50万円以上の補助金が政府からもらえるからEVを買います、と決めた人は危ない! 7月のEV販売台数は前年の3倍超となっていて、次世代自動車センターが9月2日に発表した、CEV(クリーンエネルギーヴィークル)補助金が切れる予想時期が10月中旬に早まりました。
政府は補正予算の編成を検討中ですが、成立時期によっては購入者の一部が補助金の申請資格を失う可能性があります。8月31日、経済産業省は2023年度予算概算要求額でCEV補助金を前年の倍額の430億円を要求しています。
10月中旬に枯渇すると発表されたCEV補助金! 早くも販売現場は大混乱 昨年のように受け取れない「魔の空白」はあるのか?
こうした状況を踏まえ、メーカーでは55万円の補助金が出るという文言をTVCMから削除したほか、販売店でも6月頃から補助金ありきの販売はやめ、補助金が出ない可能性があった場合の同意書や、もし補助金が出ない場合、注文のキャンセルやむなし、となっているようです。
いよいよCEV補助金が受け取れないかもしれない状況になってきました。そこで、経産省や次世代自動車振興センター、日産、三菱ディーラーに話を聞いて最新事情を徹底調査!
文/柳川洋
写真/ベストカーweb編集部、日産、三菱、テスラ
■補助金枯渇のタイミング見通しが10月末→10月中旬~下旬に早まった!
日産サクラは2022年10月の軽新車販売において3523台を販売し10位にランクイン
EVやPHEV、FCVなどのクリーンエネルギー自動車(CEV)への補助金交付事業を行っている次世代自動車振興センターのホームページに、9月2日に掲載された「CEV補助金予算残高と申請受付終了見込み時期について」というお知らせが自動車業界をざわつかせています。
そこには「CEV購入補助金の予算が枯渇するタイミングが、前回予想の10月めどから、10月中旬から下旬めどに半月早まった」ことが記されています。
最近大人気の軽EVなどCEVの購入者のほとんどは、補助金を受け取ることを前提として購入を決めているのが実情なので、クルマの売買契約書にハンコを押して納車を待っていた人たち、特に10月後半の納車予定だった人たちが、頭を抱えている状況になっていることが想像に難くありません。
見通しが早まった理由としては、6月16日に発売になった軽EVの日産サクラと三菱ekクロスEVの7月、8月の販売台数が判明し、2ヵ月連続で2車種合計の月間販売台数が4000台近辺と、中国のロックダウンなどで部品の供給が不安定な中でも、比較的安定していることが大きな原因となっているようです。
8月29日時点の予算残高は約126億円であることも同時に発表されました。前回発表の7月25日時点での177億円から、ひと月ほどで51億円の補助金が支払われた計算になります。
仮に月に51億円予算が消化されるとすれば、126億円の予算がなくなるには2ヵ月半しかかからない、つまり11月半ばには予算が終了するという単純計算になりますが、今回それより早く10月中旬から下旬に予算が終了すると発表されました。対象のクルマの月間販売台数が1万台を超えることを予想しているものとみられます。
軽を除くCEVの販売台数は7、8月に減少しているが、軽EVが月に約4000台売れる状況となっており、全体の補助金対象台数は月に1万台近辺と過去最高の水準で推移。出典:日本自動車販売協会連合会 燃料別販売台数「乗用車」、全国軽自動車協会連合会「軽四輪車通称名別新車販売確報(8月分は速報)」より筆者作成
上のグラフをご覧いただければお分かりの通り、補助金対象車の台数は7月には1万台を突破、対象の乗用車(グラフの緑系)がやや減少する中で軽EVの日産サクラと三菱ekクロスEVの伸びが全体を押し上げているのがお分かりになるかと思います。日産サクラは8月、3523台を販売し、軽自動車販売10位となった。
■BEVのCEV補助金の一例
トヨタbz4X(給電機能あり)=85万円
レクサスUX300e(給電機能あり)=85万円
スバルソルテラ(給電機能あり)=85万円
日産アリア(給電機能あり)=85万~92万円
日産リーフ(給電機能あり)=53万1000~85万円
日産サクラ(給電機能あり)=55万円
三菱ekクロスEV(給電機能あり)=55万円
マツダMX-30EV(給電機能あり)=51万6000円
テスラモデル3(給電機能なし)=65万円
テスラモデルY(給電機能なし)=65万円
ヒョンデIONIQ5(給電機能あり)=85万円
BYD e6(給電機能あり)=85万円
■昨年は「補助金が大幅減額される魔の17日間」があった!
