「ファブリック」の復権
コスト削減は聞こえの良い話題ではない。ジャーナリストは、「コスト削減と値上げを目的として、意図的に新型車の性能を悪くしました」というプレスリリースを受け取ることはまずない。
【画像】「高級車=レザー」とは限らない! 居心地の良いインテリアの好例【ボルボEX90を写真で見る】 全41枚
しかし、サステナビリティ(持続可能性)は売れる。少なくとも自動車メーカーはそう考えている。「レザーをビニール素材に置き換えました。ビニールの方が安価だからです」などとは言わない。
代わりにこう言う。「リサイクルボトルから作られたヴィーガン素材のSensitastic張り地を採用した新開発の◯◯です。牛たちのことを考えない人はいないでしょう?」
レザーは食肉生産の副産物であることが多く、それ自体が目的ではないが、そんなことは気にしない。
筆者は、レザーシートから離れるのは良いことであり、デザイナーの創造性を刺激するだろうと考えていた。というのも、正直なところ、筆者はレザーが過大評価されていると思うからだ。冬は寒く、夏は暑く、グリップ感もあまり良くない。布製よりも劣ることは確かだ。その代わりに、ビニールが復活した。
しかし、希望の光も見え始めている。それは、新しい素材に挑戦しようという意欲的なデザインチームがいくつか存在していることだ。最も著名な推進者の1つがボルボで、数年前からウール混紡の内装材を一部のモデルに設定しており、価格もレザーよりは抑えている。
先日借りたXC40にも装備されていたが、素晴らしいと思った。ボルボのシートはとにかく快適なことで知られているが、通気性のある天然素材のファブリックと組み合わせることで、さらに居心地の良い空間となっている。
また、真っ黒には染められていないので、多くの新型車の陰気な内装とは対照的だ。
自宅の居間の壁を黒く塗る人はあまりいないだろう。それなのに、なぜクルマの内装は黒なのか? ウール素材の杢調の白やグレーは、レザーのフラットな表面よりもずっと面白い。
フォルクスワーゲン・グループの一部のブランドも、ベロア素材のマイナーな復活の波に乗っているようだ。スコダのスパーブやコディアックでは、ダークグレーのソフトファブリックが標準装備されており、より高価なグレードではレザーが使われている。また、クプラのボーンでも、最も高価なV3グレードで同様の素材が採用されている。
布地とレザーのどちらにするかという問題は、世代を超えて繰り返されるものなのだろうか。
何と言っても、初期の自動車では、使用人の運転手が耐候性のあるレザーシートに座り、オーナーはキャビン内の布製ベンチシートで贅沢に過ごしていた。
しかし、ある時期からレザーは贅沢品となった。筆者の両親もレザーシートのないクルマには興味を示さなかっただろう。一方で、筆者がこれまで乗ったクルマのほとんどにはレザーシートが採用されていたが、初めて購入したクルマ、ベロアが張られたベース仕様のE30世代BMW 316iツーリングにはとても愛着がある。
だから、ボルボ、スコダ、クプラはお見事だと思う。トレンドによるものなのか、サステナビリティを求める動きによるものなのかはわからないが、これがより面白い内装材の時代の始まりとなることを願っている。
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