人気のコンパクトSUVカテゴリーに各メーカーから魅力的なモデルが発売されているが、その中でも注目なのがヤリスクロスとヴェゼル、キックスだろう。
個性的なデザインに加え、ハイブリッドなど環境性能も抜群だ。
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今回はこの3台の商品力を比較する!
文/渡辺陽一郎、写真/ベストカー編集部
【画像ギャラリー】豪華トリプルスレット・マッチ!! 総合力に勝るコンパクトSUVはヤリスクロスかヴェゼルかキックスか!?
■2020年から2021年に登場したコンパクトSUV3車種を比較
2020年から2021年にかけて発売された人気コンパクトSUV3車種を比較する。3車種ともハイブリッドが用意されているので、ここではハイブリッドで比較する
最近は全長を4m前後に設定したコンパクトSUVが注目されている。混雑した街中でも運転しやすく、後席や荷室にも相応の余裕があるから、ファミリーカーとしても使いやすい。
価格が割安なことも魅力だ。2020年から2021年に掛けて、コンパクトSUVの新型車が発売されたので、3車種を比較したい。
まずはトヨタヤリスクロスだ。エンジンは直列3気筒1.5Lのノーマルタイプとハイブリッドを設定している。
ホンダヴェゼルは直列4気筒1.5Lのノーマルエンジンとe:HEV(ハイブリッド)を用意した。キックスは直列3気筒1.2Lのe-POWER(ハイブリッド)のみを搭載する。ヴェゼルもe:HEVの販売比率が93%と高いことから、ここではハイブリッドを比較したい。
■ボディスタイル/視界/運転のしやすさ比較
全長が最も短いのはヤリスクロスだが、最小旋回半径ではキックスに軍配が上がった
ボディスタイルは、各車ともフロントマスクにメーカーの特徴を表現している。特にヴェゼルは、今のホンダらしさが濃厚だ。
視界は水平基調のヴェゼルが良好だ。ヤリスクロスとキックスは、ボディ後端のピラー(柱)が少し太く感じられ、斜め後方もやや見にくい。
取りまわし性ではヤリスクロスが注目される。全長は4180mmだから最も短い。その次は4290mmのキックス、4330mmのヴェゼルになる。最小回転半径は、キックスが最も小さく5.1m、ヤリスクロスは5.3m、ヴェゼルは売れ筋のe:HEV・Zが5.5mだ。
*順位
・No.1:キックス
・No.2:ヤリスクロス
・No.3:ヴェゼル
■内装の質感/操作性/前後席の居住性比較
内装の質感はどの車種も好印象。中でもヴェゼルはひとつ上級グレードの車種と比べても遜色ない上質感だ。座席の居住性にも優れている
内装の質感は、各車種ともコンパクトSUVだからといって妥協している印象はない。コンパクトカーの平均水準を上まわる。
その上で比べると、最も上質な車種はヴェゼルだ。装飾も巧みで、CR-VのようなミドルサイズSUVと同等の仕上がりになる。
視認性や操作性は、3車種ともに満足できる。エアコンなどのスイッチは比較的高い位置に装着され、操作性も良好だ。
前席の座り心地は、ヴェゼルとキックスは快適に感じる。ヤリスクロスは、ライバル2車に比べてボリューム感が少し乏しい。
後席は足元空間が車種によって異なる。身長170cmの大人4名が乗車した時、ヴェゼルでは、後席に座る乗員の膝先空間が握りコブシ2つ半に達する。CR-Vと同等だ。
キックスは握りコブシ2つ弱になる。ヤリスクロスは握りコブシ1つ少々に留まる。ヴェゼルの後席は、内装と同様、ミドルサイズSUVに匹敵する。逆にヤリスクロスは、コンパクトカーのヤリスよりは広いが、長身の同乗者が座ると窮屈に感じる。
*順位
・No.1:ヴェゼル
・No.2:キックス
・No.3:ヤリスクロス
■荷室&シートアレンジ比較
荷室の奥行きではキックスが優れているが、シートアレンジではヴェゼルが素晴らしい。写真のように後席のアレンジで様々な形状の荷物を積むことができる
後席を使った状態で、荷室長(荷室の奥行寸法)が最も長い車種はキックスだ。ヴェゼルとヤリスクロスは同程度になる。
シートアレンジはヴェゼルが最も多彩だ。燃料タンクを前席の下に搭載しており、車内後部のスペースが広い。そこで後席を床面へ落とし込むように畳むと、ボックス状の空間になる。
またヴェゼルでは、後席の座面を持ち上げると、車内の中央に背の高い荷物を積むことも可能だ。通常の使い方で荷室が最も広いのはキックス、シートアレンジで選ぶならヴェゼルになる。
*順位
・No.1:キックス
・No.2:ヴェゼル
・No.3:ヤリスクロス
■走行性能&乗り心地比較
乗り心地はヴェゼルに一歩譲るが、写真のキックスは3気筒にしては駆動ノイズが抑えられていて好印象だ
全車をハイブリッドで比べると、走りが最も軽快なのはヤリスクロスだ。ハイブリッドでも2WDの車両重量は1200kg以下に収まり、1300kgを超えるヴェゼルやキックスに比べると、機敏に加速して良く曲がる。
