小さくて小回りの利くボディに、たっぷりとした荷台と荷室。軽トラックと軽バンは、人々の生活を支える“働くクルマ”であり、ある意味最も日本車らしさが詰まったクルマと言っても過言ではない。
軽トラックと軽バンのベースは基本的に同じで、実車を見ても両車は非常に似ている。しかし、実は大きな「違い」がある。
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一般的に考えれば、共通化すればするほどコストも安く済むはず。にもかかわらず、なぜわざわざ軽トラックと軽バンは、作り分けられているのか。その背景には“働くクルマ”ならではの事情があった。
文:御堀直嗣
写真:DAIHATSU、編集部、HONDA、MITSUBISHI
軽トラと軽バンの最も大きな違いは?
軽トラックのスズキ キャリイ(上)と軽バンのダイハツ ハイゼットカーゴ。並べると、ホイールベースの長さの違いは一目瞭然。他社も概ね同様の作り分けをおこなっている
軽自動車の商用であるバンやトラックは、価格が商品性の重要な要素である軽自動車のなかでも、さらに原価に厳しい車種であろう。それにもかかわらず、軽自動車メーカーのバンとトラックは、まったく作りが異なる。
一目瞭然なのはホイールベースで、外観からもバンは前輪が運転席の前寄りにあるのに対し、トラックは前輪が運転席の下にある。
また、後輪も、バンがリアバンパー近くまで後ろなのに対し、トラックは荷台下のやや後ろ寄りといった位置関係だ。これによって、バンのホイールベースは長いが、トラックのホイールベースはかなり短い。
バンの、ダイハツ ハイゼットカーゴ、スズキ エブリイ、ホンダ N-VANは、ホイールベースが2450mm前後(N-VANは2520mm)であるのに対し、各社ともトラックは約1900mmである。およそ550mm(50cm)もホイールベースが異なるのだ。
なぜ差別化? 軽トラと軽バンを作り分ける理由
ホンダ アクティの最小回転半径は3.6m。バンに対して圧倒的な小回り性能が軽トラックの美点だ
背景にあるのは、バンは配送などで使われるため、直進安定性が走行性能で重要性を持つのに対し、トラックは田畑などの畝を走ることを想定し、小回りが利くことを重視しているためと、軽自動車大手のダイハツもスズキもいう。
最小回転半径を調べると、各社のバンは4.1~4.7m(タイヤ寸法によっても異なる)であるのに対し、トラックはほぼ3.6mで揃っている。
スズキによれば、畦道から通りに出る際のアプローチアングルも考慮して前輪位置が決められているそうだ。
また、ダイハツは、ホイールベースが短い方が、未舗装の凹凸路面で運転しやすいとも話す。トラック需要がいかに農作業などを主体としているかが伺える。
そのほか、バンは軽乗用のワゴン系と車体を共有することも視野に、モノコック車体であるのに対し、トラックはフレーム構造を持ち、その上に用途に応じた車体や荷台を架装する。
軽トラックには、単に荷台を持つだけでなく、その荷台がダンプのようになっていたり、パネルを装備した冷凍・冷蔵機能を持ったりするものもある。
軽トラックはその意味で、フレームやエンジンはメーカーがつくり、荷台は用途によって作り分ける大型トラックメーカーのクルマ作りに似ている。
「共通点」にみる軽商用車ならではの美点
オーソドックスな軽バンのダイハツ ハイゼットカーゴ(奥)は軽トラックとの共通点も多い。一方、前輪駆動のホンダ N-VAN(手前)は異色な存在
一方、バンとトラックで共通する側面もある。ホンダN-VANを除いて、いずれも後輪駆動であるところだ。
軽の商用車は、荷物の最大積載量が350kgであり、車両重量が1トンを切るようなクルマで、積載の有無による前後重量配分は大きく変化する。
その荷台に最大積載量の荷物を積んだ場合、後輪駆動の方が駆動力を発揮しやすい。前輪駆動では、荷重が後ろ寄りになって発進に手間取る可能性がなくはないだろう。
しかし、N-VANは前輪駆動だ。これは、乗用のN-BOXを基にしているからで、逆に前輪駆動であることを活かして、荷室の低床化を実現している。ただし、トラックのアクティは後輪駆動だ。
農作業などでの用途が軽トラックでは重視されるため、その走行は必ずしも舗装路だけとは限らない。未舗装路で収穫物などを満載し、走行するには、駆動輪に荷重がのるほうがよく、後輪駆動でなければならないだろう。
さらに、軽商用車で不可欠とされるのが四輪駆動車だ。たとえば未舗装の畝から舗装路へ出る際、段差があったり上り坂であったりするため、4輪駆動で一気に乗り上げることが求められる。
あるいは、山間の畑や、山仕事などで、未舗装路のみならず降雪時にも荷運びが必要な場合には、やはり4輪駆動の機能が確実で安全な走行をもたらす。そこで、軽商用車には4輪駆動車の設定がある。その方式は、パートタイム式だ。
ことに軽トラックの場合は最小回転半径の小ささも必要なので、パートタイム式4輪駆動であることにより、後輪駆動の際の小回り性能が確保される。
フルタイム式の方が、カーブを曲がる際にブレーキング現象は起きないが、一方で回転半径は大きくなってしまう。四輪駆動方式の選択を見ても、軽トラックの小回り性能が、いかに重要かが見えてくる。
“働くクルマ” 今後の進化は?
三菱のミニキャブミーブトラック。2017年に生産終了となったが、ミニキャブミーブバンは現在も販売が継続されている
ところで、ガソリンスタンドの全国的な減少により、働くクルマとしての軽商用車にもいずれ電動化が求められるようになるのではないか。
これまで、自宅近くや農業協同組合など集積場所の最寄りにあったはずのガソリンスタンドが廃業していくことになると、仕事で走る道筋とは別に給油のため走らなければならなくなる。
その点、電気自動車(EV)であれば、自宅や集会場所などで充電できる。しかも、遠出の機会は少ないだろうから、急速充電の必要性も薄れる。
三菱は、乗用のi-MiEV発売後に、ミニキャブMiEV(バン)やミニキャブMiEVトラックを発売し、軽商用車の電動化の道筋を示した。
一般に、商用車は走行中の振動・騒音が大きく、労働環境は必ずしもよくない。それでいて、配送などは終日の運転を強いられる。EVであれば静粛性に優れ、どれほど快適に仕事ができるだろう。
しかし、思ったほど販売台数が伸びなかった。背景にあったのは、価格の高さもあるが、4輪駆動の設定がなかったためだ。機械的なパートタイム式であっても、既存の部品を使いながら四輪駆動が実現できていたなら、軽商用EVの販売台数は増えたかもしれない。
製造面でリチウムイオンバッテリーの原価の高さが指摘されるが、原価はある程度大量生産されることで下がっていくものだ。
また、ある程度用途のはっきりした軽商用であれば、大量のバッテリーを積む必要もない。実用の範囲の適切なバッテリー容量に限定すれば、価格もそれほど上がらずに済むだろう。
軽商用といえどもバンとトラックでは用途に応じてまったく別の作り方をしているのだから、働く人のための機能に徹した、商用軽EVの四輪駆動車が誕生したら、喜ぶ人は多いかもしれない。
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