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トヨタ「エスティマ」10月生産終了で約30年の歴史に幕! ミニバン人気のなか定番車種が廃止される理由

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トヨタ「エスティマ」10月生産終了で約30年の歴史に幕! ミニバン人気のなか定番車種が廃止される理由

■エスティマの生産終了は2019年10月17日

 トヨタ「エスティマ」はミニバンの定番車種ですが、いよいよ生産を終えることになりました。

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 販売店によると、「2019年7月には生産終了が決まり、メーカーに発注ができなくなりました。いまでは在庫車も減っています」とのことです。

 トヨタのお客様相談センターも「10月17日に生産を終えます」とコメントしており、注文を受けている車両の生産が済むと、エスティマの歴史に終止符が打たれます。なぜエスティマは、生産を終了するのでしょうか。

 販売店スタッフは、エスティマの生産終了について、次のようにコメントしています。

「現行モデルのエスティマは、2006年に発売されて以来、長い間にわたりフルモデルチェンジを受けていません。そこでいよいよ生産を終えることになりました。

 これからエスティマがフルモデルチェンジしたり、後継のミニバンを投入するという話は聞いていません」

 エスティマが終了するのは、少子高齢化もあって、国内におけるミニバンの需要が減るためです。海外で販売できれば話は別ですが、ミニバンのニーズは低いです。そうなるとエスティマは実質的に国内専売で、フルモデルチェンジには踏み切りにくいといえます。

 そして、エスティマとサイズが近い「アルファード/ヴェルファイア(以下、アルヴェル)」の高人気も影響しています。2019年上半期(1月から6月)には、1か月平均で、アルファードが5878台、ヴェルファイアは3460台を登録しています。

 この2車種は基本部分を共通化した姉妹車なので、同じクルマと考えて登録台数を合計すると、1か月平均で9338台です。この台数は、ミニバン人気ナンバ-ワンの日産「セレナ」をも上まわり、コンパクトカーのトヨタ「アクア」に近い数のアルヴェルが毎月売れているのです。

 しかも、アルヴェルの売れ筋価格帯は370万円から500万円です。これだけの高価格車がコンパクトカーのアクア並みに売れるのですから、もはやLサイズミニバンはアルヴェルがあれば十分、という判断も成り立つでしょう。

 また視点を変えると、アルヴェルが1か月に1万台近く登録される状況で、果たしてエスティマに売れる余地があるのかという疑問も生じます。

 ただし、エスティマの魅力が乏しいわけではありません。現行エスティマは、2006年に発売された後、2016年にフロントマスクや安全装備を充実させる規模の大きなマイナーチェンジを実施しました。

 このとき開発者に、なぜフルモデルチェンジではなくマイナーチェンジにしたのか理由を尋ねると、次のように説明しました。

「エスティマの市場を分析して、マイナーチェンジを実施しました。しかしエスティマの魅力が乏しかったり、フルモデルチェンジする価値が低いわけではありません。

 いまの技術で(2015年に発売されたアルヴェルのプラットフォームなどを使って)、フルモデルチェンジすれば、低床設計を生かした低重心のミニバンを開発できます。

 ボディは軽くなり、タイヤサイズも(アルヴェルに比べて)細くできます。燃費から走行性能まで、機能を幅広く向上したミニバンを開発できるでしょう」

 この返答を聞いて、「次期エスティマを開発中なんですね!」と筆者(渡辺陽一郎)は思わず身を乗り出したのですが、開発者から発せられた言葉は「次期エスティマの計画は、まったくありません。いまの話は、私の妄想と考えてください」でした。

■全店で全車を販売することにともない車種のリストラがおこなわれる

 今回のエスティマの廃止は、車種のリストラの一環です。トヨタの国内販売店は、2020年5月に全店で全車を売るようになります。

 東京地区ではすでに全店で全車を販売する体制に移行していますが、全国規模で実施されれば、販売系列ごとに車種を区分する必要はありません。

 アルヴェルや「ヴォクシー/ノア/エスクァイア」といった姉妹車は、意味をなさなくなります。

 姉妹車が削減され、さらに「マークX」(発売は2009年)、「プレミオ/アリオン」(同2007年)も順次廃止されます。マークXは、2019年12月をもって生産終了ということが、すでにアナウンスされています。

 これからのトヨタは、国内の取り扱い車種と販売網をスリムにして、カーシェアリングなどの新しいビジネスを充実させるのです。

 フルモデルチェンジをおこなうのか、あるいは現行型で終了するのか、基本的な見分け方は発売されてからの経過年数です。

 商用車やオフロードSUV以外は、10年を経過すると基本設計の古さが目立ってきます。安全装備などの刷新はマイナーチェンジでは難しくなり、ユーザーが飽きて離れる場合もあります。

 そのため、一般の乗用車で10年以上を経た車種は、もはや大きな変更を受けず、徐々に売れ行きを下げて生産を終えることが多いです。

 トヨタの場合、2010年に現行型を発売した「ヴィッツ」が限界ギリギリでしょう。ヴィッツは、2020年にフルモデルチェンジを実施する予定とされています。

 初代エスティマは、1990年に卵型のボディで登場して、直列4気筒2.4リッターエンジンを搭載しながら、価格は約300万円でした。ミニバンというより、新しい高級車の姿を提案しました。

 この後、エスティマが定着し始めた時期を見計らって、5ナンバーサイズの「エスティマ ルシーダ&エミーナ」を発売しました。リアサスペンションがシンプルな車軸式のグレードは、価格が3ナンバーサイズのエスティマに比べて約100万円も安価でした。

 この市場戦略は見事に当たり、エスティマは人気を高めてミニバンの定番車種になりました。2000年には2代目にフルモデルチェンジされ、ボディを1種類に統合する一方で、ハイブリッドを加えています。現行型は3代目です。

 2016年のマイナーチェンジでは、衝突被害軽減ブレーキも採用されて積極的に売る意欲を見せましたが、歩行者対応は最後までおこなわれませんでした。

 2019年上半期のエスティマの登録台数は、1か月平均で791台です。アルヴェルの合計台数に比べると1割にも達していませんが、いまの日本で791台は悲観的な販売実績ではありません。

 エスティマは、ひとつの時代を築いたエポックメイキングなミニバンだったので、廃止されるのはとても残念です。

 先の開発者のコメントにあったように、アルヴェルのプラットフォームを使って、次期エスティマを開発して欲しかったと思います。

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