今でも見間違えない個性を放つ
text:John Evans(ジョン・エバンス)
translation:KENJI Nakajima(中嶋健治)
ある年齢層のクルマ好きの場合、R34型の日産スカイラインGT-Rは、お馴染みの存在だろう。ビデオゲームの中では、自由に改造できるGT-Rを所有できた。映画ワイルド・スピードでは、ポールウォーカーがニトロで武装したストリートレーサーを振り回した。
でも現実世界では、ゲームのように簡単には手に入らない。オリジナル状態に近い、丁寧に維持されてきたGT-Rには、かなりの金額が付いている。
1999年から2002年に製造された、R34 GT-R。タワーのようにそびえる大きなウイングや、派手なステッカーでドレスアップしている姿が思い浮かぶかもしれない。ショーやレース目的で、見るに耐えないほどの大改造が施されているクルマも少なくない。
たとえ大きなモディファイを受けていても、ひと目見ただけでGT-Rだとわかる姿も特徴。エンジンルームとキャビン、トランクに別れた3ボックスのシルエットは、今でも見間違えない個性を放つ。
同時期の初代ホンダNSXやA80型のトヨタ・スープラ、FD型マツダRX-7などのライバルと並んでも、際立つデザインだった。
5代目のスカイラインGT-Rは、R34型と呼ばれた。こちらも伝説的な存在となっている、先代のR33型GT-Rを大幅に進化させたモデルだといえる。
オーバーハングは短くなり、空力特性は向上。インテリアも先代から一新され、マルチメーターを兼ねる5.8インチの液晶モニターが装備された。エンジンカバーはキャンディレッドに塗られている。
ニュルブルクリンクで開発された高性能
BR26型の直列6気筒エンジンは、基本的にR33型からのキャリーオーバー。ギャレット製のツインターボで加給し、英国仕様では329psと39.8kg-mを発揮した。パワーは6速MTを介し、四輪へと伝えられる。
当時のクルマとしては重めの1600kg近い車重にも関わらず、0-100km/h加速は約5秒で、最高速度は249km/h。ドイツのニュルブルクリンクでは、ジャガーやアストン マーティン、ポルシェなどに、綺麗な丸目4灯のテールを見せつける性能を誇った。
実際、グリーンヘルと呼ばれたニュルブルクリンクは、R34 GT-Rの開発で重要な役割を果たしている。2002年には、限定モデルのNur(ニュル)もリリースされた。
このニュル仕様のGT-Rは、1000台以上が製造されている。大型化されたターボに金色に塗られたカムカバーを備え、エキゾーストマニホールドなどは、N1と呼ばれた耐久レース仕様。スピードメーターは300km/hまで目盛りが振られた。
思わずそそられるニュル仕様だが、もはや簡単に買える金額ではない。この記事を執筆時、英国で見つけた2台はどちらも12万ポンド(1596万円)の値段が付いていた。
堅実に中古車を選びたいなら、近年日本から輸入されたGT-Rを探すのが良い。ノーマルに近い状態で、取引価格は6万ポンド(798万円)前後だ。ただし英国では流通量も限られる。
日本からの、輸入代行サービスを利用する方法もある。輸送代や保険料を考慮しても、数千ポンド(数十万円)は節約できるだろう。
日本からのクルマは右ハンドル車だという点は、英国人にとっては嬉しい事実ではある。しかし英国以上に、日本で現存するオリジナル状態のGT-Rは、数が少ないのだった。
不具合を起こしやすいポイント
エンジン
伝統のRB26エンジンは耐久性が高い。アフターマーケット製パーツが、エンジンの寿命を縮めてしまう可能性がある。
タイミングベルトとウォーターポンプは、8万km毎の交換が望ましい。油圧は4000rpm以上で4.0 bar(58psi)以上が理想。
ボディ
エンジンルームやトランク内に、事故の修復歴がないか観察する。新しすぎるクリップ類や出荷時のステッカーの欠落などにも注意したい。
サイドシルやシャシーレール、ストラットマウント、フェンダー周りのサビに注意。
電気系統
レブカウンターが正しく動くか確かめる。アフターマーケット製のメーターが付いている場合、その動作や配線も良く確認する。日本からのスポーツモデルの場合、後付けされていることが多い。
インフォテインメント・システムのモニターは、ドット欠けすることがある。修理は安くはない。
ステアリングとサスペンション
試乗をして、ブッシュとボールジョイントの磨耗状態やガタツキを確認したい。部品は簡単に手に入るものの、状態によっては交換費用が高くなることも。
ブレーキ
R34 GT-Rは改造をされずに、コレクターが長期保管している例も少なくない。数ヶ月動かさないと、ブレーキのピストンが固着する場合がある。試乗でブレーキディスクの表面が綺麗にならなければ、オーバーホールする費用も見ておきたい。
インテリア
ダッシュボードの下や奥を覗いて、不格好な穴や切り欠き加工がないか確かめる。以前のオーナーがアフターマーケット・パーツやメーターなどを追加した跡だ。配線が残っていることも。
トランスミッション
四輪駆動ということで、急発進時にゲトラグ製のトランスミッションへ強い負荷がかかる。修理費用は安くなく、部品を見つけるのも大変。すべての変速がスムーズに行えるか、確かめておきたい。
専門家の意見を聞いてみる
ベン・ジョーダン JDMガレージ代表
「プレイステーション・ジェネレーションと呼ばれる、ビデオゲームのグランツーリスモを楽しんだ世代や、映画ワイルド・スピードのファンからの人気が衰えません。R34 GT-Rに限らず、日本車というカルチャーを民主化し、定着させました」
「1990年代の日本製クーペの価値は、1950年代以前のクラシックカーと並ぶほどといっても良いでしょう。需要が高く、供給は少ない。価格は急速に高まっており、すでに一部のクルマはクラシックカーを超えるほどです」
知っておくべきこと
英国に正規輸入されたR34型の日産スカイラインGT-Rは、Vスペックのみで、80台だけ。
セントヘレンズのミドルハースト日産の手で、マイル表示のスピードメーターに、コロニーレーザー張りのシート、オイルクーラー・ファンが追加されている。さらに、180km/hのスピードリミッターを解除するため、ECUのリマップも施されている。
いくら払うべき?
4万ポンド(532万円)~4万9999ポンド(664万円)
日本からの並行輸入のGT-R。状態はいずれも良い。
5万ポンド(665万円)~6万4999ポンド(864万円)
整備記録も揃い、インテリアがきれいなGT-R。多くはモディファイされている。
6万5000ポンド(865万円)~8万9999ポンド(1196万円)
数千ポンド(数十万円)をかけて大幅なオーバーホールが施されたクルマ。メカニズムのアップデートも受け、ドリフトやサーキット走行向けに仕上がっていることも多い。
9万ポンド(1197万円)以上
主にコレクターが保管していた、限定モデルで低走行距離のGT-R。
英国で掘り出し物を発見
日産スカイラインGT-R R34 登録:2002年 走行:10万4600km 価格:9万ポンド(1197万円)
366台のみが製造された、Mスペックエディションで、シリアルナンバーは325。駆動系統は基本的にノーマル。日本で整備を受けた明細も沢山残っている。売り手は、間違いなく素晴らしいコンディションだと主張している。
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みんなのコメント
日本人以上のマニアがいるとか聞くけど、それはありえないと思っています。正規で購入された車体の方が少ないと思われる、中には盗難のものだって必ずある。
ランエボやインプレッサも英国では大人気だそうで。やはり右ハンドルなのが良いみたいですね。日本は以前に比べるとスポーツカーが激減したけど、スイスポなんかが安く買えるのはありがたい事だと思います。