まさか、日産とホンダが連携するとは!?
自動車産業界のみならず、ユーザーにとっても驚きのニュースである。日産とホンダは3月15日、都内で共同会見を開いた。
命題は「自動車の電動化・知能化時代に向けた戦略的パートナーシップの検討を開始」だ。
日常生活の中で見れば、なんだか意味が掴みにくい表現かもしれないが、近年の自動車産業界ではよく使われる言い回しだ。例えば、トヨタとスズキ、トヨタとマツダ、また海外では最終的にはステランティスの誕生に至ったFCA(フィアット/クライスラー)とPSA(プジョー/シトロエン)の事例などがある。
ようするに、日産とホンダはどのような連携の形が両社にとってベターかを、両社が合意した上で深堀りするということだ。そのために、MOU(メモリー・オブ・アンダーステンディング:覚書)を交わす。
会見には、日産の内田誠社長とホンダの三部敏宏社長が登壇して、会見場内とオンラインで記者との質疑応答に対応した。会見の冒頭、両社長が協業を検討する意義や市場の背景を説明。ただし、会場内で図表などを投影することはなく、あくまでもこの会見が両社の協議の正式なスタート地点であることを強調し、具体的な内容については触れなかった。
「CASE」を超えて
唯一、協業に向けた議論として「具体的には…」としたのは「自動車車載ソフトウェアプラットフォーム、パッテリーEVに関するコアコンポーネント、商品の相互補完など」という部分だ。
これに伴い、自動車産業界では近年、自動車メーカーの常套句となった「100年に一度と言われる自動車業界の変革期」という表現が、会見の中で何度か出てきた。
さらに「スピード感」という表現も目立った。
周知のことだが、ここで改めて説明すると「100年に一度…」というのは、ドイツのメルセデス・ベンツ(当時のダイムラー)が2010年代半ばに次世代事業に対して「CASE」というマーケティング用語を使うようになり、それが日本を含めてグローバルに広がった。
通信によるコネクテッド/自動運転/シェアリングなどの新しいサービス、そして電動化の大きく4つの領域が絡み合って進化していく、というイメージだ。
日産とホンダはこれまで、それぞれが「CASE」への対応を実行してきたことは、多くのユーザーが知るところだ。その上で、重要度が高いのが「自動車車載ソフトウェアプラットフォームとバッテリーEVのコアコンポーネント」と指摘した。
SDV対策とは?
まず、自動車車載ソフトウェアプラットフォームだが、近年はSDV(ソフトウェア・デファインド・ヴィークル)という表現が自動車業界でよく聞かれる。
メルセデス・ベンツが言う「CASE」で見れば、C:コネクテッド/A:自動運転/S:シェアードなどのサービス事業を組み合わせたような考え方が、SDVである。
車載のソフトウェアを通信を使って更新する、オン・ザ・エア(OTA)や、自動技術でもインフラは他車とのデータ協調が必要だ。
また、サービス事業については、クルマの走行状態やユーザーがスマートフォンをクルマと連携させた際の各種データなども、SDVの技術に含まれる。
こうしたSDVを総括的に管理・運用する仕組みを、プラットフォームと呼ぶことがある。ここで重要なのが「スケールメリット」だと、両社長は会見で指摘した。
これまでも、例えば高級車の場合、100を超える小型演算装置を搭載してきたが、従来の考え方が今後、大きく変わる可能性がある。開発から量産までのスピードも極めて早い。
こうしたクルマの知能化という分野で、初期投資は極めて大きいため、メーカー個社ではなく復数メーカーで共有するメリットは大きいのだ。
いまこそ、BEV対策
もうひとつの、バッテリーEVのコアコンポーネントとは、電池/モーター/インバーターなどを指す。この分野はスケールメリットが大きく効くのは当然のこと。
日産もホンダもこれまで、バッテリーEV、またハイブリッド車やプラグインハイブリッド車の開発を独自に進めてきた。だが近年、特に中国サプライヤーの量産効果が急激に進み、テスラや中国EVベンチャーの価格競争力が上がってきているところだ。
特に中国で、日産もホンダも自社EVの価格競争力に対する危機感が高まっていたところであり、2社の思惑が重なったと言えるだろう。
両社長は「まったなしの状況」とか「2030年を意識すると、いまこそ大きく動くタイミング」といった表現で、バッテリーEVでの協業の必要性を強調した。
欧米では今、バッテリーEV普及については、国や地域の政策変更や、グローバルでの環境などを意識した投資バブルの弱まりなどから「踊り場」に入ったとも言われる。
そうした時期だからこそ、日産とホンダとしてはなおさら、将来のバッテリーEV普及に向けた地盤固めをしたいという思いもあろう。
いずれにしても、両社は今後、将来に向けた様々な可能性について、各種ワーキンググループを立ち上げて本格的な議論を始める。
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