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なぜ小排気量V6エンジンは衰退したのか?

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なぜ小排気量V6エンジンは衰退したのか?

かつて2.0リッター以下のV型6気筒エンジン搭載車がいくつもあった。なぜそれらは消えてしまったのか? 自動車のメカニズムに詳しい世良耕太が考える。

ユーノス・プレッソのV6に衝撃!

新型ランドクルーザーの凄みとは?

1980年代後半からの“バブル経済”を実体験した人であれば、当時の“物量”へのあこがれを覚えているに違いない。

21世紀も20年を過ぎた現代では、小排気量エンジンなら3気筒にするのがスマートで、4気筒は古くさいという認識になりつつあるが、バブル経済が華やかりし頃は、数が多いほう、数字が大きいほうが“イケてる”と、捉えられていた。効率など、ほとんど重視されていなかった。

熱効率では、ガソリン・エンジンの単気筒容積は500ccが適量であると考えられている。ちょっと幅を持たせたとして400ccから600ccだ。だから、排気量が1.6リッターなら4気筒にするのが妥当だし、排気量が2.0リッターでもおなじだ。ところが、2.0リッターのV型6気筒エンジンは、かつて数多く存在した。

日本初のV型6気筒エンジンは日産の「VG」で、1983年に発売されたセドリック/グロリア(Y30)に搭載された。排気量は2.0リッターと3.0リッターの2種類。Vバンクを(90度ではなく)60度としたのは、セド・グロのようなRWD(後輪駆動)車に縦置き搭載するだけでなく、FWD(前輪駆動)車への横置き搭載を念頭に置いていたからだった。エンジンの幅を狭くしないと、V型エンジンを横置きで搭載するのは難しいからだ。

バブル経済の残り香が漂う1991年6月、マツダは5チャンネル戦略のひとつとして新設したユーノスから、「プレッソ」を発売した。このコンパクトハッチバッククーペに設定されていたのは、新開発の1.8リッターV型6気筒自然吸気ガソリン・エンジンの「K8-ZE」だった。当時、世界最小のV型6気筒エンジンであり、しかも思い切りの良かったことに、当初プレッソにはこのV型6気筒の設定しかなかった(後に1.5リッター直列4気筒ガソリン・エンジンを追加)。

4気筒ではなく6気筒を選択したのは、振動の少ない滑らかな回転フィールをユーザーに味わってもらいたいという思いだったという。“4”ではなく“6”という数字も重要で、6気筒であることが醸し出すリッチな雰囲気が、プレッソというブランニューモデルにプレーステージを与えると作り手側は期待した。数字が大きいほうがエラいと盲目的に信じられていた時代のあだ花的エンジンである。

「1.8リッターでV6! すごい」と、すっかりバブル経済の空気に飲み込まれていた当時の筆者は、コンパクトなプレッソを前にして感激したのを覚えている。もっと感激したのは走らせてみたときで、きちんと6気筒エンジン特有の、なめらかで上質なサウンドを奏でる点だった。

ただし発進時は「軽いなぁ」と、拍子抜けした。アクセルペダルを踏み込んだとき、ブォンと野太い音を一瞬発するのが6気筒エンジンの特徴であり魅力であると個人的には思っていたが、プレッソのそれは、腹に力がこもっていない歌声のように軽かった。

1.6リッターV6もあった!

マツダがユーノス・プレッソで世界最小のV型6気筒を自慢できたのはほんのわずかで、おなじ年の10月、三菱自動車は4代目「ミラージュ」と「ランサー」に1.6リッターV型6気筒自然吸気エンジンの「6A10」を設定した。発売は翌1992年2月で、「ミラージュ6(シックス)」「ランサー6」の名称が与えられた。「6」という数字が重要だったことがうかがえる。滑らかな加速感と優れた静粛性を実現できるのが、6気筒を選択した理由だった。

三菱の小排気量V型6気筒はミラージュ&ランサーが5代目(1995年~2000年)へフルモデルチェンジされるにあたって、排気量が200cc増やされて1.8リッターの「6A11」になった。その後、ミラージュは三菱のラインアップから消え、ランサーだけが6代目に移行(2000年~2010年)。しかし、V型6気筒エンジンは引き継がれなかった。

一方のプレッソは1998年まで生産され、一代限りで消滅。ユーノス・チャンネルは1996年4月に廃止されており、以後はマツダ・アンフィニ店での取り扱いだった。

2.0リッターに満たない小排気量V型6気筒エンジンは、好景気が生み出したいっときの夢のようなエンジンだったのがわかる。現在では2.0リッターのV型6気筒ですら存在しない。

トヨタ、日産のV型6気筒エンジンの最小排気量は2.5リッターだ。ホンダのV型6気筒は3.5リッターのみ。三菱はかろうじて、古い設計の3.0リッターV型6気筒エンジンをラインアップに残しているのみだ。海外ではフォードの2.7リッターV型6気筒が最小排気量だろうか。

小排気量V6の復活はありえるのか?

冒頭で触れたように、熱効率を尺度にエンジンの良し悪しを判断した場合、単気筒あたりの排気量は500cc±100ccとするのが妥当だ。そう考えると、2.0リッターに満たない排気量のV型6気筒エンジンは妥当性に欠ける。

単気筒500ccで燃焼にまつわる技術を成立させ、1.5リッターなら3気筒、2.0リッターなら4気筒、3.0リッターなら6気筒……と、あたかも「レゴブロック」を積み重ねるように合理的にバリエーションを構築するのが現代的なやりかただ。そのほうが、開発コストも生産コストも抑えられる。

数が増えるのを、自動車メーカーは歓迎しない。気筒数が増えればエンジン1基あたりの点火プラグの数を増やさなければならないし、バルブの数も増えてコストが上昇する。排気量は小さく、気筒数も少なく、が、近年のトレンドである。数が少なく、小さくできれば、材料費は低く抑えられるからだ。

したがって今後、小排気量V型6気筒エンジンが生まれてくることは、まずないだろう。夢のない話ではあるが、こればかりは致し方ない。

文・世良耕太

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みんなのコメント

7件
  • 小排気量V6エンジンが衰退して、もう出てこない原因として考えられることは、安全装備満載、衝突安全対策で大きく重くなった最近のクルマには、小排気量V6では昨今の低燃費を実現するのにどうしても不利なこと、低速トルクが薄く荷が重くなり動力不足になるからでしょう。
  • お、(ワタシ的には)懐かしのプレッソw
    世良さん仰るとおり、確かにこの1.8ℓV6のK8エンジンは吹けが軽くて
    ちょっとパンチに欠けるきらいがありましたね。
    街中のような低速走行では、5速MTだと若干ギクシャク感も感じていたので
    ワタシは4速AT車のFi-Xに乗ってました。
    コチラならスムーズで快適な走りが楽しめましたよ。
    その後に乗り換えた「500」は2ℓのKFエンジン車(20G)の方は200㏄排気量が
    増えただけですがむしろトルク感もあり、コンパクトな車体もあってとても
    乗りやすいクルマでしたね。
    SUV全盛の昨今、500のようなコンパクトで上質なサルーンが世に出ることは
    もう無いんでしょうね…
    その上質さを走りで支えたマツダのKFエンジンは、ワタシ的には
    「隠れた名機」かな…と思います。
    今やその「片バンク分」で十分走っちゃいますもんね!w
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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