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ホンダ・シビック・タイプR vs アバルト124スパイダー 比較テスト

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ホンダ・シビック・タイプR vs アバルト124スパイダー 比較テスト

もくじ

ー あながち遠からぬ立ち位置
ー ようやく真価を取り戻した赤バッジ
ー サソリを冠した正統派スポーツカー
ー 秀才と天才
ー 敷居の高いアバルト、低いシビック
ー 1台だけ所有するなら
ー 番外編1 3万ポンドの福音 新車編
ー 番外編2 3万ポンドの福音 中古車編

ロードテスト(5) アバルト124スパイダー

あながち遠からぬ立ち位置

ここ最近の個人的な会話を思い出す。

ポルシェ911とレンジローバー・スポーツのどっちがいいか真剣に悩んだり、フェラーリ488GTBと軽飛行機ならどちらが人生のスパイスとして刺激的か仮定したり、そんなのばかりなのである。

同じ予算で買えるもの同士を比べている、という点は、現実的な出費の対象を検討中のひとにとって、よくあることだ。

そういう思考回路の持ち主からすれば、今回の2台を比較しようといわれても、別段驚くようなことではない。

たしかにアバルト124スパイダーとホンダ・シビック・タイプRでは、タカ派とハト派くらい目指すものが違って見えるかもしれない。

ところが、どちらもドライビング・プレジャーを追求した、3万ポンド(約450万円)前後のクルマという点では通じるものがある。その意味では、2台はライバルということができるだろう。

ようやく真価を取り戻した赤バッジ

この対決の興味深いポイントは、勝負するまでもなく、それぞれが相手を凌いでいる点がハッキリしていることだ。

シビックはデタラメなくらいに速く、FFハッチとしては驚愕のハンドリングを持ち、それでいて5人分のシートと広い荷室も備える。

世間一般の価値観に照らせば、間違いなくこちらの方がいいクルマ、ということになるのだろう。


ただし、純粋なドライビング・プレジャーを論じる場はスペック表の上ではなく、当然ながら路上だ。

前輪駆動レイアウトは根本的に、走りを論じるにはふさわしくないアンバランスな構造で、またベース車は買い物や子どもの送り迎えを主目的にしたクルマである。

アバルトのような後輪駆動で軽量な2座ロードスターに、はたして太刀打ちできるのか。普通に考えれば、勝ち目などないように思える。

集合地点までの足はシビックだったが、その道中、このクルマにおけるホンダの仕事ぶりに舌を巻きつつ、どうしてこれまで、タイプR本来の輝きを再び見つけ出すのにこうも手間取ったのかと疑問も感じた。

この新型タイプRに限れば、古き佳きカーキチ集団であり、F1を制した唯一の日本車メーカーでもあるホンダにしか生み出し得ないだろうものとなっている。

数あるハッチバックの中でも、フォルクスワーゲン・ゴルフRと同様の巧みな走りをみせるが、あちらがその高性能ぶりに口を閉じるのも忘れるほど唖然とするばかりのクルマであるならば、こちらは口角が耳まで届くほどニンマリしてしまうようなシロモノだ。

思わず笑顔がこぼれるようなグリップと、ある程度のコントロールを許容するリアタイヤ、そして今買えるこの手のいかなるクルマにも劣らない精度を持ち合わせている。

サソリを冠した正統派スポーツカー

アバルトはといえば、もちろん全く違うタイプのクルマだ。共通点を探すなら、4気筒ターボと二輪駆動、6段MTくらいのものだ。

ご存じの通り、マツダ・ロードスターの設計をベースに、フィアットのエンジンをフロントに縦置きするFRレイアウトの2座オープンカーである。また、日本で生産されながらも、欧州を代表するチューナーのバッジを与えられるピュアスポーツカーだ。


そしてアバルトには、シビックのようなクルマでは太刀打ちできない本質的な正義がある。

視認性重視の高い座面にすっかり馴染んだ今日において、タイトなコクピットで地面に近く座り、最低限の操作系にのみ囲まれる環境が、容易に楽しさを得られるものだということを忘れがちだ。

その点、アバルトなら走り出す前から、スポーティで走りに特化したフィールを感じられる。出自は日伊合作だが、まるで純血のサラブレッドのように思えるクルマだ。


エンジンをかけても、その思いはさほど変わらない。

ホンダユニットは、美しくさえずるわけでもなければ、たいていの場合でアバルトのオーナーに対する尊大な気持ちが湧いてくることもない。

マツダがMX-5に積んで、これより5000ポンド(約75万円)も安く売る2.0ℓ自然吸気ユニットの方が素晴らしく思えることさえ、何度となくあった。


対するアバルトは、この対決にふさわしいデバイスだろうか。まず、そのギアボックスは素晴らしく、シビックを遥かに引き離す。

また、絶対的な軽量さや、前後等分に近い重量配分によるダイレクト感も秀逸で、前後方向に見れば挙動のほぼ中心にあるシートポジションも好ましい。

とはいえ、乗り心地は及第点程度で、ステアリングにはMX-5に見られたようなフィールがどことなく欠けている。そしてエンジンは、小排気量ターボであることを絶えず感じさせられるものだ。

