現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > ホンダイズムというより宗一郎イズムで作られた1台! 空冷にこだわったホンダ1300とは

ここから本文です

ホンダイズムというより宗一郎イズムで作られた1台! 空冷にこだわったホンダ1300とは

掲載 17
ホンダイズムというより宗一郎イズムで作られた1台! 空冷にこだわったホンダ1300とは

ホンダらしい凝った造りになっていた

 軽乗用車のビッグヒットとなったN-BOXからスーパースポーツのNSXまで、いまでは幅広いラインアップを誇るホンダですが、2輪メーカーから4輪メーカーに、乗用車のN360で本格参入した“次の一手”がホンダ1300でした。1.3L空冷直4エンジンを搭載、2L級のパフォーマンスを謳ったホンダ1300を振り返ります。

いま見ても惚れ惚れ! 宗一郎氏の「見るじゃなく観る」の魂が息づくデザインが秀逸なホンダ車5台

水冷も最終的には空気で冷やす空冷だ!

 2輪においては世界でトップメーカーに成長したホンダは、軽トラックのT360とライトウェイトスポーツカー(小型乗用車)のスポーツ500で4輪メーカーとしての名乗りを上げました。本格的な量販モデルとしては、軽乗用車のN360(とそこから派生したライトバンとクキャブオーバートラック)が最初の商品となりました。

 いずれも、オートバイと基本設計を同じくする空冷で360ccのOHC並列2気筒エンジンを搭載。発売と同時にN360はヒット商品となり、4輪メーカーとしてのホンダの基礎を築くことになりました。そこでホンダの次なる商品として開発されたのがホンダ1300。型式名もシンプルにH1300とされています。

 N360がヒットしたこともあり、H1300 も空冷エンジンでいくことになりました。これにはさまざまな理由があったと伝えられていますが、何よりも決定的だったのは創業社長であり、技術部門のトップでもあった本田宗一郎さんが、頑ななまでの空冷“信奉”だったためでした。

「水冷エンジンと言っても、最終的には(ラジエターを)冷やすのは空気。だから最初から空冷の方が合理的だ」というのです。また「砂漠の真ん中で故障した場合、水は手に入らないが空気ならいくらでもある」と仰っていた、とも伝えられています。いずれにしても技術のトップが頑固に言い張っている以上、どんな技術者も簡単に水冷への転向を提案することはできなかったでしょう。

 それはともかくH1300です。N360に比べて4倍近い排気量となるために、気筒数は4として、Nと同じ横置きとすることになったのですが、出力も高くなっていて、当然のように発生する熱量も多くなっています。そこでN以上にクーリングに気を遣ったエンジンとなっていました。

 Nでも、空冷エンジンの特徴でもある冷却フィンを外側からシュラウドでカバーし、エンジンの後方に取り付けたファンで空気を吸い出すようにした、ある意味で強制空冷になっていましたが、H1300ではさらに凝った造りになっていました。

 シリンダーブロックのなかに、水冷エンジンでは冷却水が通るウォーターラインが設けられていますが、そのような通路を設けて、そこに空気を強制的に送り込んで冷却しようというもの。さらにエンジンの外側には、通常の空冷エンジンと同様に冷却フィンが設けられていましたから、クーリングのキャパシティは充分と考えられていました。

 DDAC(Duo Dyna Air Cooling system。一体構造二重壁空冷方式、または一体式二重空冷エンジン)と呼ばれる空冷エンジンには、期待通りの副産物もありました。シリンダーブロックが二重になったことで、Nで散々苦労させられた騒音が大きく遮断されることになったのです。

 その一方で、もうひとつの副産物、これは望んでいなかったものも現れてきました。想定外の重量過多でした。エンジンは補器類も含めてアルミを多用していたにも拘らず、複雑な構造で重量が重くなり、また整備性も悪くなってしまっていました。

 パフォーマンスは充分で、最高出力は77と呼ばれたシングルキャブのベースモデルでも100ps、99と呼ばれた4キャブレターの高性能版ではじつに115psをマークしていました。これは、ほぼ同時期に登場していたトヨタのコロナ・マークII(1.9L)が100ps、クラウン(2L)が110psだったことを考えれば、驚くべき高出力でした。

