現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 3密NGの今、絶滅危惧種となった4座オープンに乗ることは反社会的か?──こんな時代だからこそオープンカーに乗ろう Vol.1

ここから本文です

3密NGの今、絶滅危惧種となった4座オープンに乗ることは反社会的か?──こんな時代だからこそオープンカーに乗ろう Vol.1

掲載 更新 9
3密NGの今、絶滅危惧種となった4座オープンに乗ることは反社会的か?──こんな時代だからこそオープンカーに乗ろう Vol.1

公共交通機関に長時間、乗るのがためらわれる昨今、オープンほど、3密を避けられる移動手段はない。今回は「エレガントかつカジュアル」な4座オープンを取り上げる。

D/Eセグメントで絶滅危惧種だが

29歳、フェラーリを買う──Vol.51  月々2万円でフェラーリに乗れる!?

ひと昔前と違って、いつの間にか新車でラインナップされているのはメルセデス・ベンツとBMW、あとはシボレー・カマロとミニぐらいになってしまった。今回の話題はあくまで4座カブリオレで、スパイダーやロードスター、むしろ幌がオマケであることを前提とするドロップヘッドクーペのような「スポーツ用途」のオープンではない。あくまで「エレガント用途の、しかしカジュアルでもあるオープン」として認識されるジャンルだ。ちなみに「カブリオレ」とは馬車の時代から使われてきた用語で、1、2頭の馬で引く軽快な2人乗り、かつ折り畳み可能な屋根を備えた2輪馬車のことだった。

公共交通機関に長時間、乗るのがためらわれる昨今、自家用の4座オープンほど、3密を避けられる移動手段はない。初夏の太陽の下、独りでも複数人数でも屋根を開け放って走り去る様子は、おそらく自粛ポリスにはスキャンダラスで、歪んだ嫉妬を喚起するだろうが、マスク着用と紫外線対策でもしておけば、元より咎められる云われはないが、そのいとまをも与えないだろう。

もちろん2000万円超の雲上クラスまで無制限に目を向ければ、ベントレーやロールス・ロイスは無論、メルセデスAMGのS63カブリオレやBMWのM8カブリオレ辺りまで車種は増える。だが、乗り出し700万円台以下で楽しめる4座オープンというのは、すっかり絶滅危惧種のようだ。

直近ではアウディが、A5カブリオレ45TFSIクワトロ・スポーツ(765万円)をカタログ落ちさせてしまったことは残念だが、まだディーラー在庫はあるかもしれない。いずれ欧州D・Eセグ相当のプラットフォームやコンポーネンツを用いた4座カブリオレというのは、プレミアム・ブランドなら揃えておいて然るべき車種なのだ。事実、前の世代のV60/S60まではC70カブリオレを擁していたボルボも、アメリカ市場を意識してISコンバーチブルや旧ソアラあらためSCを出していたレクサスも、今やSUVの販売台数は好調ながら、4座オープンの系統は途絶えさせたまま。とくにレクサスの2台は、高年式で程度良なら中古で250万円オーバーも珍しくないモデルなので、すっかり好事家物件になっていることがうかがえる。

効率重視では生き残りにくい

これら新興プレミアム・メーカーにとって、今や4座オープンが難しいジャンルとなった理由は、端的に3つ。ユーロNCAPによる衝突安全基準の厳格化により、元より台数も少ないカブリオレ・ボディを派生させるコスト自体が、煩わしいこと。2つ目は物理的な問題で、電動メタルトップのクーペ・カブリオレという形式は2000年代には隆盛したが、電動モーターで駆動すべき重い上モノを備えることは、屋根で覆うべき広い室内空間、省燃費や動的性能というエフィシェンシーとは、完全にトレードオフの関係になる。欧州市場でCO2排出量によるCAFE規制が今年から始まる以上、4座カブリオレはペナルティの元になる可能性の方が高い。妥協案は昔ながらの幌屋根を電動で開閉する方向だが、3つ目の難儀な理由として、駐車時の防犯性や、屋根を閉じて高速を走る時などの密閉性が足りないという、ファンよりネガつぶしを重視する乗り手のマインドもある。ようはカリフォルニアですら、陽光を浴びるより、EVで単独乗車でも、HOV(High-Occupancy Vehicles=多人数乗車)レーンを走れる方に素敵を感じる一般ドライバーが増えた、そんな効率重視の世の中で、4座オープンは生き残り辛くなっているのだ。