秀才と天才

シビックは対照的に、走り出しから楽しめる。直線路でつま先にちょっと力を込めるだけで、それは始まるのだ。

0-100km/hのタイムは5.8秒で、アバルトをきっかり1秒置き去りにする。FFレイアウトのトラクション面での制約を受けてさえこれなのだから、このホンダユニットをアバルトのシャシーに組み合わせたなら、5秒台前半まで短縮できるだろう。それどころか、パフォーマンスが別次元へと高められるに違いない。


しかし、走り続けると思わぬ状況になってくる。

アバルトでタイプRについていこうとしても、ペースが上がると無理だということを思い知らされるが、これは想定内で、しかもたいして気にならない。

ただただ先行車の背中を追う走りから、本気のドライビングへと切り替えた途端、この小さなフィアットは表情を一変させるのだ。

突如として、シャープで鋭敏に感じられるようになる。エンジンには欠点もあるが、そこに低速トルク不足は含まれない。そして、シャシーは注ぎ込まれるエネルギー量が増すほどに、活き活きとしたフィールが高まっていく。

シビックがいかに望んでも、124スパイダーに敵わないものもある。全幅の差は驚くべきことに142mmもあり、シビックなら通るだけで精一杯のタイトなコーナーでも、適正ラインを通すことができる。

いかに走らせようとノーズがアペックスを捉えてくれるのは、シャシーのセッティングを手掛けた開発者たちに、この手のクルマにアンダーステアは不要だという認識があったからだろう。

そうしてこのアバルトは、挙動をエンドレスに後輪でアジャストできる素質を持ったものとなった。LSDを標準装備することもあり、必要以上に派手なドリフトをかますこともできる。

だが、それ以上に満足感を得られるのは、舵角をほぼつけずにニュートラルを保ち、外輪に送り込むパワーで進行方向をコントロールするときだ。

グリップが比較的穏やかなので、速度も比較的控えめならば、そうした操作もやりやすい。

敷居の高いアバルト、低いシビック

早い話、2台を比べると、シビックの方がやや鈍く感じられるのだ。これは、320kgの重量差が少なからず影響しているように思える。

タイプRが最善の状態を取り戻したと実感するには多少の時間を要するが、その領域に入ると、それがあまりインタラクティブな経験ではないと思い知らされることとなる。

クルマと対話することより、その性能に驚嘆させられることの方に、楽しみが由来しているのだ。現実感が薄いというわけではないが、重さと前輪駆動がもたらす制約は、アバルトでは感じずに済む類のものでもある。

ただ、それと引き換えに得られるものも大きいので、勝敗を決する前にそれを考慮してみよう。どちらが楽しいかというなら、それはアバルトの方だ。ただし、シビックでは到達しえないようなクルマとの対話を楽しむためには、かなりハードに走らせなければならない、という問題も孕んでいる。

対照的にシビックは、常に楽しみを味わい続けることができる。コーナリングが、アスファルトを切り裂くような馬鹿げた速さであろうが、一般的なハッチバックで考えられる程度の速いペースであろうが、これは申し分のないパフォーマーだ。アバルトの能力は深いが、こちらは同じくらい広さをみせる。

1台だけ所有するなら

ここまで、勝者はアバルトになると思っていた。

適切な設計、伝統的なレイアウト、掛け値なしの軽さを備えたスポーツカーの前では、最速レベルのホットハッチであっても勝ち目はないと予想していたのだ。

ところが、ホンダの仕事ぶりは、そんな一般論を覆すほど優れていた。

たしかに、理想的なコンディションで走らせれば、アバルトは比類なきドライビングマシンだ。しかし、それを存分に楽しめる機会がどれだけあるだろうか。たしかに、消極的な結論かもしれないが、楽しめるチャンスが多いに越したことはない。


現実問題として、路面はいつでもドライとは限らないし、空いた道で飛ばせるときばかりでもない。また、常にひとりかふたりで行動するとも限らない。

この結論はアバルトや、これより安価なベース車であるMX-5を否定するものではない。走りへの満足度に決定的な差がないのであれば、レパートリーは多い方がいい。それだけのことだ。

番外編 3万ポンドの福音(新車)

マツダMX-5 2.0スポーツ


言わずと知れた、アバルト124スパイダーの元ネタ。速さではサソリのバッジに敵わないが、2.0ℓ自然吸気ユニットの甘美なフィーリングは捨てがたい。なにより、5000ポンドほど安い。

フォルクスワーゲン・ゴルフR


実用主義者のホットハッチは、同じくRを冠するシビックほどの面白みはないが、日常の足に求められる洗練性では上。オールラウンドなホットハッチとしては、いまだ敵なし。

トヨタGT86プロ


86に3万ポンドというのは高すぎる気もするが、脚回りを固め装備も充実させたプロ仕様はそれくらいの価格になる。ただし、ベースモデルならば、やはりお買い得感が際立つスポーツカーだといえる。

番外編2 3万ポンドの福音(中古車)

ポルシェ・ケイマン


2014年式の2.7ℓMTモデルを、ジャスト3万ポンドで手に入れられる。走りはよだれの出るほど美味でありながら、日常の足にもなりうるというのは魅力的だ。

フォード・マスタング


線の細い直4エコブースト仕様でなくとも、この予算で探せる。ただし5.0ℓのアメリカンV8、それも2015年後半のモデルとなると、値切り交渉の腕前が求められる。

ロータス・エリーゼ


1.6ℓのベースグレードなら、低走行の2016年式でも狙える。これ1台で生活するのはハードルが高いものの、走れば不便さすら忘れる幸せが訪れる。まさに福音のごときクルマだ。

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