるのだ。

て残念なことに、MGローバーの破綻によってストリートワイズは早々に消滅してしまったが、中国市場ではMG 3 SWとして生き残った。会社を救うことはできなかったが、シティローバーとは比べものにならないくらい、本格的なシフトチェンジを実現した。

チープで陽気なローバー・シティローバー

ストリートワイズに遅れること数か月、新たに登場したシティローバーは、MGローバー最後の新型車である。また、1997年のローバー100(以前はメトロとして知られていた)以来のシティカーでもある。その実態は、インド製のタタ・インディカに、フランスのプジョー製1.4Lガソリンエンジンを搭載したリバッジモデルだった。

MGローバーはタタ・インディカをベースに、強化したスプリング、新しいダンパー、20mm低い車高を与え、グリルとバンパーにも改良を施した。トランクの「C I T Y R O V E R」の文字は、このクルマに英国車の威信を与えるためのものだが、空虚であると言わざるをえない。塗装の仕上がりの悪さとパネルの隙間の大きさが、このクルマの出自を示す最大の手がかりだ。

それでもシティローバーの価格は安く、エントリーモデルの「ソロ」が6495ポンド、スポーティな「スプライト」が7895ポンド、「スタイル」が8895ポンドからであった。現在の価値に置き換えると、1万875ポンド(約175万円)、1万3250ポンド(約210万円)、1万4900ポンド(約240万円)となる。ダチアを除くすべての企業が値上げを強行する現在では、かなりリーズナブルである。

運転席エアバッグ、3年6万マイル保証、6年間の穴あき防止カバーを標準装備し、ソロを除く全車にパワーステアリング、60:40分割可倒式リアシート、リモート式センターロック、CDプレーヤーを装備する。スプライトにはエアコンが、スタイルにはABSと助手席エアバッグが用意された。スタイル以外では、ABSは300ポンドのオプションだったが、EUの法改正で義務化された。

意外にも評価は悪くなかった?

クリス・ハリスという自動車ジャーナリストがシティローバーをレビューしてくれたのだが(英国ではそれなりに有名で、AUTOCARでも記事を書いたことがある)、彼の評価は驚くほどポジティブだった。

「大人4人がゆったりと座れ、リアの足元と頭上空間はフォードKaを凌ぐ。シャシーはうまくできているが、本来の環境を外れるとあまり役に立たない。悪くないクルマだ。利用可能なリソース(開発資源)を考えると、その努力の結果は本当に悪いものではない」

続いて、短所を挙げてみよう。ハリスは、ギアチェンジを「ひどい」、乗り心地を「せわしない」、グリップを「中程度」、インテリアを「悲惨」と評した。一番安いスコダ・ファビアの方が合理的だ、とも。

しかし、全体的にはむしろシティローバーを気に入っていたようだ。このことをソーシャルメディアを通じて彼に思い出させてみるのも面白そうだ。もしかしたら、愛車のプジョー205ラリーと入れ替える可能性もあるかも……。

時代遅れの設計 吹き荒れる逆風

シティローバーは、1998年12月にインドで発売された小型車がベースになっているので、約5年後に英国で発売されたときには、すでに時代遅れで陳腐化していた。他のメーカーが競争力を高めていたこともあり、「安かろう悪かろう」が消費者に受け入れられる時代はもう終わったのだ。エンジンは、車重の軽さも手伝って、軽快なパフォーマンスを発揮する。しかし、インテリアはメトロを惜しむ声が漏れるほどの出来である。

さらに悪いことに、MGローバーは、シティローバー1台につきタタにわずか3000ポンドしか支払っていないという報道によって、暴利を貪っていると非難された。2004年12月に行われた900ポンドの値下げはほとんど効果がなく、計画されていたシティローバー・ターボも会社とともに崩れ去った。MGローバーは年間2万台の販売を見込んでいたが、販売台数はわずか9218台にとどまった。

シティローバーは、ジェレミー・クラークソン、リチャード・ハモンド、ジェームズ・メイの犠牲となったことで有名である。MGローバーが自動車番組『Top Gear』にレビュー用の車両提供を拒否したため、ジェームズ・メイは顧客に扮してディーラーに潜入し、試乗車を拝借した。手頃な価格の小型車のファンとして知られるメイは、シティローバーを「この番組で運転した中で最悪のクルマ」と言い放った。

英国では現在、176台のシティローバーと約600台のストリートワイズが残っており、中古車価格は前者が約1000ポンド(約16万円)から、後者が約2000ポンド(約32万円)からとなっている。もし、どちらかを購入するのであれば、インドのお下がりではなく、装甲付きのローバー25、もといストリートワイズを選ぶのが賢明だろう。

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みんなのコメント

7件
  • 当時のイギリスでは、ローバーは既に年寄り専用ブランドだったし、元になった車時代がお粗末な物だったのだから、売れなくても仕方なかった。

    ローバーはホンダとの関わりが強く、ホンダが買収の意思を伝いていた所に、急にBMWが割り込んできた。
    ホンダのエンジンを失って、ローバー製エンジンばかりになってからのローバーの品質は酷いものだった。しかもミニもランドローバーも切り売りされて、アレで生き延びるのは無理だった。

    あの時ホンダを裏切ったのが運の尽きだった。
  • 日本国内においては品質問題だけでなく、不公正な販売方法でディーラーと裁判になったのも痛かった。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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