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愛された「スーパーミニ」 フォード・フィエスタ47年の歴史 1つの時代の終わり

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愛された「スーパーミニ」 フォード・フィエスタ47年の歴史 1つの時代の終わり

たくさんの人と思い出を運んだクルマ

フォード・フィエスタはもういない。

【画像】ハンドリング優等生の欧州Bセグ・ハッチバック【最終世代のフォード・フィエスタを写真でじっくり見る】 全110枚

2023年7月7日、欧州向けの最後の1台がドイツの生産ラインから出荷された。ザールルイスの工場はEV生産に切り替えられようとしている。それは、1つの時代と誇り高きモデルライン、そしてわたし達ドライバーの多くが運転人生をスタートさせたクルマの終焉を意味する。

フォード・フィエスタは英国で最も売れたモデルとなるなど、1976年の発売当初から人気を博したが、2020年代初頭にある理由で突然その座から転落した。今回はそんなフィエスタの歴史を振り返り、おそらく長くなるであろう旅立ちへの餞(はなむけ)としたい。

プロジェクト・ボブキャット

フォード社内では、フィエスタは開発初期に「ボブキャット」と呼ばれていた。そしてフォードは「ブラボー」として売り出す寸前まで行った。「フィエスタ」も検討されたが、1950年代から1960年代にかけてGM傘下のオールズモビル88のステーションワゴンに使用されていた名称だったため、却下されることに。しかし、ヘンリー・フォード2世は粘り強くフィエスタの名を選んだ。その理由の1つは、このクルマがスペインで生産されることにちなんだものだった。

結局のところ、GMはフォードがフィエスタを名乗ることを問題視しなかったため、ブラボーから現在の車名に変更された。

新しいスーパーミニ

フィエスタはフォード初の前輪駆動車の1つであり、現在では一般に「スーパーミニ」と呼ばれる欧州Bセグメントの初のモデルである。

欧州の小型前輪駆動ハッチバックは目新しいものではなかったが(フィエスタ発売当時、ルノー5やフィアット127などがすでに発売されていた)、フィエスタはその普及に貢献した。その後の数年間で、数多くのメーカーが同様のモデルを投入している。

エンジン

1976年の発売当時、フィエスタには957ccと1117ccという珍しい排気量のエンジンが搭載されていた。どちらも1959年にフォード・アングリアに初搭載された「ケント」エンジンの派生型である。前輪駆動レイアウトに適合するように改良され、フォードが新工場を建設したスペインの地中海沿岸の都市にちなんで「バレンシア」と名付けられた。

ホットハッチの登場

排気量の大きい1117ccのエンジンでも、パフォーマンスはそれほど高くなかったため、スポーツモデルを好む顧客に届けようと、フォードはスーパースポーツと呼ばれるパワフルな1.3Lバージョンを設定した。これに続いて、第一世代で最もホットなフィエスタXR2が登場した。最高出力83psの1.6Lエンジンを搭載し、見た目も素晴らしく、速く走るのが好きな若いドライバーに大いにアピールした。

「XR」の名は、伝説的なRSほどではないにせよ、高性能を示すものであり、数字の「2」はエスコートXR3よりも小さいクルマであることを意味する。XR4は、フォード・シエラの高性能モデル(ただしコスワース以前)に使用された。

初のモデルチェンジ

1983年、似たようなボディ構造を持ちながら、外観を大きく変えた第2世代(Mk2)が登場した。最も顕著なのは、ボディが丸みを帯びている点で、鋭角的だった先代よりも空気力学的に優れている。

他にも利点はあった。ボンネットラインが高くなり、オーバーヘッドカムエンジンの使用が可能になったほか、フロントエンドのクランプルゾーンが拡大されたのだ。

技術の発展

第2世代フィエスタの初期型は引き続きバレンシアエンジンを使用したが、第3世代エスコートでデビューしたCVHも初めて採用された。

また、5速トランスミッション、1.6Lディーゼルエンジン、さらには無段変速機(CVT)も導入している。

第3世代

1989年初頭、第3世代のフィエスタ(Mk3)が登場した。新しいプラットフォームをベースにしており、サイズアップしてトランク容量が大幅に拡大され、窓も大きくなった。また、ボディタイプには初めて5ドアが設定された。

エンジンはバレンシアとCVHが引き継がれたが、1992年にはフォード史上初の16バルブユニットである新型「ゼテック」(当初の名称はゼータ)が導入された。フォードはさらに、1.2L 3気筒2ストロークエンジンを搭載したプロトタイプを少数製作したが、量産化には至っていない。

ヒットチャート独占

フィエスタは常に人気を博してきたが、英国のSMMTの公表している数字によると、英国で最も登録台数の多い自動車になったのは1990年のことだ。第5世代エスコートに抜かれるまでの2年間、王座を維持した。

第3世代フィエスタは歴代で最も大きいが、英国の販売チャートでトップになった最小のクルマであり、初のスーパーミニでもあった。

速くなったフィエスタ

発売当初から、第3世代フィエスタにはXR2iが用意されていた。「i」は1.6L CVHエンジンが燃料噴射装置付きであることを示す。同エンジンは後に最高出力135psのRSターボ(写真)用にターボチャージャー化され、フィエスタ初のRSが誕生した。

RSターボは、1992年に最高出力132psを発生する燃料噴射装置付きゼテックエンジンの1.8Lバージョンを搭載したRS1800に取って代わられた。

第4世代

1996年に登場したフィエスタ(Mk4)は、プラットフォームこそ先代のものをわずかに変更した程度であったが、フロントエンドのスタイリングが非常に奇妙で、少しばかり物議を醸した。エンジンは、1.25L、1.4L、1.6Lの各排気量が用意された新しいゼテックSE(シグマ、後にデュラテックとも呼ばれる)を採用。

