気温が下がるとバッテリーの効率が下がり、いわゆるバッテリー上がりが発生しやすくなる。そのため東北や北海道など、冬季の冷え込みが厳しい地域では、バッテリー容量を増やした寒冷地仕様を選ぶのが得策といえる。
しかしそれ以外の地域では、オプションとなる寒冷地仕様を選ぶことは少ないはずだ。そこで今回は各メーカーの寒冷地仕様を再確認し、そのメリットとデメリットを考えてみた。
ガルウィングドアはお荷物装備!? 悲喜こもごも…ガルウィングドアで成功したクルマ、失敗したクルマ
文/藤田竜太、写真/NISSAN、SUBARU、TOYOTA、MITSUBISHI
[gallink]
■寒冷地仕様に関してのスタンスはメーカーによってさまざま
スバル フォレスター。スバルはホンダやマツダと同様、全車種寒冷地を考慮した仕様となっている
2021年も立冬(11月7日~11月21日)となり、暦の上ではもう冬がはじまっている。
タイヤメーカーでも外気温が7度を下回ってきたら、スタッドレスタイヤへの交換を推奨しているぐらいなので、そろそろ本格的な冬支度が必要だ。
さて、冬支度といえば、気になるのは「寒冷地仕様」車の存在。寒冷地仕様とは、北海道、東北、北陸、甲信越、山陰地区など、酷寒冷地や豪雪地域で販売される新車のオプションメニューのこと。
標準仕様のクルマに対し、バッテリーの大容量化やオルタネーター強化、スノーワイパーブレードの装備、リアワイパーの追加、車内ヒーターの強化、ラジエターのクーラントの濃度を濃くするなどの対策が施されている。
ただし、この「寒冷地仕様」に関しては、メーカー毎に考え方の違いがあり、ホンダ、マツダ、スバルの3社は、基本的に全車種、寒冷地も考慮した仕様となっていて、とくに寒冷地仕様を設定していない!
■寒気に影響を受ける安全性を考慮したトヨタ
トヨタ カローラツーリング。トヨタの寒冷地仕様はワイパーの動作やドアミラーの視認性など、低温時に損なわれる安全性を回復する装備に力を入れている
では、標準仕様と寒冷地仕様が分かれているトヨタの場合どうなのか。カローラツーリングの寒冷地仕様には、次のような装備が追加されている。
・強化ワイパーモーター
雨とは違い重みのある雪を考慮して、ワイパーモーターも強化品。
・ウォッシャータンク容量のアップ
雪道ではウォッシャー液を噴霧する機会が増えるので、ウォッシャータンクの容量を、標準の2.5リットルから4.8リットルへ増大。
・強化スターター
低温時の始動性を高めるためにスターター容量も強化。標準のスターターモーターが、1.0kWに対し、寒冷地仕様は1.2kWもしくは1.6kWにパワーアップ。
・ヒーター付きドアミラー
霜・露・雨を取り除くために、ドアミラーにヒーターが付く。
・電気式補助ヒーター
エンジン始動後、冷却水の水温が上がるまでヒーターの効きが悪いので、水温が上がるまで暖房を補助するための電気式補助ヒーターが用意されている。
・リヤヒーターダクト
後席の暖房効率を高めるために、リヤシートの足もとに温風を送るダクトがつく。
・LLCの濃度
標準車のLLCの濃度は30%だが、寒冷地仕様は50%と濃くなっている。
LLCの凍結温度は、濃度30%でマイナス15度。濃度50%だとマイナス35度だ。
・フロントウィンドウデアイサー
雪だまりや凍結でワイパーが動かなくならないように、フロントガラスのワイパー接触部に電熱線が付いている。
その他、アルファード・ヴェルファイアなどのミニバンの寒冷地仕様車には、リアフォグの設定やリアヒーターの設定がある。
■乗員の防寒対策も万全な日産
日産 ノート。日産の寒冷地仕様は安全性はもちろん、車内の乗員への寒さ対策も万全だ
日産車の寒冷地仕様車の主な変更は下記の通り。
・凍結防止としてLLCの濃度アップ(標準30%→寒冷地50%)
・始動性向上のためにバッテリー大型化とオルタネータ大型化
・暖房性能向上のために大型ヒーターを採用
さらにセレナを例にもう少し詳しく見ると、下記の内容となっている。
・オートデュアルエアコン
・前席クイックコンフォートヒーター付きシート
・ステアリングヒーター
・PTC素子ヒーター(e-POWER車には標準装備)
・ヒーター付きドアミラー
・高濃度不凍液
上記のオプション価格は8万4700円だ。
ちなみに電気自動車のリーフにも寒冷地仕様があって、2代目 ZE1型の寒冷地仕様には下記の機能が装備される。
・後部座席ヒーター吹き出し口
・後部座席用シートヒーター(後席クッションヒーター)
・不凍液濃度アップ(50%)
・サイドターンランプ付き電動格納式リモコンカラードドアミラー
・ヒーター付きドアミラー
電気自動車の場合は、空調のヒーターを使うと電力の消費がかなり進んでしまうので、ステアリングヒーターやシートヒーターをメインに使い、通常のヒーターはサブ的に使うのがおすすめ。そういう意味で寒冷地仕様の後部座席ヒーターは、寒冷地以外でも重宝するはず。
なお電気自動車のヒーターは、冷却水が温まらなくても温風が出るので、室内全体の温まりはガソリン車よりも早い。そしてリーフの寒冷地仕様のオプション価格は、プラス2万7000円とかなりお得。
■雪や氷での車体破損も防止する三菱
三菱 RVR。三菱の寒冷地仕様はスノープロテクターなど車体の破損防止も考慮されている
三菱自動車の寒冷地仕様は下記の内容だ。
●バッテリー容量アップ/強化バッテリー
●ヒーテッド ドアミラー
●スタートアップ ヒーター
●ヘビーデューティー ヒーター
●ワイパー ディアイサー
●スノープロテクター
●ヒューエル ライン ヒーター
●ラジエター シャッター
●エンジン アンダーカバー
寒冷地仕様のオプションをつけると、標準車より3~5万円高くなるのが一般的。
非寒冷地で寒冷地仕様車をオーダーしても、価格以外のデメリットはなく、バッテリーやオルタネーターに余裕がある分、バッタリー上がりの心配が少なくなるはず。
電装品を多用する人なら、非寒冷地でも電気系に余裕のある寒冷地仕様を選ぶメリットはある。
ただし、中古車の買い取り価格には、「寒冷地仕様」が反映されることはあまりない……。
逆に、寒冷地仕様車を中古車で買う場合は、道路の凍結防止剤(塩カル)の影響で、下回りが錆びているクルマである可能性が高いので、じっくり点検してから購入しよう。
なお、普段雪の降らない地域に住んでいて、帰省やスキーで、年に数回、雪国などに行く人であれば、とくに寒冷地仕様を選ぶ必要はない。
しっかりスタッドレスに履き替えて、ウォッシャー液を濃い目に満タンにしておけばOK。気になる人はクーラントの濃度も点検しておけば万全だ。
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みんなのコメント
わずかな金額アップで、ついてくるお得な装備ですね。