日産は日本国内に5つの完成工場と2つのエンジン工場がある。もちろん、海外でもアメリカをはじめ、イギリス、タイなど20カ国以上の国でクルマを生産している。イギリスにあるサンダーランド工場もその一つ。
2021年12月にこのサンダーランド工場で、35年間の生産を祝って1台のスペシャルモデルが生産された。ここでは、このサンダーランド工場35周年を祝い、EV化されたブルーバード「New bird」について紹介しつつ、旧車のEV化についてふれてみたい。
クルマ界のプレステとなるか!? ソニーのEV参入で国産車メーカーに与える影響
文/萩原文博、写真/NISSAN、萩原文博
[gallink]
名車ブルーバードEV「New bird」はどのようなモデルなのか?
サンダーランド工場35周年を記念して制作された「New bird」
英国にあるサンダーランド工場は1986年9月に開設され、現在も稼働している工場だ。開設からの総生産台数は1,050万台を超えている。1986年からサンダーランド工場に勤めているスタッフが現在もリーフの生産に取り組んでいる。
サンダーランド工場で最初にラインオフされたクルマがブルーバードである。その最初に生産されたブルーバードは地元の博物館の展示の目玉となっている。ブルーバードは1986年~1990年にかけて生産されたモデルで、当時は1台の車を製造するのに約22時間以上もかかっていた。
しかし、現在は製造技術の飛躍的な進歩によってEVのリーフの生産時間は10時間に短縮。すでに20万台以上が製造されている。
そのサンダーランド工場の35周年記念で特別に作られたモデルが「New bird」だ。この最初に製造したブルーバードにリーフの100%電気ドライブトレインを搭載したEVだ。
日産サンダーランド工場の製造担当部長であるアラン・ジョンソンは、この「New bird」について、「サンダーランド工場の過去と未来をすべて表していて、エキサイティングな電化により、カーボンニュートラルな未来に向けて前進する道をリードしている」と語っている。
「New bird」は、イングランド北東部のダーラム(サンダーランド工場からわずか15マイル)に拠点を置く家族経営の会社である、キングホーンEVによってプロジェクト管理された。キングホーンEVは、リーフのモーター、インバーター、バッテリーを使用し、クラシックカーをフルエレクトリックに変換することを専門とする会社だ。
キングホーンEVのジョージ・キングホーン氏は、「日産がサンダーランド工場を開設したとき、それは北東部に大きな経済的後押しを与えました。電気自動車は未来だけではなく、今です! 古いクルマをEVに変換することで、これらの象徴的なビンテージモデルを日常的に使用できます。運転も同じように楽しく、信頼性が高く、運転時に有害な排出物を発生させないことが重要です。」と語っている。
EV化されたブルーバード「New bird」にはリーフのドライブトレインを搭載
「New bird」は、EV化に必要なリーフのドライブトレインを搭載するために、元々搭載されていたエンジンとギアボックスが取り外された。そして、リーフ用のモーター、インバーター、40kWhバッテリーパックが取り付けられ、バッテリーモジュールがエンジンベイとブーツの間で分割され、重量配分が最適化されている。
さらに、パワーステアリング、ブレーキ、暖房システムに更新と変更が加えられ、電動で駆動できるようになっている。バッテリーパックからの追加重量をサポートするためにカスタムサスペンションも取り付けられた。
「New bird」の充電用コネクターは、元の燃料フラップに設置。バッテリーは最大6.6kWで再充電でき、元のドライバー機器パネルがEVシステムに接続されているため、燃料計でバッテリーの充電状態を表示可能。1回の充電からの車両の航続距離は約130マイルと推定。0-100km/h加速は15秒弱となっている。
フィアットパンダをEV化! 旧車をEVにするにはいくつもの壁があった
コンバートEVを手掛けるオズモーターズによりEV化されたフィアットパンダ
今回、EVへの変更を行った、キングホーンEVのジョージ・キングホーン氏が言っているように、古いクルマをEVに変換することで、ビンテージモデルを日常的に使用できること。そして運転もエンジン搭載時と同じように楽しく、運転時に有害な排出物を発生させないことが可能だ。
そこで、実際に古いフィアットパンダをEV化して乗っているユーザーに話を聞いてみた。古いフィアットパンダをEVコンバートして乗っているのは、フリーライターの籠島康弘さん。自動車だけでなく、住宅なども執筆するオールラウンダーのライターだ。
EVパンダは、神奈川県にあるオズコーポレーションで制作した。当初はアメリカ製のモーターを使う予定だったそうだが、ミッションはMTが条件だった。そこでパンダのMT車を探していると、このモーター会社が撤退。そこで、三菱i-MiEVのシステムをコンバートすることになった。リーフのシステムはサイズ的に入らなかったとのこと。
しかし、このコンバート作業は困難を極めて、ベース車のパンダを見つけるのに半年。そして製作にさらに1年半ほどかかり、完成までに2年かかった。また、費用はベース車両が約54万円、改造費用は約240万円。合計で約294万円と現行型リーフの中古車よりも高くなってしまったのだ。
実際に乗ってみると、航続距離の短い電気自動車は充電が頻繁に必要となり、遠出が面倒になるとのこと。またBMW i3に乗って確信したが、冬場は例え省エネのヒートポンプ式を備えても寒い。
さらに冬場はリチウムイオンの動きが悪くなり、航続距離が短くなるのだ。ちなみに、EVパンダにはクーラー・ヒーターがないため、乗る季節は限られるという。
そんなEVパンダだが、所有して良かった点を聞くと、パンダで充電をしていると物珍しさから声を掛けられること。そして、エンジン車と違い、オイルの温度管理などをすることなく、チョイ乗りが気兼ねなくできることを挙げてくれた。
いっぽう苦労している点は、ロングドライブがおっくうになること。急速充電で30分つぶすのは、コーヒー+タバコ1本じゃ時間が余るし、食事すると時間が足りない。意外とやることがない。それを何度も繰り返すのは苦痛。到着時間も読めないそうだ。
最後に旧車をEV化することについては、街乗り中心ならあり。ただし家に200Vの充電ポートは備えた方が便利だという。そして、まずはエンジン車で乗って、動力系が壊れてどうしようもなくなったけど手放したくないのであれば、電気自動車にするのはありかもと話してくれた。
日産のパイクカー、Be-1やパオ、フィガロなどは現在でも非常に人気が高いモデル。しかし、エンジンやミッションなどは年式を考えると、コンディションは厳しめだ。こういったクルマを籠島さんのようにEVコンバートして、長く乗り続けるというのは、レストアとはひと味異なる旧車の楽しみ方となるかもしれない。
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国産各メーカーがEVシャーシ製造販売して、ビルダーがボディ(ガワ)自由に載せられるようになるとオモロイ世界がやってくるんだけどな。金掛けたくない人はメーカーつるしの製品で楽しむ。