すでにCEVを購入して納車を待っていらっしゃる方、今からCEVを購入しようとしている方の最大の関心事は、「予算が枯渇してもし補助金がなくなったらどうしよう」ということだと思います。
補助金は、車両代金が全額支払われ、陸運局でナンバープレートが交付されてから申請可能となり、車両登録後から原則1ヶ月以内(車両代金支払手続きが完了していない場合は登録日の翌々月末)が申請期限となります。
実は昨年、補助金予算の枯渇により、当初思っていた額よりも少ない補助金しか受け取れない「魔のタイミング」とでもいうべき不幸な時期がありました。
経産省の令和2年度補正予算から支払われるCEV補助金が、昨年9月8日申請書到着分をもって終了しました。それと並行して当時存在した環境省の令和2年度補正予算からの補助金も、11月8日に終了しました。
経産省の補助金は最大60万円、環境省の補助金は最大80万円で、例えば日産リーフの売れ筋Xグレードの場合、経産省分を申請すれば55万2000円、環境省分を申請すれば73万6000円のどちらかを受け取れました。環境省の補助金の方が対象車種が多く、補助金も多いことで、実質的に11月8日が補助金予算終了のタイミングとなりました。
ここからがややこしいのですが、昨年つまり令和3年当時は、上記の経産省と環境省の令和2年度補正予算からの補助金に加え、令和3年度(当初)予算CEV補助金というものも同時に存在していました。そちらは補助金の最高額は40万円、11月9日になっても申請できました。
令和2年度補正予算の環境省の補助金終了に間に合わなかった日産リーフのXグレードの購入者は、73万6000円ではなく、令和3年度(当初)予算の補助金38万8千円を受け取ることができましたが、環境省補助金の締め切りを逃したことで、差額の34万8000円分受け取る額が減ってしまうことになりました。
そして、令和2年度補正予算の環境省分の補助金終了からわずか1ヵ月足らずの11月26日に、31兆5627億円におよぶ令和3年度補正予算案が閣議決定されます。
その中には今まさに予算がなくなりつつある、予算総額375億円のCEV補助金が追加で盛り込まれました。そしてここがポイントなのですが、11月26日以降に新車登録されたCEVは、令和3年度補正予算からの補助金を遡って受け取ることができるようになり、また補助金も増額され、日産リーフのXグレードだと78万6000円が受け取れることとなりました。
つまり、昨年の11月9日から11月25日の17日間に納車されて令和3年度(当初)予算に基づくCEV補助金の申請を行った人は、大幅に少ない補助金しか受けられなかった、納車が少し前後していれば35万円から40万円近く補助金が増えていた人もいた、という事例があったということです。まさに「魔の17日間」といってよいでしょう。
■現在の補助金枯渇後はどうなるのか?
現在の補助金予算が仮に10月半ばに全て消化されてしまった場合、何が起こるのでしょうか?
経済産業省から8月に発表されている来年度、令和5年度予算の概算要求のポイントを見ますと、CEV補助金の予算要求額は430.3億円となっています。
今年度は概算要求334.9億円に対して実際の予算は245億円となりましたので、来年度のCEV補助金は300億円台後半で決着し、今年度と比べて100億円強、1台あたりの補助金の額が変わらないとするとクルマの数にして1万7、8000台分ほど多くとなるものとみられます。
ですが、こちらはあくまでも来年度の予算。今年度に枯渇する補助金を復活させるには、令和4年度の第2次補正予算の成立が必要です。
しかし、令和5年予算でより大きな額が概算要求されているということは、経済産業省にとってCEV補助金予算が重要な政策項目だということがわかります。
つまり、今年度中にCEV補助金が枯渇した場合、年度内に追加される可能性が極めて高いということです。
しかし、「魔の空白」が生まれる可能性が高まっています。昨年度は、補正予算案が閣議決定された11月26日にさかのぼってCEV補助金の申請が可能になりました。
10月4日に岸田内閣が成立してから50日ほどの後のことです。今回CEV補助金が枯渇するのが10月半ばだとすると、補正予算が仮に閣議決定されるとしても、これから1ヵ月ちょっとしか時間がありません。
現在国会は閉会中で、9月中に召集が行われるとみられる秋の臨時国会も、経済政策よりも先に、安倍元首相の国葬の是非や特定の宗教団体との関係の問題などに時間が費やされる可能性があり、さらに9月27日の国葬に出席する外国要人との会談などを含めて政治日程が混み合うことが予想され、補正予算に関しての議論が前に進まない可能性があります。
昨年同様に補正予算の閣議決定後に遡って補助金が払われるとすると、最悪の場合、減額されても補助金はもらえた昨年の「魔の17日間」とは異なり、今回の補助金が枯渇した後、何の補助金も受け取れない期間が発生し、その期間も長くなることも考えられます。
また、仮に補助金が受けられるようになったとした場合でも、各車種での補助金の額が変わるのか変わらないのかの不透明性も残ります。
