現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 【第3回】森口将之の『もびり亭』にようこそ:モビリティデザインにカッコよさは必要か?

ここから本文です

【第3回】森口将之の『もびり亭』にようこそ:モビリティデザインにカッコよさは必要か?

掲載
【第3回】森口将之の『もびり亭』にようこそ:モビリティデザインにカッコよさは必要か?

多様性を増すモビリティデザイン

毎年秋から年末にかけては、さまざまな賞の発表が行われます。日本で唯一の総合的なデザイン評価・推奨のしくみであり、60年以上にわたり『Gマーク』とともに広く親しまれてきた『グッドデザイン賞』もそのひとつです。

【もうあの頃とは違う】ジャパンモビリティショーが担う役割とは

僕は2013年からこの賞の審査委員を務めてきました。グッドデザイン賞の審査委員会は分野別にユニットが組まれ、その中で審査が進められます。僕は一貫してモビリティユニットに属してきました。

つまり10年以上にわたり、最新のモビリティデザインと向き合い続けてきたと言えるかもしれません。そこで今回は、モビリティのデザインとは?というテーマで話を進めていきたいと思います。

今年度のグッドデザイン賞では、5700件を超える応募の中から、約1500件が受賞し、特に優れた100件が『グッドデザイン・ベスト100』となり、さらにその中から『グッドデザイン金賞』『グッドフォーカス賞』、そして『グッドデザイン大賞』が選出されました。

最近モビリティでグッドデザイン金賞を受賞したのは、自動倉庫『ラピュタASRS』、ハイブリッド乗用車『トヨタ・プリウス』、パーソナルモビリティ『ホンダUNI−ONE』などです。物流まで含めた広範なカテゴリーなのです。

たしかに最近はモビリティデザインというと、乗り物それ自体だけではなく、それを使ったシェアリングなどのサービス、MaaSをはじめとするアプリを使ったサービスなども含まれるようになっています。

デザインの両輪は『機能』と『官能』

とはいえ、あまり範囲を広げると分かりにくいかもしれないので、ここでは乗り物そのものに絞って見ていきます。その場合、モビリティのデザインには機能と官能の両輪があると思っています。これは審査の現場でも話題になることです。

機能の中には使いやすさや走行性能のほか、安全性能や環境性能も含まれます。一方の官能は人の気持ちを動かす要素、つまり美しさやカッコよさです。

クルマの中で機能を最優先した存在と言えば、厳しいレギュレーションの中で最速を目指すF1マシンが思い浮かびます。F1マシンを美しい、かっこいいと思う人も多いかもしれませんが、それは機能美というものです。スポーツカーも運転の楽しさを味わうために設計されたので、機能美と言えるでしょう。

逆に官能を優先したクルマとしては、ラグジュアリークーペが思い浮かびます。その時代にふさわしい走行性能や安全性能、環境性能を押さえつつ、エクステリアもインテリアも美を極めたクルマたちです。もちろん2ドアのほうが官能度は上になるでしょう。

それ以外の乗り物は、それぞれの目的に応じて、機能と官能をバランスさせています。クルマで言えば、トラックやバスは機能重視で、乗用車はミニバンや軽自動車が機能寄り。そこにスポーティやラグジュアリーという要素が入るにつれて、官能重視になっていくのではないでしょうか。

鉄道についても同じように、もっとも機能的なのは貨物列車で、旅客列車では通勤用車両がそれに近く、特急用車両は官能的な部分が大きい、となりそうです。ところが最近、この考えを覆されるような出来事がありました。

機能目的なモビリティに官能を求めた納得の理由

鉄道デザインの未来を考える場を提供する活動グループで、僕も関わっている『レイルウェイデザイナーズイブニング(RDE)』が、LRTが開業したばかりの栃木県宇都宮市で開催した第10回RDEフォーラムで、『LRTはカッコよくあるべき』という発言が、整備や運行に携わる複数の方から出たのです。

道路交通で言えば、LRTは路線バスに近い存在です。なので、カッコいいことが大事という言葉に驚きましたが、理由を聞いて納得しました。

福岡県のある都市で、スタイリッシュな新型車両が入ったことで市民がお洒落になっていったという話を宇都宮市長が聞いたことがきっかけで、誰もがあの電車に乗ってみたいと思わせるような、流線型で近未来的な形をデザイナーにお願いしたそうです。

具体的には、既存の設計をベースにしつつ、先頭を1.5m前に出しました。そのままではカーブで先端が架線柱などに接触するので絞り込み、ピラーは先端に行くほど細くして、運転士の視界を確保したそうです。

LRTの利用者数が予想以上となった理由のひとつは、この流線型にあり、箱型だったら誰も見向きもしなかっただろうという声もありました。

乗ってみたい形。これこそがモビリティデザインの原点であり究極であると感じました。今の日本では、本来は自由度の高い乗用車も、箱型が多くなっています。自分の気持ちを高め、まちの景色を美しくするためにも、もっと多くの人が、モビリティのデザインにこだわってほしいと思っています。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油7円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

