2017年10月に5代目レクサスLSが発売された。じつに11年ぶりのフルモデルチェンジだ。ご存知のように初代は1989年LS400の名前でデトロイトショーで発表され、その年の9月に米国で発売されている。国内ではセルシオの名前で発売されたモデルだ。革新的な静粛性を持ち、動く応接間のようだと形容された初代はセンセーショナルだった。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>
5代目を開発するにあたり、モノの価値観の変化が時代と共に起こり、かつてのレクサスを継承するだけでは受け入れられないという判断があったという。4世代にわたり圧倒的静粛性という価値を持ったレクサスの時代から、ラグジュアリーの価値が大きく変化したと捉えている。
*レクサス LSの詳細記事はこちら
ホンダ シビック試乗記 ホンダのスポーティイメージは復活するのか!?
それはレクサスにとって大きな転換期であり、定量的なクルマ造りから数値だけでは表せないデザインや走りなど、感性に訴える必要があるということだ。そのために4つの柱を立てて、次世代レクサスを開発したという。
その4つとは、デザイン、走り、先進技術、匠の技という4つで、それぞれの項目で最善を尽くしたのが5代目となる新型レクサスLSということになる。
■挑戦するデザイン
開発タスクは何物にも似ていない。それでいてレクサスと分かる唯一無二の迫力ある存在感と、見た瞬間から惹き込まれるデザインだ。シルエットはクーペライクなルーフラインで、大型セダンの主流デザイン。フェイスはレクサスを主張するスピンドルグリルで、遥か彼方からでもレクサスと分かる顔をしている。6ライトを強調しているが大型セダンでは比較的主流の技法。だが、LSではボディとの段差をなくして、フラットな形状にしている点が繊細さを感じさせる。
ボディサイズは全長5235mm、全幅1900mm、全高1450mm(AWDは1460mm)、ホイールベース3125mmという超大型で、レクサスのフラッグシップモデルに相応しい存在感を持つサイズだ。3mを優に超えるホイールベースは真横からの見た目で大きさを実感させる。この辺りは開発の狙いどおりで、存在感や主張のあるデザインになっていると思う。ボディサイドのパネルはロングホイールベースだけに、もう少し色気があってもいい気もするが。
■すっきりと奥深い走り
このテーマがLSの最大のポイントではないだろうか。つまり4世代が構築したブランドイメージからの脱却を狙っているからだ。先代までであれば、走りの性能よりも静粛性や高級感、フワッとした乗り心地を大事にしていただろう。新型LSはGA-Lという新プラットフォームを使い、先にデビューしているラグジュアリースポーツLCをベースにセダンを開発している。つまり、スポーツセダンという要素も入れ込んでいるのだ。
もちろん、DNAでもある静粛性や高級感、ラグジュアリーという要素をスポイルすることなく、スポーティを加えていこうというものだ。そのためドライビングポジションや重量物のエンジンなどをできるだけ下げ、かつセンターに寄せるパッケージにし、フロントミッドシップとしている。ボディでは環状構造を多用し、サスペンション取付け部の剛性、パーテーションパネル結合などで大幅な高剛性化をしている。先代比で、ねじれ剛性80%向上という数値もある。
そしてサスペンションは全車エア・サスペンションと、連続可変ダンパーも装備し、「Fスポーツ」にはモーター内蔵のスタビライザーを装備し、ロールを抑えつつヨーモーメントを積極的に発生させる狙いを持っている。こうしたパーツを駆使してVDIM(車両運動統合制御Vehicle Dynamics Integrated Management)技術を進化させ、前後、左右、上下、ヨー、ロール、ピッチの6方向のベクトルをコントロールすることで運動性能を高めていくことに挑戦している。
こうした改良で感性性能には強くこだわり、数値では到達できない領域の魅力にトライしていることが分かる。
■新開発のエンジン
パワートレーンはハイブリッドとガソリンツインターボの2機種。ハイブリッドは3.5L V6型のマルチステージハイブリッドで、仮想10段の変速を組み合わせている。ハードとしてはLCに搭載したハイブリッドモデルと同じで、車両重量の違いなどを考慮した最適化をしている。出力は290ps/356Nmだ。
一方ガソリンのV6型3.5Lツインターボエンジンは新規開発したダイナミックフォース・エンジンになっている。新型カムリで直列4気筒2.5Lの第1弾を搭載したが、次世代高効率ガソリンエンジンの第2弾というわけだ。このエンジンに10速ATを組み合わせ、ドライバビリティを追求している。出力は422ps/600Nmとなっている。
これらのエンジンにはサウンド、という要件も新たにタスクとして加えている。従来のLSであれば、あり得ないタスクであり、静音、消音がタスクだったはずだ。それが新型LSには心地よいサウンドにすることが課せられているのだ。特にSモードの時にはスピーカーを駆使したサウンドで聴かせ、またノーマル時でもスピーカーは使っていないものの、アクセルを踏み込んだ時には官能的とさえ感じさせるサウンドにしているという。
■匠の技
神は細部に宿る言葉のごとく、細部の仕上がりにこだわっているのも新型レクサスLSの特徴だ。シートはもちろん、パネル、スイッチ、ドアトリムなどディテールから取付けまで、精度と精緻が入り乱れ、高精度と賓を感じさせるインテリアになっている。