同車はマツダ121としても販売された。また、先代が依然として人気を博していたため、そちらもフィエスタ・クラシックとして生産が続けられた。

大規模フェイスリフト

第4世代フィエスタ(Mk4)は、大規模なフェイスリフトを受けて顔つきが一変した。フォードが新しい「ニューエッジ」のスタイリングを採用したのは1999年末のことで、この時点でフィエスタは英国の年間販売チャートの首位から3年間転落していた。

しかし、この転落は非常に印象的なフォード・フォーカスの登場によるところが大きい。それでもフィエスタは、スーパーミニ・クラスの中でも例外的な人気を誇っていた。

新世紀のフィエスタ

次のフィエスタ(Mk5)は2002年初めに発売された。当初は5ドアしかなかったが、同年末にはクーペに近い外観の3ドアも設定された。2005年にはマイナーチェンジが行われた。

また、フュージョンとして知られる、より背が高くて広い小型ミニバンの派生モデルもあったが、これは後の米国フォードの同名モデルとは何の関係もない。

フィエスタSTとゼテックS

この世代(Mk5)で最もパワフルなモデルは3ドアのST(写真)で、最高出力150psを発生する2.0Lエンジンを搭載している。

STに施されたスタイリングのアップグレードはゼテックSにも適用された。最高出力90psの1.6Lターボディーゼルを搭載したゼテックSは、STに比べて大幅に遅いが、ランニングコストは大幅に安い。

大衆へのアピール

2008年に生産が開始されたフィエスタの成功は、これまでの人気をもってしても計り知れないものだった。発売初年度に英国の年間登録台数ランキングで首位を獲得し、以後2020年まで毎年首位を独占した。世界的な金融危機の影響もあり、2007年に第2世代フォーカスが達成した登録台数12万6928台を上回るには時間がかかったが、2013年には13万3434台を達成した。この数字は近い将来に破られることはないだろう。

新型車のベースとなったグローバルBプラットフォームは、Bマックス、エコスポーツ、Ka、プーマ、トランジット・クーリエ、インド市場向けのフィーゴにも使用されている。

3気筒の登場

2013年には1.0L 3気筒エコブーストエンジンが導入され、フィエスタに搭載されるエンジンとしては957ccのバレンシア以来の小排気量ユニットとなった。

エコブーストエンジンは、モンデオなどさまざまなモデルにも採用されている。2012年から2019年までほぼ毎年、インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー賞の総合優勝とクラス優勝を獲得した。最も極端な形では最高出力140psを発生するが、標準的なフィエスタでは史上最高出力の1つである。

新型フィエスタST

2013年、フィエスタのホットハッチに「ST」の名が復活した。1.6L 4気筒エコブーストエンジンを搭載し、公式には最高出力182psを発生するが、これは最も近いライバル車に20ps近い差をつけている。

そのターボチャージャー・ユニットにはオーバーブースト機能があり、フルスロットルで最初の15秒間は200psまでパワーが上昇する。これほど長くフルスロットルを使える道を見つけるのは難しいだろうから、これはどこから見ても200psのクルマである。

現在のフィエスタ

フィエスタは2017年に最終世代(Mk8)に移行したが、依然としてグローバルBプラットフォームをベースにしている。

スーパーミニへの関心の低さから北米市場からは撤退したが、パンデミックによる半導体不足で生産台数が大幅に抑制された2020年まで、英国市場のトップに君臨していた。

フィエスタ・アクティブの登場

過去にもフィエスタの派生モデルはあったが、クーリエやフュージョンなど独自の名称が与えられていた。しかし、クロスオーバーSUVとも言えるフィエスタ・アクティブの登場は、これまでの慣習を一変させた。

実際のところ、スーパーミニであることに変わりはないが、車高が18mm高くなり、ボディ保護が強化され、砂利道でもコントロールしやすいドライビングモードが搭載された。AUTOCARはこれを「中途半端なクロスオーバー」と表現し、また「中途半端なSUV」という表現も適切だと付け加えた。

3気筒のST

これまでのフィエスタのホットハッチがすべて4気筒エンジンを搭載してきた。かつては言うまでもないほど当たり前のことと考えられていただろう。フォードは新たに3気筒しかないエンジンを作り、性能よりも燃費が重視される状況では2気筒だけで走行できるようにした。

1.5Lエコブーストは、排気量が小さいにもかかわらず、従来のSTと同等の最高出力200psを発生する。AUTOCARはこれを「眉をひそめるような速さ」と表現し、「特に中回転域まで」は先代よりも速く感じられると書いている。

終幕

10年以上にわたって英国販売チャートのトップに君臨してきたフィエスタは、2021年、ついにヴォグゾール・コルサの後塵を拝した。2022年にはフェイスリフトが行われたものの、現在ではトップ10の常連ではなく、フォードで最も人気のあるプーマの背中を追う形となった。そして2023年7月7日、最後の1台がドイツの生産ラインから搬出された。最後の2台は、それぞれ英国とドイツでフォードのヘリテージ車両として残される。

フォードから新しいエントリーモデルが登場するとすれば、それはおそらくフィエスタとはまったく異なるものになり、ほぼ間違いなく、エンジンではなく電気モーターのみを搭載し、「フィエスタ」の名を冠さないモデルになるだろう。1つの時代が終わりを迎えたことは確かだ。

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みんなのコメント

11件
  • フォードが日本から撤退して以降に作られたフィエスタはやたら評価が高かったから、ちょっと乗ってみたかった。デザインもBセグの中ではかなりカッコよかったし。
  • フォードといえばアメ車なのにこんなに小さな車も作れるんだと感心しました
    やっぱWRCが最後の晴れ舞台かな
    格好良かった
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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