CEV補助金政策の重要性と補正予算閣議決定が10月半ばまでに行われるかどうかのタイミングの難しさを考えると、補助金追加の財源は補正予算ではなく、政府の裁量で支出できる今年度の予備費になるかもしれません。その場合は、「魔の空白」がなくなる、あるいは短くなることが期待できます。
現時点では決まっていないことが多すぎて、CEV補助金を前提にクルマを購入される方、された方は、いつも以上に「補正予算」「CEV補助金」「予備費」というキーワードに気を配りながら新聞やニュースなどの政治欄に目を通す必要があるかもしれません。
■販売現場のディーラーに話を聞いてみた
日産サクラとの兄弟車、ekクロスEV
ekクロスEVだけでなく、アウトランダーやエクリプスクロスPHEVもCEV補助金の対象となっている三菱自動車のディーラーに、補助金枯渇の発表を受けた販売現場の動向を聞いてみました。
今回の補助金枯渇後にいつから補助金が受け取れるようになるのか、もし受け取れる場合の額はこれまでと変わらないのかなどの問い合わせは多く、販売現場にも当然影響が出ているとのこと。
3車種とも納期は来年2月から3月以降なので、その時期になったら来年度予算の成立もめどがついているだろう、という計算のもとに、補助金を受け取ることができることを前提に、契約書にハンコを押すお客様が多いとのことでした。国や地方自治体が力を入れてクリーンなクルマを増やそうとしているから大丈夫、と考える方が多いそうです。
ディーラーではなくお客様が補助金を申請することもあり、何らかの事情で予定していた補助金を受け取ることができない場合でも、あくまでもお客様が対応される、という誓約書的なものの提出が必要となるようです。
納車・登録のタイミングを早めたり、遅めたりすることについては、可能な限り対応しますが、実際にできることは限られている、というお話も伺いました。
つまり、一度クルマを発注した後で、予想外の事態が起きて受けられると思っていた補助金が受けられなくなったとき、額が予想より少なくなった時でも、(やや言葉は強いですが)お客様側の自己責任でお願いします、それを理由とした発注キャンセルや、それを理由とした後からの値引き要請などはご勘弁ください、ということでした。
日産ディーラーにも話を伺いましたが、ほぼ同様の内容でした。
■補助金給付の実務を行っている次世代自動車振興センターに聞いてみた
補助金給付業務をおこなっている次世代自動車振興センターに、「今回の補助金予算が10月中旬にも消化されてしまった場合、新たな予算措置がとられなければCEV補助金は完全になくなってしまうという認識でいいのでしょうか?」と念のため改めて確認したところ、「その通り」とのことでした。
予算終了のタイミングが早まった理由について伺いましたが、やはりサクラ&ekクロスEVの軽EVが発売されたことなどで、補助金対象車の販売台数が増えているからとのこと。
また、「前回の発表から1ヵ月で51億円補助金の残高が減り、残り126億円だと単純計算すると11月半ばに予算終了なのに、なぜ「10月中旬から下旬」終了見通しに変わったのですか?」との質問には、以下のような回答が返ってきました。
「納車されてから最大1ヵ月遅れで補助金申請が来ることや、8月が夏休みのせいで営業日数が少なかった分の反動増が9月に来る可能性があること、足元の販売・生産動向などさまざまな前提を置いて、経産省が立てた直近の見通しによると、先月発表の「10月末終了見通し」が早まる可能性が出てきました。それを織り込んで、「10月中旬から下旬終了見通し」、つまり「10月末終了かもしれないけれど、半月ほど早まる可能性もありますよ」という書き方に変えました。ただし、今後の申請状況により前後する可能性は当然ありますので、引き続き留意してほしい」とのことでした。
経産省の担当者にも、同様に質問してみました。やはり新車の登録状況やOEMからの聞き取りを含め、CEV補助金対象車の販売状況は好調と認識しており、様々な過程をおいて試算すると予算残高の終了が早まるとの見通しになったということです。
予算が完全に消化された後にどうなるのかという点については、補正予算や予備費の活用などについて決まっていることはまだ何もないとのことでした。ですが、来年度の概算要求が今年度よりも増額されていることからも分かる通り、このCEVへの補助金支給による導入支援策は、継続して経産省の重要政策であることは間違いないとのこと。
今年度中(~2023年3月まで)に補助金が終了してしまった後で、何か追加の施策が行われるかどうかについては政治マターであることも含め、経産省からは何も言えないが、できるだけのことはしたいと思っているということが言葉の端々からにじみ出ていました。
最後にまとめますと、昨年から今年のCEV補助金支給の経緯を踏まえると、補助金が全くもらえなくなる「魔の空白期間」が、今年10月中旬から11月下旬近辺(昨年度補正予算の閣議決定のタイミング、当然前後する可能性も)に生まれる可能性があるということになります。
納期がそのタイミングに重なる可能性がある方は、次世代自動車振興センターのHPを定期的に確認し、念のため早めにディーラーに相談しておくことを強くおススメします。
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