■従来の超小型モビリティ実証試験はなぜ続かなかったのか
たまたま同じ日の発表になったのか、それとも近未来を見据えてトヨタが周到に準備した結果なのでしょうか。そして、これは軽自動車消滅に向けた号砲なのでしょうか。
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トヨタが2人乗りの小型EV「シーポッド」(C+pod)の法人および自治体向け販売を開始した2020年12月25日に、国は2050年カーボンニュートラルを目指すグリーン成長戦略を発表しました。
グリーン成長戦略では「遅くとも2030年代半ばまでに、乗用車新車販売で電動車100%の実現」を掲げ、そのなかで、軽自動車・商用車等の電動化についても記載がありました。シーポッドと軽自動車の電動化は、どのように結びついているのでしょうか。
まず、シーポッドの車格についてですが、二輪車と軽自動車の中間になるイメージの、超小型モビリティに属します。
この超小型モビリティは、国が2010年代に入ってから全国各地でさまざまな実証試験をおこなってきました。
車種としては、既存のミニカー(第一種原動機付自転車)であるトヨタ「コムス」、ルノーが開発した日産「ニューモビリティコンセプト」、ホンダ「MC-β」のほか、イタリア、中国、台湾などからの輸入車や日本のベンチャー企業の試作車などさまざまありました。
筆者は各地の実証試験を取材し、各モデルの開発担当者やベンチャー企業経営者らと、超小型モビリティの可能性について膝詰めの意見交換をしてきましたが、道半ばで開発や市場導入計画を中止したケースが数多く存在します。
撤退の理由としては「事業性が見出せない」という答えが大半を占めました。
そもそも、超小型モビリティの発想は、観光地での回遊、郊外団地や住宅地のいわゆる“買い物難民”対策、そして高齢化率が上がる山間地域での高齢者の足、という3つの可能性を軸に実証がおこなわれたのですが、結局のところ、継続的な事業としての道筋が見えてきませんでした。
国としては、全国各地の実証試験での成功事例を積み上げながら、車両の規格や基準化を進めようとしたのですが、“事業として十分成り立つ”という観点での成功事例はほとんど生まれなかったために規格の取りまとめが遅れ、「国の方針が決まらないのでは、このまま投資を続けることは不可能」(ベンチャー経営者)といった声が出ていました。
そうした紆余曲折を経て、超小型モビリティの保安基準の整備が進み、量産化への目途が立つなかで、トヨタは独自に展開する“町づくり”戦略の一環として超小型モビリティを捉えてきました。
これまでの試作車としては、二輪車のように車体が大きく傾いて走行する「i-ROAD」を日本とフランスで試験的に導入したことは、多くのユーザーにとっても記憶に新しいところでしょう。
ただし先に導入されるのは、2019年10月に公開した横二人乗り「超小型EV」コンセプト、現在のシーポッドでした。
さらに2020年5月から実施されている全国のトヨタ販売店での全店舗全車種併売に関連した、販売店と地域社会とのつながりを強化する「町いちばんのトヨタ」という戦略のなかでも、超小型モビリティや、トヨタが歩行領域EVと呼ぶ立乗り式小型EV・電動くるまいすなどの導入が、それぞれの地域で模索されています。
トヨタ本社は全国の販売店に対して「これからは、地域の現状をよく知る販売店が総合生活サポーターになって欲しい」という姿勢を示しています。
そうしたなかで、今回シーポッド発売開始は、法人や自治体との連携による、持続可能なビジネスモデルの構築に本気で取り組むことになったのだといえます。個人ユーザー向けには2022年目途で調整としています。
こうした大枠でのトヨタの取り組みを、これまで超小型モビリティ実証試験をおこなってきた、日産やホンダが追うかどうかは、各メーカーの各販売店の体力によって大きく左右されると思います。
■軽自動車の考え方が変わる可能性も?
次に軽自動車の電動化ですが、ホンダとトヨタの子会社であるダイハツは2021年1月時点でスズキのようなマイルドハイブリッド車をラインアップしていません。
そうしたなか、一部メディアは12月27日、関係筋からの情報として、ダイハツが2021年度中を目途にストロングハイブリッドシステムを軽に導入すると報じています。
また、スズキの鈴木俊宏社長は新型「ソリオ」のオンライン発表会の質疑応答で、筆者の質問に答える形で、軽自動車向けとして限定はしませんでしたがストロングハイブリッドを念頭に置いて「トヨタからの部品供給を受けて、スズキ独自のハイブリッドシステムを開発することも検討したい」と答えています。
そしてN-BOXを擁するホンダは、八郷隆弘社長がF1撤退の理由を「電動車開発への開発リソース集約」と明確に答えており、次期N-BOXのハイブリッド化は十分に視野に入っていると思われます。
一方で、商用軽のEV化に関連して、東京電力などが主体となる電動車活用推進コンソーシアムが2020年5月に立ち上がっています。
「物流事業者や全国の電力会社向けなどで利用する、新規の軽EV開発を積極的に相談している」(東京電力関係者)という状況です。
こうした各方面での動きを取材してみると、超小型モビリティが軽自動車の代替車となり、軽市場が縮小し、最終的に軽規格が消滅する可能性はあまり高くないと感じます。
ただし、今後さらに国内自動車市場全体での電動化が進むなかで、また世界市場における小型車の部品共用性を考える上で、軽が現在のリッターカークラスに吸収される可能性はゼロではないと思います。
そうした軽の電動化による商品としてのレベルアップと、超小型モビリティを活用したさまざまな地域サービスが今後、どのように共存共栄していくのか。地域サービスのユーザー目線で、これからの動向をしっかりと見守っていきたいと思います。
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みんなのコメント
激震の意味が分からない。
今までも何度か似たような2名乗りミニカーはあったけど、個人用で売れたためしがない。
実際、駐車場事情は変わらないし、夫婦で二人乗ったらろくに荷物積めないし、維持コストも軽4輪と大差ないでは、普及するわけない。大抵の人は、いざって時に4人乗れる軽自動車を買う。
唯一普及させるには、軽規格を値上げしてコストを差別化することだが、そうなると小型車と大差なくなって、軽自動車が生き残れない。
そりゃ、軽は激震だわ。