 ちなみに、最高速は77で175km/h、99では何と185km/hにも達していました。これは同時代のスカイライン2000GT(GT-Rではない)をも凌ぐ韋駄天ぶりで、まさに2L級のパフォーマンスを発揮していたことになります。

革新的なアイデアが詰まったシャシーに華麗なるクーペも登場

 エンジンのDDAC方式だけでなく、H1300には、シャシーにも新機軸のアイデアが数多く盛り込まれています。まずサスペンションですが、フロントにはN360で定評のあるマクファーソンストラット式独立懸架が採用されていました。

 一方、リヤは特徴的なクロスビーム式。これはボディ幅いっぱいの長さを持ったビームを縦置きのリーフスプリングで吊る方式で、左右が干渉しあわない独立懸架となっていました。さらにフロントにサーボ付きのディスクブレーキが奢られていたことも、ハイパワーに応えた装備でした。

 その一方でボディ構造にも新たなアイデアが盛り込まれていました。最初に登場した4ドアセダンは通常のアウターパネルを、いくつかのパーツで溶接し繋ぎ合わせて構成していましたが、H1300は大型プレス機を導入してサイドパネルを1枚ものとして成型。

 それをルーフパネルで繋いでボディを組み立てていました。そのサイドパネルとルーフパネルの繋ぎ目をモールで隠していたのですが、そのモール部分の見た目から誰言うことなく“モヒカン”と呼ばれるようになったのです。

 これを最初に採用したのがH1300で、その後はホンダZやライフ、さらにシビック以降のすべてのホンダ車に採用されただけでなく、国内外のメーカーが追随するようになりました。ちなみに、海外でもMohican Structure(モヒカン構造)で通じる世界共通語となっているようです。それを世界に先駆けて採用したのがわがホンダということで、ホンダファンだけでなく、日本人としても誇らしい限りです。

 最初にモヒカン構造を採用したモデルがホンダ1300クーペ。こちらの型式はH1300Cと、セダンとの相違点は末尾にCが付け加えられるだけとシンプル極まりありません。ですがそのスタイリングは、極めてコンサバな3ボックスの4ドアセダンだったセダンから一転していました。

 Cピラーを太くして、カンチレバーでAピラーを吊ったようなデザインは、フロントドアがサッシュレスでBピラーもブラックアウトされ、軽快感たっぷりでした。フロントビューもまた独特で、このころのポンティアックが好んで使用していた2分割グリルを採用。

 突き出したセンター部分は“鼻筋”が通り、細身になったHマークが精悍さを強調していました。インテリアもスタイリッシュで、セダンでは平板だったダッシュボードは、メーター類がドライバーと向き合うように湾曲したパネルに取り付けられ、フライトコクピットの名に相応しいデザインでした。またルーフにオーバーヘッドコンソールが装着されていたのも大きな話題となったのです。

 残念ながら、世の中の流れ的にはより高出力を目指したハイパフォーマンスなクルマから、排気ガス規制に対応した地球にやさしいクルマへと変わっていき、それにホンダも応える格好でライフやシビックが登場。H1300もシビック由来の1.45Lの水冷直4エンジンに換装された145シリーズへと移行し、1974年には生産を終了してしまいました。

