■世界EV市場の先頭を走ったアイミーブが生産終了へ
三菱が世界で初めての量産電気自動車(EV)として2009年に発売した「i-MiEV(アイミーブ)」が、2021年3月に販売を終了します。
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ほぼ同時期に量産を始めた日産「リーフ」は2代目へと進化しましたが、アイミーブはフルモデルチェンジもなく、現時点で後継車がなく姿を消します。
また、小型のEVでは、トヨタの2人乗り「シーポッド」(消費税込165万円から171万6000円)が注目を集めています。
こうした軽自動車よりひとまわり小さい超小型車が、アイミーブのような軽EVに変わって、今後は庶民の生活車の主役になるのでしょうか。
まずは、EV市場におけるアイミーブの歩みを振り返ってみたいと思います。
アイミーブは、軽自動車「i(アイ)」をベースとしたEVです。
その生い立ちについて、三菱自動車(三菱)を含む三菱グループ各社の幹部らのなかでさまざまな協議があったといわれています。
結論からいえば、当時の三菱にとって、それまで蓄積してきたEV関連技術を思い切って量産化し、世界EV市場の先頭を走るという大英断を下したことになります。
そのうえでアイミーブ開発陣は、当時はまだEVに対する産業界での理解が浸透していないなか、電機業界とのあいだで多大な努力を積み重ねて、アイミーブ量産を実現しました。
そして三菱は日本のみならず、世界各国で、当時スマートグリッドと呼ばれた電力網システムの実証試験でアイミーブを投入してきました。
また、アイミーブは新時代の三菱の象徴として、世界各国のモーターショーにも登場。その際、各地で報道陣向けに公道試乗もおこない、筆者(桃田健史)もパリや、ニューヨーク・マンハッタンでアイミーブを走らせています。
当時、といっても、現時点(2021年1月)まで10年ほどしか経っていませんが、世界各地の小規模企業が製造するEVは自動車として基本的な走行性能があまり高くありませんでした。
そうしたなかで、アイミーブの完成度は相対的に高く、ズッシリとしながらも適度な加速感が上級な雰囲気を醸し出していました。
まだテスラが「モデルS」の量産前で、初期モデル「ロードスター」のみを販売していた時代であり、三菱が日産とともに世界のEV市場をけん引していくような勢いを感じたものです。
この時点で、筆者を含めて報道陣や自動車業界関係者のなかで、巨大な時価総額を誇る現在のテスラの姿を想像した人は誰もいなかったと思います。
その後、アイミーブは改良が進みましたが、フルモデルチェンジをすることはなく、その電動化技術が「アウトランダーPHEV」へと応用されるという道を進みます。三菱としては、電動化戦略の軸足をプラグインハイブリッドにシフトしたということです。
こうしたアイミーブの軌跡を見ると、決して軽EVという存在ではなく、世界市場でのEV本格普及期に向けた最終準備期間を下支えした、世界自動車産業史のなかでも貴重なモデルだった思います。
アイミーブ開発に携わった多くの人々に、感謝の意を伝えたいと思います。
なおアイミーブは、2018年4月の一部改良でボディサイズが拡大され、軽自動車から普通車へと変更されました。
■小型EVはこれからどうなる?
アイミーブは軽自動車「アイ」を母体とした車体を活用していますが、そもそもが「軽のEV」という想定ではありません。
あくまでも、実際の利活用と製造コストの面からアイを使ったという解釈であり、アイを基本設計した時点でEV化を想定していたとは考えにくいと思います。
一方、セブン-イレブンの配達などで使われているひとり乗りのトヨタ「コムス」や、新登場したシーポッドのような超小型モビリティは、車両区分として、第一種原動機付き自転車(ミニカー)のほか、原動機の定格出力、最高速度、車両の寸法によって軽自動車(型式指定車)、および軽自動車(認定車)としています。
これは、あくまでも従来の軽自動車として考え方を広く解釈しているものであると、長年に渡り超小型モビリティ関連の現場取材してきた筆者は思います。
こうしたアイミーブのこれまでの歩みや超小型モビリティの現状、さらに菅政権の肝入り政策のひとつ「グリーン成長戦略」において、菅総理が2021年1月の通常国会・施政方針演説で明言した「2035年までに(軽を含む)新車電動化100%」という大きなトレンドなどを鑑みると、今後は単なる「軽のEV化」が進むのではなく、電動小型車(小型EV)という新しい市場が徐々に大きくなる可能性があると思います。
そのなかには、三菱と日産が軽自動車の企画開発を共同でおこなう企業・NMKVが量産化を前提に企画し、2019年東京モーターショーで公開された「IMk」のようなモデルも含まれます。
とはいえ、IMkはアイミーブの後継ではなく、アイミーブが築いたEV市場基盤の上で生まれた新しいモビリティという解釈だと思います。
では、小型EVは日本でいつ、どのようにブレイクアウト(一気に普及する)のでしょうか。
キーポイントとなるのが、維持・管理コスト、そして「社会の変化」だと思います。
まず、維持・管理コストについて、車両サイズによらずEVに対しては、環境への影響、そして関連事業者の収益性を考慮し、トータルパッケージ化することが重要です。
この考え方は、たとえば欧州トヨタが2020年12月に、次世代EVプラットフォーム「e-TNGA」を紹介するなかで詳しく説明しています。
小型EVでも、こうした考えと同じく、製造、販売、修理、転売、廃棄というクルマの一生のなかで、メーカー、ディーラー、ユーザーがどう関わり、ユーザーの負担額がどうなるのか。
スマホが普及したように、小型EVの利活用パッケージは今後、さまざまなカタチで登場すると思います。たとえば、電気代・ガス代・データ通信費などとのパッケージです。
そして、小型EV普及でもっとも重要な点は「社会の変化」です。
現在、軽自動車は全国各地の幅広い年齢層にとって日常生活の一部であり、こうした状況が計画的な充電を伴うEV化によって、いきなり大きく変わることは考えにくいと思います。
むろん、都心と地方など地域の社会背景によっても、EV化への対応は大きな差が出るはずです。
そのうえで、最近よく使われる「ニューノーマル」という、人々の行動変容が、小型EV普及で必要かどうなのか。
「小型EVありき」ではなく、これからの「日本社会の進むべき姿ありき」という視点が大事だと感じます。
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みんなのコメント
アイ登場当時の雑誌で普通に「将来のEV化を見据えた」うんぬんの記事がありましたけどね。
実際フロアにバッテリーを収めるスペースが用意されていて車高に比べて室内高がさほどでもないとか車重が無駄に重くてターボじゃないとまともに走れないとか…
アイは当時唯一の後輪駆動軽乗用車であるにも関わらずクルマ好きからはそっぽを向かれていた残念な記憶があります
最近、アイの中古車を好きなときに使える機会を得て、あらためて考えることができたが、悩ましい車だと思う。
前2席だけを使用し、荷物もあまり多く積まず、後輪駆動の面白さと、このデザインを買うなら、購入する理由はあっただろう。
しかし、今や軽自動車ユーザーは「これ1台で生活のすべてを賄う」ことを考えて購入する人が圧倒的に多い。N-BOXが最も売れる車であることがその証拠だ。
アイのような車は主流にはなれない。ちょっと変わった車に乗りたい人だけが購買層だ。
だとしたら、電動ユニットで大きく普及させたいと考えるなら、搭載するべき車種はこれではなかったはずだ。
この斬新に見えるデザインコンセプトも、初代エスティマに源流があることに気付いて興醒め。
経年劣化も早く、品質がイマイチ。
あまり売れなかったのも仕方ない。