だからこそ、リアルにプレミアム・ブランドか否か? の要件は、オープンカーという非合理の塊のようなプロダクトを、乗り出し約700万円でラインナップ内に飼えるか否か? という点にある、と、そういっても過言ではない。非合理すら合理的に想定内のドイツ車とはいえ、ベントレーやロールスと規模は上でも収益率の異なるメルセデスとBMWは、リーマン・ショック以降も4座オープンを存続させるため、アクロバティックな工夫を重ねてきた。前者はEクラス、後者は3シリーズ、それぞれのセグメントで4座カブリオレの老舗であり続けてきたことはいうまでもない。

4座オープンの存在価値は上がるはず

まずメルセデスは先代Eクラスのカブリオレ、A207ことW212世代のそれを、下のクラスつまり3代目Cクラス(W204)のプラットフォームから誂えた。Cクラスをエクステンション的に使ってEクラスらしい広々した後席を確保したことは、守りの決断だっただろうが、続く現行W205世代のCクラスでは同クラス初となるカブリオレ・モデルを登場させたのはご存知の通り。

こちらA205は、MLAというEクラスやSクラスと共通のモジュラー・プラットフォームをベースとする。Cクラスのサイズ感がひと昔前のEクラス並みになった今日び、先代とは逆にEクラス的な造り込みのよさがCクラスにまで降りてきたとも、解釈できる。その意味で、役物ではないメルセデスの中で、もっともお買い得なモデルですらある。都下では、C180アヴァンギャルドの白・黒・銀を隣近所で見飽きたメルセデス乗りが増えたのか、C180カブリオレ、もしくは1000万円超クラスながらC43Sカブリオレ辺りは、頻繁に見かける1台となっている。4座に加え、幌屋根でも密閉感と耐候性も高く、最終的に背中を押してくれるのだろう。

一方、Cクラス・カブリオレに3シリーズの牙城を攻め込まれたBMWも、手をこまねいてはいない。3シリーズに伝統のカブリオレが君臨していたのは5世代目3シリーズ(現行は7世代目)までで、このE93の需要は、現行4シリーズ(F30)と先代2シリーズ(F20)という、それぞれのオープンモデル(F33とF23)へ上下2分割された。とはいえ、いずれの車種もラインナップ上では上位移行で、前者は現行3シリーズ(G20)より熟成を経たプラットフォームを、そして後者はFF化した現行1シリーズ(F40)と一線を画すFRレイアウトを貫いた点で、ラグジュアリーなFRの4座カブリオレという、BMW的な流儀にはむしろ磨きがかかった。ただし、440iカブリオレは非Mスポーツ仕様でも諸費用込み1000万円超で、M4カブリオレ・コンペティションなら1500万円クラス。電動メタルトップとはいえ、E93の時代よりはるかに割高には感じる。その分、220iカブリオレという、より軽快な幌屋根で600万円前半の選択肢が並んでいる訳だが、そこでも納得しづらければ、同じグループ内にミニ・クーパーのコンバーチブルが400万円アンダーである点も、BMWグループの巧いところではある。もちろんFRにこだわらなければ、という条件つきだが。

一方でドイツ車以外に目を向けると、シボレー・カマロのコンバーチブルも4座で、650万円を切る価格設定が際立つ。ベースとなるのはサルーンでなく、SSやRSなど同じカマロのクーペしかないことを思えば、頑張っている。アメ車としては他に、キャデラックがATSクーペだけでなくコンバーチブルも設定してくれればよかったのに……という気もするが。

いわば4座オープンは、新車で買えるうちが花。中古になっても意外とコアな需要は切れず、じつは思われているより値は下がらない。それが4座カブリオレの安定度と存在理由であることは、先代イヴォークのコンバーチブルも証明している。今、中古市場に20台もないながら、うち3/4は600万円オーバーで取引されているのだ。

オープンのSUVという早過ぎたコンセプトを受け継ぐように、直近ではVWのT-ROCカブリオレに日本上陸の可能性が残されている。またメルセデスのCクラスは今秋にW206世代へフルモデルチェンジが予定されているし、BMWの4シリーズも来年に同じくフルモデルチェンジを迎える。現実の世界での外出制限を誰もが余儀なくされた今、同乗者を2人以上も伴って、開放的に外出できる4座オープンという乗り物の存在価値は、大きく跳ねているはずだ。

文・南陽一浩 編集・iconic

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油7円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