過走行車は避けるべき? 電気自動車はガソリン車より低耐久? 英国の中古車事情を調べてみた
過走行車は避けるべき? 電気自動車はガソリン車より低耐久? 英国の中古車事情を調べてみた
AUTOCAR JAPAN
大人レゴの秘密 3800ピースで作る究極のマクラーレン ドライブモードも再現
大人レゴの秘密 3800ピースで作る究極のマクラーレン ドライブモードも再現
AUTOCAR JAPAN
「ホンダキラー」として登場したサターン GMの栄光と凋落 歴史アーカイブ
「ホンダキラー」として登場したサターン GMの栄光と凋落 歴史アーカイブ
AUTOCAR JAPAN
【軍用車に起源を持つ本格クロカン】今一番ホットなジャンル!ランクル250とディフェンダーをオンロードで乗り比べ
【軍用車に起源を持つ本格クロカン】今一番ホットなジャンル!ランクル250とディフェンダーをオンロードで乗り比べ
AUTOCAR JAPAN
ロータス「エヴァイヤ」ついに納車開始! 2039馬力のEVハイパーカー、4年遅れでデリバリー
ロータス「エヴァイヤ」ついに納車開始! 2039馬力のEVハイパーカー、4年遅れでデリバリー
AUTOCAR JAPAN
【13年間で累計400万台突破】2011年12月の初代Nボックス誕生から ホンダNシリーズの全記録
【13年間で累計400万台突破】2011年12月の初代Nボックス誕生から ホンダNシリーズの全記録
AUTOCAR JAPAN
長寿の秘訣は? エンジン交換なしで走行距離160万km(100万マイル)走ったクルマ 20選
長寿の秘訣は? エンジン交換なしで走行距離160万km(100万マイル)走ったクルマ 20選
AUTOCAR JAPAN
【限定車も同時発表】フィアット・ドブロ/ドブロ・マキシの最新モデル 限定80台のローンチエディションも
【限定車も同時発表】フィアット・ドブロ/ドブロ・マキシの最新モデル 限定80台のローンチエディションも
AUTOCAR JAPAN
ルノー小型EV開発、日産との提携に依存? 次期「トゥインゴ」で右H導入コストに懸念
ルノー小型EV開発、日産との提携に依存? 次期「トゥインゴ」で右H導入コストに懸念
AUTOCAR JAPAN
2026年、EVのアルピーヌA110は「ガソリン車よりも軽量」に ブランドの要
2026年、EVのアルピーヌA110は「ガソリン車よりも軽量」に ブランドの要
AUTOCAR JAPAN
らしさが詰まった「5ドア」 ミニ・エースマン Eへ試乗 1クラス上のインテリア 強みが沢山
らしさが詰まった「5ドア」 ミニ・エースマン Eへ試乗 1クラス上のインテリア 強みが沢山
AUTOCAR JAPAN
「オープンカー」はやっぱり魅力的! ミニ・クーパー S コンバーチブルへ試乗 当面エンジン版のみ
「オープンカー」はやっぱり魅力的! ミニ・クーパー S コンバーチブルへ試乗 当面エンジン版のみ
AUTOCAR JAPAN
5Nオーナーが曲川で「非日常」を味わう【ヒョンデ・アイオニック5長期レポート7】
5Nオーナーが曲川で「非日常」を味わう【ヒョンデ・アイオニック5長期レポート7】
AUTOCAR JAPAN
【EVケータハム】プロジェクトVの試作車 台湾シン・モビリティー社の液浸冷却バッテリーパックを採用
【EVケータハム】プロジェクトVの試作車 台湾シン・モビリティー社の液浸冷却バッテリーパックを採用
AUTOCAR JAPAN
【まるで50:50のFRマシン】マクラーレン・アルトゥーラ・スパイダーを全開にしてわかった高次元の走行性!
【まるで50:50のFRマシン】マクラーレン・アルトゥーラ・スパイダーを全開にしてわかった高次元の走行性!
AUTOCAR JAPAN
【追記あり】BYD、三菱自にまさかの低評価 コバルトなどEV用バッテリー材料調達で「人権」リスク指摘も
【追記あり】BYD、三菱自にまさかの低評価 コバルトなどEV用バッテリー材料調達で「人権」リスク指摘も
AUTOCAR JAPAN
小ボディに大エンジン:オースチン・ヒーレー3000 過去と現代が融合:トライアンフTR5 直6の英国車たち(3)
小ボディに大エンジン:オースチン・ヒーレー3000 過去と現代が融合:トライアンフTR5 直6の英国車たち(3)
AUTOCAR JAPAN
【クロストレックに最上級モデル】スバル・クロストレック eボクサーを発表 アイサイトXも採用
【クロストレックに最上級モデル】スバル・クロストレック eボクサーを発表 アイサイトXも採用
AUTOCAR JAPAN

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

413.0838.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

350.0350.0万円

中古車を検索
テーマの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

413.0838.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

350.0350.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村