その代わりに登坂路などでアクセルペダルを深く踏み込むと、3気筒エンジン特有のノイズが響きやすい。やや走りに粗い印象も伴う。
キックスのエンジンも3気筒だが、e-POWERではエンジンが発電機を作動させ、駆動はモーターが担当する。アクセルペダルを深く踏むと発電を活発に行うため、e-POWERでもエンジン回転を高めるが、ノイズはさほど気にならない。
ヴェゼルのe:HEVは、動力性能はあまり高くないが、4気筒とあってノイズは小さく回転感覚も滑らかだ。キックスと同じくモーター駆動だが、巡航時にはエンジンが直接駆動する制御も備わり、燃費を節約できる。e:HEVはe-POWERよりも綿密な制御を行う。
乗り心地は各車とも低速域では硬めに感じるが、ヴェゼルは3車種の中ではしなやかだ。スポーティ感覚は乏しいが、走りが上質に感じる。その次がキックス、ヤリスクロスの順番だ。
*順位
・No.1:ヴェゼル
・No.2:キックス
・No.3:ヤリスクロス
■安全装備&運転支援機能比較
安全装備が充実しているのはヤリスクロスだ。衝突被害軽減ブレーキは車両と歩行者に加えて自転車も検知してくれる
ヤリスクロスは安全装備が充実しており、衝突被害軽減ブレーキは、車両と歩行者に加えて自転車も検知する。右左折時の直進車両や横断歩道上の歩行者にも反応して安心感が高い。
ドライバーの死角に入る後方の並走車両などを検知して、警報を行うブラインドスポットモニターなどもオプションで用意される。運転支援機能も標準装着した。
ヴェゼルも衝突被害軽減ブレーキは、自転車まで検知できる。e:HEV・Zには後方を走る並走車両を検知する機能なども採用されて安全性を高めた。
キックスは衝突被害軽減ブレーキ、運転支援機能のプロパイロットを標準装着している。
*順位
・No.1:ヤリスクロス
・No.2:ヴェゼル
・No.3:キックス
■グレード構成と価格の割安度比較
グレード構成と価格の割安感はヤリスクロスがリード。基本グレードがリーズナブルだとオプションを盛る楽しみも増える
ヤリスクロスの推奨グレードは、ハイブリッドZ・2WD(258万4000円)になる。オプションのブラインドスポットモニター+リヤクロストラフィックオートブレーキ(4万9500円)を加えて263万3500円だ。
ヴェゼルはe:HEV・Z・2WD(289万8500円)がベストグレード。ブラインドスポットインフォメーションに加えて、リヤゲートの電動開閉機能なども標準装着した。価格はヤリスクロスハイブリッドZ・2WDに比べて20~30万円高いが、装備も充実している。
キックスは2WDのみで、X(275万9900円)が推奨グレードだ。インテリジェントアラウンドビューモニター&インテリジェントルームミラーなどはメーカーオプションだが、大半の装備は標準装着される。
*順位
・No.1:ヤリスクロス
・No.2:キックス
・No.3:ヴェゼル
■燃費比較
WLTCモード燃費を推奨グレードで見るとヤリスクロスの勝利。ランニングコストでも一歩先を行っている
WLTCモード燃費が最も優れているのは、推奨グレードで見るとヤリスクロスハイブリッドZ・2WDだ。27.8km/Lを達成した。2位はヴェゼルe:HEV・Z・2WDで24.8km/Lになる。3位はキックスXで21.6km/Lだ。
*順位
・No.1:ヤリスクロス
・No.2:ヴェゼル
・No.3:キックス
■総合評価
総合評価ではヴェゼルが最も高かった。比較した3車種はどれも魅力ある個性を持っている。乗り比べた上で気に入ったものを選ぶといいだろう
内外装の質感、4名乗車時の快適性、乗り心地などを総合的に判断すると、ヴェゼルが最も買い得度だ。ヴェゼルe:HEV・Zの価格は約290万円と高いが、装備内容も含めて、価格に見合う上質感を備える。CR-Vと比べても質が高く感じるほどだ。
総合評価の2位は、価格の割安感を考えるとヤリスクロスになる。この3車の中でとらえると、ヤリスクロスはヴェゼルやキックスに比べて質感や乗り心地が劣るが、運転感覚が機敏で燃費も優れ、価格は割安だ。ヴェゼルがファミリー派、ヤリスクロスは2名以内の乗車で使うパーソナル派の個性を際立たせた。
キックスはこの2車の中間的な存在だ。個性が弱い印象も受けるが、4名で乗車した時の荷室は最も広い。実用指向の価値が備わる。世界観は同じ日産のエクストレイルにも似ていてツール感覚を強めた。
以上のように、コンパクトSUVには個性的な車種がそろう。この3車種を乗り比べて選ぶと良いだろう。
*順位
・No.1:ヴェゼル
・No.2:ヤリスクロス
・No.3:キックス
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