2021年のトヨタは、ランドクルーザー・アクア・GR 86などがモデルチェンジし、カローラクロスが誕生した。新型車が登場するいっぽうで、姿を消したクルマもある。
プレミオ・アリオン、そしてプリウスαという、トヨタの販売に大きく貢献した3台が、生産終了となった2021年。この3台の消滅からは、時代の変化やニーズの変化を大きく感じる。3台の功績を振り返りながら、変化を続けるクルマへのニーズを考えていく。
文/佐々木 亘、写真/TOYOTA
[gallink]
■当たり前だった「5ナンバーセダン」が消えかけている
2021年3月末をもって生産終了したトヨタ アリオン。兄弟車であるプレミオも同時に姿を消した
セダンの売り上げは全盛期に比べれば下火だが、いつの時代も底堅い。しかし、代表的なクラウン・カムリ・カローラなどを残し、ここ数年でトヨタのセダンの多くが姿を消した。
高級車や大型車の多いトヨペット店・トヨタ店で、小型車販売の下支えをしていたプレミオ・アリオンは、全チャネル併売化後も、兄弟どちらかが残るだろうと思っていた。しかし、両車フェードアウトしたのには驚いた。
カローラは3ナンバー化し、5ナンバーセダンは商用量販をメインにしたアクシオだけだ。日本が大切に守ってきた5ナンバーセダン文化の終焉が、ここに見える。
一時は、クルマの代名詞でもあった5ナンバーセダン。初めて買うクルマも、家族で乗るクルマも、セカンドライフで乗るクルマも、ほぼすべてが5ナンバーセダンで事足りた。
そんな時代に、カローラでは物足りない、でもクラウンだと行き過ぎる、こうしたユーザーが少しだけ贅沢をした、プレミオ・アリオンはよく売れたセダンだ。
経済の再生、社会不安の解消が進んでいけば、もう一度セダンを必要とする時代が来ると思うのだが。その時に5ナンバーセダン、プレミオ・アリオンの姿がないのは、少々寂しく思う。
■ユーザーに我慢をさせないクルマをつくる
2021年3月末をもって生産終了したトヨタ プリウスα
プリウスの派生車として登場したプリウスα。プリウスにはない居住性の高さと3列シートを売りに、販売を拡大した。一時は年間10万台以上を売り上げた超人気車種だ。
30系プリウスは、燃費のよさが際立ったが、クルマの質感や利便性という面では難があった。ハイブリッドを選ぶために、我慢を強いられたユーザーへ向けて登場したのがプリウスαなのである。
プリウスαは、プリウスの全長を伸ばし、Cピラーの角度を立ち上げ3列シートを配置した。バネ上制振制御を初めて搭載し、プリウスの課題であった車内空間はもちろん、乗り心地の向上にまで手を加えている。
また、ハイブリットの汎用性を一気に高めたのもプリウスαの功績だ。プリウスαの登場後、ミニバン・SUV・コンパクトにまで、ハイブリッド車は広がりを見せ、トヨタ車であればハイブリットであることは当たり前と言える状態になった。
そして、車種の選択肢が広くなり、ハイブリットで車種選びを我慢することがなくなったユーザーは、次第にプリウスαから離れていくことになる。
派生車が大活躍することが珍しいトヨタで、期待以上の働きをし、今のハイブリッド帝国を作り出すきっかけとなったプリウスαは、トヨタの大きな功労車だ。
■転機は2011年! この先ユーザーのニーズはどう変わる?
2001年にコロナの後継として登場したトヨタ プレミオ。2021年3月末をもって生産終了した
プレミオ・アリオン、そしてプリウスαは、売る側にとっても扱いやすいクルマだった。特に2010年代の初め、3台の活躍には目を見張るものがある。
2010年から現在までの約10年間で、クルマに対するユーザーのニーズが大きく変わっていったように筆者は思う。性能の高さ、外観のカッコよさ、内装の豪華さなどを競った1990年代から、2000年以降はクルマ選びが堅実になったように感じるのだ。
ターニングポイントとなったのは東日本大震災。以降、被災地を中心にクルマを自由に選べない時期が続いた。ユーザーがクルマに対し、ステータス性を求めることなく、単純な移動手段としてクルマを確保しなければならない状況となる。
特に筆者は被災地・宮城で仕事をしていた。「好きなクルマではないけど、仕方なしにこのクルマを買ったんだ。」というユーザーを何人も知っており、クルマ選びの軸が変わったことを現場で強く感じていた。
一度捨ててしまったクルマへの想いは、簡単に回復できるものではない。その後も2010年代は全国で地震・台風などの被害が相次ぎ、クルマを失う方が多かったと思う。災害が発生する度に、なりふり構わず目の前にあるクルマを選ばなければならない瞬間がやってくるのである。
震災以降、新車・中古車を販売していると「クルマは乗れればいい、こだわりはない」と答える人が増えた。クルマは個人が持つステータスの対象ではなくなり、より身近なスマホなどのIT機器へステータスの象徴が変わってしまったのだろう。
写真のハリアーやアルファードなどの上級クラスの車にはステータス性を求めるニーズが一定数ある
近年、クルマにステータス性を求める動きは回復してきたように思うが、上級クラスのクルマに限定されているように感じる。ハリアー、アルファードなどにステータス性を求めるニーズはあるが、中間層のクルマに対してステータス性を重視する動きは小さい。
経済的な格差が広がっている現代社会で、クルマの売れ方にも、その影響は大きく感じられる。
移動手段として充分な、安くてそこそこなもの(コンパクトカーやスモールミニバン)と、権威性を強く感じるもの(ラージサイズのミニバンやSUV)に販売は二分化され、中間層のクルマたちが目立たなくなっているのだ。こうした傾向は、今後も続いていくと思う。
プレミオ・アリオンやプリウスαといった、今年消えたクルマは、こうした中間層の代表的車種だ。時代の変化によりユーザーの嗜好が大きく二つに分かれ、かつての人気車種は不要となってしまったのだろう。
* * *
さまざまなことがあった2021年。一年を振り返るなかで年末は、消えていったクルマ達に思いを巡らす時間を取ってみてはどうだろうか。消滅したクルマを見ると、時代の動きが見えてくる。
プレミオ・アリオン・プリウスαが支えてきた自動車ユーザーを、次はどのクルマが支えていくのだろうか。今、その候補は非常に少なくなっている。
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みんなのコメント
走る、曲がる、止まるといった車の本質部分は軽視されがち。
目がいくのは広いか狭いか、豪華か質素か、といった表面的な部分だけ。
自動車メーカーも良いクルマなんか作るより見た目だけ飾れば売れるんだから
ラクなもんだよね。
プレアリは、会社の車で準備されていて、実際乗ってみると、これといった欠点もなく、偽木目もそれなりの質感もあり問題なくいい車。だけど、我が家の車として購入するかといえば、対象になるようなモデルではなかった。訴えるものがなかった。