こんな記事も読まれています

ホンダ「ヴェゼル」がマイナーチェンジ、静粛性、乗り心地、安全性能が大幅に向上
ホンダ「ヴェゼル」がマイナーチェンジ、静粛性、乗り心地、安全性能が大幅に向上
@DIME
【MotoGP】プラマック、ドゥカティ陣営から離脱&ヤマハサテライトチームへ!? オランダGPで発表予定との情報
【MotoGP】プラマック、ドゥカティ陣営から離脱&ヤマハサテライトチームへ!? オランダGPで発表予定との情報
motorsport.com 日本版
雨でクルマが滑りやすい! 悪天候は「FR」と「FF」どっちが得意? 「4WDがベスト」とも言い切れないワケとは?
雨でクルマが滑りやすい! 悪天候は「FR」と「FF」どっちが得意? 「4WDがベスト」とも言い切れないワケとは?
くるまのニュース
無塗装アルミボディがクール! 軽自動車枠のスポーツカー 新型「スーパーセブン600」に 日本専用の“クラシックエディション”登場
無塗装アルミボディがクール! 軽自動車枠のスポーツカー 新型「スーパーセブン600」に 日本専用の“クラシックエディション”登場
VAGUE
【MotoGP】アレックス・マルケス、グレシーニとの契約延長へ。ドゥカティMotoGP陣営で3シーズン目に挑む
【MotoGP】アレックス・マルケス、グレシーニとの契約延長へ。ドゥカティMotoGP陣営で3シーズン目に挑む
motorsport.com 日本版
BMWの高性能セダンが歴代初の電動化、727馬力「M HYBRID」搭載…欧州発表
BMWの高性能セダンが歴代初の電動化、727馬力「M HYBRID」搭載…欧州発表
レスポンス
フェラーリが電気自動車も生産可能なプラント「e-ビルディング」を公開
フェラーリが電気自動車も生産可能なプラント「e-ビルディング」を公開
@DIME
乗って、触って、新型フリードここが変わった!【工藤貴宏】
乗って、触って、新型フリードここが変わった!【工藤貴宏】
グーネット
【2024年版】ホンダ ステップワゴンVS日産 セレナを徹底比較
【2024年版】ホンダ ステップワゴンVS日産 セレナを徹底比較
グーネット
[カーオーディオ・素朴な疑問]メインユニット…アルパイン『ビッグX』のオーディオ機器としての実力は?
[カーオーディオ・素朴な疑問]メインユニット…アルパイン『ビッグX』のオーディオ機器としての実力は?
レスポンス
最新パワーユニットを搭載した「メルセデスAMG CLE53 4MATIC+ クーペ」を追加発売
最新パワーユニットを搭載した「メルセデスAMG CLE53 4MATIC+ クーペ」を追加発売
月刊自家用車WEB
TomTomがBMWモトラッドのグローバルラインナップへナビゲーションスタックの提供を発表!さらに革新的なモデルへ
TomTomがBMWモトラッドのグローバルラインナップへナビゲーションスタックの提供を発表!さらに革新的なモデルへ
バイクのニュース
日産新型「最上級3列SUV」まもなく登場! 全長5.4m級の巨大ボディ&超豪華インテリア採用! 新型「QX80」米国で発売へ
日産新型「最上級3列SUV」まもなく登場! 全長5.4m級の巨大ボディ&超豪華インテリア採用! 新型「QX80」米国で発売へ
くるまのニュース
アストンマーティンF1、ランス・ストロールとの契約を”2025年以降”まで延長。ホンダPU搭載マシンもドライブへ
アストンマーティンF1、ランス・ストロールとの契約を”2025年以降”まで延長。ホンダPU搭載マシンもドライブへ
motorsport.com 日本版
アルピーヌF1のブリアトーレが、サインツ獲得に動く。ウイリアムズ、アウディとの争奪戦を展開
アルピーヌF1のブリアトーレが、サインツ獲得に動く。ウイリアムズ、アウディとの争奪戦を展開
AUTOSPORT web
魔改造の夜に「Sズキ」登場!! ワニちゃん水鉄砲でエンジニアが壮絶な闘い
魔改造の夜に「Sズキ」登場!! ワニちゃん水鉄砲でエンジニアが壮絶な闘い
レスポンス
なぜD1グランプリ王者はレイズを選ぶ?「gram LIGHTS 57NR」をトヨタ「GR86」にセットする「Team TOYO TIRES DRIFT」を紹介します
なぜD1グランプリ王者はレイズを選ぶ?「gram LIGHTS 57NR」をトヨタ「GR86」にセットする「Team TOYO TIRES DRIFT」を紹介します
Auto Messe Web
7年ぶりにラリー・ポーランドがWRCに復帰、勝敗を分けるポイントは?【WRC第7戦開幕プレビュー】
7年ぶりにラリー・ポーランドがWRCに復帰、勝敗を分けるポイントは?【WRC第7戦開幕プレビュー】
Webモーターマガジン

みんなのコメント

17件
  • 空冷信仰の社長と水冷推しの中村さん

    中村さんも大変だったろうね
  • こだわりのH1300とも言えますし、実際の運用面では、止まらない、曲がらないの事象も発生しており、Honda好きでも賛否があるH1300ですね。
    個人的には、筆者と同じように、夢が詰まったスペシャルマシンだと思います。
    その技術がまわりまわって、CB1100の空冷エンジンを誕生させたのかな?っと、夢が原動力で未来の車開発に繋がるんだと思います。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村