この記事をまとめると
■ホンダのハイブリッドAWD各車に雪上で試乗
■フィットとヴェゼルは異なるAWDシステムを採用
■意外にも実用車感のあるフィットのAWD車が優れていた
ホンダの電動AWD車に一気乗りできる機会が得られた!
ホンダから木曽福島のワインディングで雪道試乗会が開催されると聞いて、WEB CARTOPの石田キャップと乗り込んだ。というか、私は栃木の山の中から日産ノートe-Powerで木曽まで自走。ロングツーリングだけど、ドライブはホントに楽しい。グーグル先生に道先案内をお願いすると、なんと長野経由で380km。しかし、プロパイロットが付いているので運転はラクだった。
ノートのロングドライブは木曽福島の温泉宿がゴール。高速道路は100%ドライで、一般道も雪はなかったのでドキッとするやばいシーンはない快適な一日だった。燃費は16.5km/L。ハイオクがリッター200円時代に突入したので、燃料代は気になるところだ。ところで、ノートには某タイヤメーカーのスタッドレスが装備されていたが、舗装のつなぎ目などの小さな段差での乗り心地はあまりよくない。スタッドレスだからしょうがないという気持ちもあるが、もう少しタイヤとしての快適性も忘れないでほしい。アイスバーン専用タイヤでは使いにくいのだ。
ボヤキはこのくらいにして、本題に入ろう。今回ホンダが用意したコースは木曽の御岳山のワインディング。この山では、昔噴火が起きたことを思い出すが、じつは数年前にフェラーリやランボのAWDをテストしたことがある。かなり高速のコースだったと記憶している。
試乗会は中腹の御嶽山レストハウスが基地となった。テスト車両はホンダの電動車両(e:HEV)のAWDをテストすることが目的だが、用品で知られるホンダアクセス社が開発したモデューロXというコンプリートカーのヴェゼルもテストする。さらに、特設ジムカーナコースではS660もテストできた。好天に恵まれた御嶽山では、時間を忘れるほど楽しく走れた。ちなみにモデューロXのリポートは第2弾として展開する予定なので、今回はフィットとヴェゼルのe:HEV・AWDについてお伝えしたい。
枯れた技術のビスカスカップリングがいい!
まずはフィットのAWDを試す。二年前の冬に鷹栖のテストコースで初試乗したことがあるが、メカニズムはトランスファーにビスカスカップリングを使っている。少し説明が必要だが、数十枚の薄い多板を満たすようにシリコンオイルを封入したビスカスカップリングのトランスファーは、一時ポルシェ911カレラ4も採用するほど、昔のスター的トランスファーだったが、前後輪のタイヤの回転数差でパッシブにトルクを伝達するビスカスは、電子制御時代には過去の技術となってしまった。
しかし、ホンダはフィット用のトランスファーを色々と検討しているとき、モーターと組み合わせると、昔のビスカスではできなかった緻密な制御ができることを発見した。コンパクトで軽量ボディのフィットには、シリコンオイルの剪断抵抗でトルクを伝えるメカニズムでも、十分なポテンシャルを持っているし、何もよりもインプット側はモーターなので、エンジンの回転数を制御する従来型ではないので、非常に緻密にビスカスを使えると判断した。エンジンのトルクを伝えていた昔のエンジン車のビスカス四駆とは異なり、素早く緻密に制御できるモーターの特性は、紛れもなくビスカスカップリングの性能を蘇らせたのである。
だからなんちゃって四駆なんて悪口をいう必要はなく、FFベースのAWDという駆動方式と見事な連携で、非常に走りやすかった。
世界にはさまざまな四駆が存在するが、レオーネ四駆の産湯に使って育った私は、前輪駆動ベースのAWDが理想的であると、経験則から信じている。その意味では、機構的に分析すると、左右対称のスバルとアウディのAWDが松、FFベースのAWDが竹、FRベースのAWDは梅ではないだろか。しかし、こうした状況は、藤井聡太棋士の将棋でもわかるように、ときには定石を覆す技術も登場する。そんな予想外の、いや期待以上の走りを示したのが、このビスカスとモーターのフィットAWDなのである。
