広いユーザー層に支持されたプレミアム・コンパクト
マツダ「ベリーサ(VERISA)」の車名は、イタリア語のVerita(真実)と英語のSatisfaction(満足)を掛け合わせた造語で、「真の充足」の意味が込められ考案されたものだった。「こだわりを持つ人と、それに応えるモノとの理想的な関係を表現したものです」と、発表当時の広報資料にはある。続けて広報資料のページをめくると「ベリーサが提供する4つのコアバリュー」とあり、1:こだわりの内外装デザイン、2:上質さを直感でき、スマートに使いこなせる機能性、3:クラスの概念を超えた静粛性、4:マツダのスポーツDNAが息づく運動性能、と記されている。
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「デミオ」の兄弟ながらカタログからして意気込みが違った
ベリーサの発表・発売は2004年6月28日。初出は2003年1月のデトロイトショー(2L+6速MT仕様で、フロントまわりのデザインなどが量産車のベリーサとは異なっていた)。ベースは当時の2代目「デミオ」で、同じ「DYプラットフォーム」由来のクルマには、日本へも一時期導入された3代目「フィエスタ」などがある。2代目デミオというと、メーカーオプションでホワイトキャンバストップが用意されたあのモデルだったが、そのデミオとベリーサは、2490mmのホイールベースは共通とし、ベリーサは全長(+50mm)、全幅(+15mm)が大きく、反対に全高は15mm低められたボディサイズとなっていた。
ところでこのベリーサだが、発表当時の位置づけとしては、同じクラスのデミオが手軽で便利な多目的車だったのに対して、個性やクラスレスの上質感を重視して作られたクルマだった。
カタログそのものも、同世代のほかのマツダ車のカタログが表紙のデザイン、判型を統一していたのに対し、ベリーサの最初のカタログだけ少し小さいサイズで特別感を演出しており、見るとマツダのスローガンの「ZOOM-ZOOM」の書体も専用。中のページのデザインも洒落た雰囲気でまとめられていた。ちょうどそのころに流行っていた、センスや自分の生活スタイルにこだわりをもつ人が注目していたセレクトショップのカタログ風。
「メイクアップミラー&照明付きアッパーグローブBOX」の挿し絵(写真)には、なんと和服姿の女性の化粧道具をもった手元のアップが使われていたり。9色のボディ色の説明では、クローゼットにハンガーで吊るされたシャツが並ぶ写真であったりと、(こう言ってはいささか失礼ながら)マツダ車らしからぬシャレオツぶりだったのである。
デザインも使い勝手もスマートに作り込まれていた
もちろん実車は、エクステリア、インテリアともに凝っていた。とはいえエクステリアなど、決して奇をてらったところはなく、むしろオーソドックスに見えるほどだったが、久しぶりにカタログ写真を眺めていると、今見ても古くささがなく、派手ではないが丁寧に作りこまれたデザインだったと感じられる。当時のマツダ車は五角形グリルをデザイン上の統一したモチーフとしていたが、このベリーサはフロントに薄く開けられたエアインテークがうっすらと五角形風の形状をしている程度。6ライトのサイドビューも落ち着いたデザインだ。
一方でインテリアのこだわりのポイントがシートで、シートフレーム自体に上級セダン「アテンザ」のそれを用い、クラスを超えたゆったりとした着座感を実現していたのは今でも印象に残っている。シート表皮もほかのマツダ車とは一線を画す世界観でまとめられ、インパネやトリム類の表面も、部位ごとに異なるシボ、表面処理が施され、ひと手間、ふた手間かけられた上質な風合いが味わえた。シートはその後も折々の特別仕様車、限定車等でレザーやパイピングの施された特別なデザインのものなど多数リリースされている。
機能面では、約3000曲の収録を可能とした20GBのハードディスク採用のミュージックHDD(CDからの録音も可能だった)、カードキー方式のキーレスエントリーなど、上級車なみの吟味された装備を設定。ラゲッジスペースには内部を2段に分けて使用できるフレキシブルボード(カタログでは「たとえば上段はコートやジャケット」などと、まるで往年のルノー「5バカラ」のような使用例が文面として記されていた)や、背面のストラップを引けば簡単に後席背もたれを倒すことができるワンタッチフォールドシートなど、スマートな使い勝手を実現する設えを備えていた。
日常的に気持ちよく乗りこなせた、復活してほしい1台
このベリーサの当時の開発主査のSさんは「赤いファミリアXGが自身のクルマの原体験で、そのクラスレスだった楽しさ、心地よさを思い浮かべて開発した」と話をされていた。またデザインをまとめたチーフデザイナー(当時)のKさんからは「シックでモダンな個性を表現した。ミニ(当時のR50・BMWミニ)のような世界観は意識したことのひとつ」という話を当時の試乗会の場で聞いたことをよく覚えている。
ベリーサは2004年から2016年と、じつに12年もの長いライフをまっとうした。初代「フェスティバ」(オートラマ)、「レビュー」(オートザム)など、マツダ製のチャーミングなコンパクトカーはほかにもあったが、なにもSUVだけに限らず、年齢、性別を問わず日常的に気持ちよく乗りこなせたベリーサも、今の時代にこそ甦ってほしい1台だ。
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みんなのコメント
中はそこそこ広いし全然飽きてません
きっと価格が少しお高めだからでしょう。