マツダ『ロードスター』リコール情報…障害物検知が正常に働かない
マツダ『ロードスター』リコール情報…障害物検知が正常に働かない
レスポンス
【累計生産100万台を達成】三菱 インドネシアの生産拠点 2017年4月から生産開始で約50カ国へ輸出
【累計生産100万台を達成】三菱 インドネシアの生産拠点 2017年4月から生産開始で約50カ国へ輸出
AUTOCAR JAPAN
あの“マールボロ・マクラーレン”よりはるかに長い43年のスポンサーシップに幕。IMPUL星野一義総監督「カルソニックは俺の人生そのもの」
あの“マールボロ・マクラーレン”よりはるかに長い43年のスポンサーシップに幕。IMPUL星野一義総監督「カルソニックは俺の人生そのもの」
motorsport.com 日本版
【アメリカ】トヨタの「小型SUVコンセプト」がスゴかった! 全長4.3m級ボディに“ゴツ顔”採用! “次期FJクルーザー”ともいわれた「FT-4X」とは?
【アメリカ】トヨタの「小型SUVコンセプト」がスゴかった! 全長4.3m級ボディに“ゴツ顔”採用! “次期FJクルーザー”ともいわれた「FT-4X」とは?
くるまのニュース
チェックするタイミングはいつ!? バイクのチェーンとスプロケの点検頻度は?
チェックするタイミングはいつ!? バイクのチェーンとスプロケの点検頻度は?
バイクのニュース
【スポーティグレード追加】ノート・オーラに「オーテック・スポーツ・スペック」 走りをチューン
【スポーティグレード追加】ノート・オーラに「オーテック・スポーツ・スペック」 走りをチューン
AUTOCAR JAPAN
疲労を軽減する「インテリシート」オペルが開発、新型SUV2車種に採用へ
疲労を軽減する「インテリシート」オペルが開発、新型SUV2車種に採用へ
レスポンス
ヤマハの電動アシスト自転車『PAS』、2025年モデル「11車種の特徴と違い」を比較チェック!
ヤマハの電動アシスト自転車『PAS』、2025年モデル「11車種の特徴と違い」を比較チェック!
レスポンス
トヨタ アルファード、ヴェルファイアに6人乗りPHEVを新設定
トヨタ アルファード、ヴェルファイアに6人乗りPHEVを新設定
Auto Prove
BYD、佐賀県初の正規ディーラーをオープン
BYD、佐賀県初の正規ディーラーをオープン
レスポンス
どんな由来があるのか知ってる? バイクにまつわる専門用語
どんな由来があるのか知ってる? バイクにまつわる専門用語
バイクのニュース
モデリスタやば!! 新型アルファード専用エアロが鬼カッコいい件
モデリスタやば!! 新型アルファード専用エアロが鬼カッコいい件
ベストカーWeb
ホンダ青山ビル、建て替えで2025年5月に業務終了 新本社は2030年完成予定
ホンダ青山ビル、建て替えで2025年5月に業務終了 新本社は2030年完成予定
日刊自動車新聞
車のナンバー 謎の「2784」どんな意味? 読めたら「天才」! まるでパズルのような難解「語呂合わせナンバー」に込められた思いとは
車のナンバー 謎の「2784」どんな意味? 読めたら「天才」! まるでパズルのような難解「語呂合わせナンバー」に込められた思いとは
くるまのニュース
【TAS2025】スズキ 「SUZUKI BOOST GARAGE」をテーマに参考出品を含め7台を展示
【TAS2025】スズキ 「SUZUKI BOOST GARAGE」をテーマに参考出品を含め7台を展示
Auto Prove
トヨタ『MIRAI』が動力源の水素キッチンカー、汐留クリスマスマーケットに出店へ…12月21-22日
トヨタ『MIRAI』が動力源の水素キッチンカー、汐留クリスマスマーケットに出店へ…12月21-22日
レスポンス
ついに1000万円超えた、トヨタ『アルファード』『ヴェルファイア』に初のPHEV…510万円からの入門車も
ついに1000万円超えた、トヨタ『アルファード』『ヴェルファイア』に初のPHEV…510万円からの入門車も
レスポンス
とうとう1000万円超え!! 新型アルファード/ヴェルファイアが衝撃の姿に
とうとう1000万円超え!! 新型アルファード/ヴェルファイアが衝撃の姿に
ベストカーWeb

みんなのコメント

9件
  • まずライターさんが買って1、2年乗ってから発信すべきでしょう。

    たぶんですが、同じことは書けないと思いますよ。
  • 無理に新型コロナウィルスに絡ませるのが不快。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

675.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

212.8531.0万円

中古車を検索
Cクラス カブリオレの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

675.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

212.8531.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村