初代フィットは1モーター+DCTのギヤボックスを備えたビスカスAWDだったが、今のフィットはシリーズハイブリット(高速ではパートタイム)なので、モーターが駆動力の原資なのだ。だから同じビスカスでも、最新フィットは先代とは異なる特性をもつ。
もう少し詳しくメカニズムを説明すると、主駆動輪はフロントタイヤだが、リヤタイヤよりも多くフロントタイヤが滑ると、ビスカスはリヤタイヤにトルクを伝える。だが、最新フィットはエンジンで発電した電気でモーター駆動する。もしタイヤが滑ると、モーターはダイレクトに検知できるので、電気制御はすこぶる早い。エンジンやギヤボックスというヒステリシスの多いシステムを経由しないので、モーターはタイヤの滑りをすぐに制御できるのだ。
駆動方式は、滑りやすい路面では圧倒的にFFが有利だ。前足でクルマを引っ張るので、方向性はFRよりも数段優れている。FRベースのAWDはどうか? という疑問もあるが、同じAWDでもFFベースは走りやすい。ということで、今回試乗したコースではFRベースのAWDがなかったが、フィットの走りは光っていた。
雪道で大切なことは二輪駆動か四輪駆動かということよりも、タイヤと路面がねちっこく接地できるサスペンションが実現されているかどうかだ。というのは雪道は例外なく凸凹しているので、タイヤと路面の接地性は、スノードライブの一丁目一番地なのである。その点でもフィットのサスペンションは合格なのである。本当は先代フィットと同じパワートレインを持つHEV・AWDのセダンであるグレースがオススメだが、ホンダは生産をやめてしまった。ということで、コンパクトカーのベストAWDはフィットで間違いなだろう。
積極的にリヤに駆動を配分するヴェゼルは操縦性が難しい!
次にテストしたのがヴェゼル。FFベースのシリーズ・ハイブリットという点ではフィットと同じだが、AWDシステムは異なる。SUVということもあり、より重い車重にも耐えられるリアルタイムAWDを採用している。メカニズム的には、ビスカスカップリングではなく、湿式多板油圧クラッチを電子制御で動かすタイプで、メリットはタイヤが滑ってからトルクを伝えるオンデマンド式ではなく、積極的にトルクをリヤに伝えることが可能だ。ゆえに、リアルタイムという名前がつく。この方式はCVにも使われており、グローバルに見るとホンダの主力システムだ。
最近はホンダのヴェゼルを町なかでもよくみる。とくに郊外にドライブに行くほど、ヴェゼル比率は高い。きっとユーザーはコロナ禍において、家族と安心してドライブしているのだろうと想像する。サイズ的にもあまり大きくなく、それでいてSUVとしての風格もある。パワートレインはシリーズ・ハイブリットなのでモーターで走るEV風の新しい感覚だ。カーナビも使いやすいし、レベル2相当の運転支援も使いやすい。 気になるのはSUVとしての四駆性能だ。と思っていた矢先、ヴェゼルの雪道テストができると聞いて、木曽福島まで乗り込んだのだ。
その第一印象は、フィットよりも力強い走りが可能だと言いたいが、エンジンパワーがもう少し欲しい。というのは、モーターへの電力はエンジンから供給されるので、100kWくらいのエンジンパワーがほしいと思った。
また、トルク配分はリヤのトルクをあまり大きくするとコーナーの立ち上がりで、プッシュアンダーステアとなりやすい。テストした路面特有の問題なのかわからないが、もっと、フロントタイヤで引っ張ったほうが、乗りやすいのではないだろうか。
ヴェゼルのサスはマイルドなので、タイヤと路面の接地感は合格だが、ややバネ上のボディの動きが大きかった。今回はラリーコースのような厳しい走行条件だったので、より完璧な操縦性が求められたが、標準的な雪道なら誰が乗っても安心して走ることができると思う。
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