日本の独創的技術と職人技を組み合わせることで、レクサス独自のモノづくりを意識している。とくにイルミネーションといったセンス、感性に訴える部分にも注力し、日本人ならではの美意識を持って演出に取り組んでいる。
■創造的な先進安全技術
世界でもっとも安全、安心、快適なドライビングを提供するベストパートナーとなるクルマ造りを目指したレクサスは、先進安全技術のトップランナーを目指す目標が掲げられている。従来のレクサス・セーフティシステム+に加え、先進の予防安全技術と高度運転支援技術でレクサス・セーフティシステム+Aを開発し、世界初のアクティブ操舵回避支援、パーキングサポートブレーキを装備した。
プリクラッシュセーフティ・システム+Aは従来のシステムより、より早いタイミングで自車前方の歩行者を検出し、ヘッドアップディスプレイのアニメーションで注意喚起をする。そしてブレーキ制御に加え、さらに危険だと判断した場合、自車線内での操舵回避を行なうことで歩行者事故回避を支援するというものだ。簡単に言えば、ハンドルが自動で切られ、自車線内で歩行者をよける制御になったわけだ。
もっとも、後方や側方に車両がいる場合、速度が80km/h以上の場合は稼働せず、緊急ブレーキだけの支援になるなど、あくまでも運転支援技術なので、人にぶつからない機能と理解してはいけない。
パーキングサポートブレーキも従来のインテリジェント・クリアランスソナー、リヤクロストラック・オートブレーキに加え、世界初の対後方歩行者へのブレーキをサポートする機能も搭載した。リヤカメラで歩行者を検知し、ブレーキをかける。また前後ともに誤発進抑制機能として出力制御とブレーキサポートを行ない、駐車場での事故を未然に防ぐ機能も搭載した。
■試乗インプレッション
試乗車はガソリンのFスポーツ3.5L V6ツインターボ+10ATと同じパワーユニットのAWD versionL、そしてハイブリッドのエグゼクティブの各グレードに試乗した。
ハイブリッドでは箱根のワインディングを試乗したが、これまで記述した開発目標がどこまで到達できているのか?というチェックもしてみたい。
装着するタイヤはブリヂストンのトゥランザ・ランフラットタイヤで、サイズが245/45R-20というメーカーオプションとなる大径サイズを装着している。ランフラットのためか、乗り心地の点でタイヤの硬さが気になった。サスペンションはフリクションのない動きをするものの、乗り心地としては硬いのだ。またシートも従来のフワッとしたシートではなく、極端に言えばバケットシートのような、クッション性が低いものの、ホールド感の高いシートという影響もあるだろう、タイヤのゴツゴツ感をかなり感じてしまう。
エンジン音はノーマルドライブモードでもかなり聞こえる。もちろんアクセルを踏み込めばという話だが、それ以外はある程度の静粛性が確保され、おとなしく走ればEV走行もあり静かだ。このあたりの音の入り方や使い方が新生レクサスLSの真骨頂なのかもしれない。
ハンドリングは従来のレクサスであれば、コメントの必要がない、というか、ハンドリングを語るモデルではないのだが、新型LSは明らかにドライバーズカーへと変身しているのだ。それはスポーティグレードのFスポーツ以外も含め、つまり、レクサスLSはプレミアムなドライバーズカーという位置づけで誕生したといことだ。
ライバルはメルセデス・ベンツのSクラスではなく、BMW7シリーズということになるのだろう。それにしても、ステアフィールは芳しくない。切りはじめは軽くて素直に回頭しヨーを発生させるが、一定舵角でコーナリングしているときに、インフォメーションを感じにくい。コーナリングしている感じがつかみにくいのだ。そしてSAT(セルフアライニングトルク)も強く、切り足し側と切り戻し側で違うトルクがかかるのが違和感になる。したがって姿勢コントロールのVDIMの影響もあるのだろうが、官能的なコーナリングとはいいがたく、デジタルフィールが残っているのだ。
一方、ガソリンのFスポーツに試乗していみると、この操舵フィールは思った通りに動き、感性に響くコーナリングをする。エンジン音の響きもよく、ブレーキタッチもいい。走るための操作系、アクセル、ブレーキ、ハンドルの操作指令とクルマからの応答がリンクし思い通りに走れる。
ただ1点、10速ATのトルク制御で、うまくこなれていない部分があった。ある特定の条件の時、滑らかにシフトダウンができず、変速ショックをきたす場面があった。こうした制御の取りこぼしがあるところを考えると開発時間が不足しているように感じた。MBD(モデルベース開発)を駆使し、あらゆる場面のシミュレーションを繰り返しているはずで、漏れがあるというのは開発時間不足ということだ。
加減速はもとより、操舵もデジタル数値で作りこむ現在の車両開発では、そのデジタル感を打ち消し、感性に響くかどうか?という領域に持ち込むテストが繰り返されている。どのモデル(MBD)が感性にマッチするのか?加速度の変化率を制御するのは並大抵のことではない。
最後にもうひとつ。下周りからのゴトゴトとした音の発生が気になった。特に、このクローズドエリアでの試乗では、路面環境が滑らかなため、ここでの試乗はどんなモデルに乗っても乗り心地が良く感じてしまうという環境なのだ。にもかかわらず、ゴトゴトと音が気になってしまうというのは、これはプレミアムモデル、フラッグシップモデルには相応しくない音だと思う。
■まとめ
レクサスLSはドライバーズカーに生まれ変わった。ラグジュアリーでフワッとした乗り味を期待するのではなく、運転して楽しい乗り味を期待するモデルに変身したのだ。感性性能へのこだわりを謳う国産メーカーは少ない。プレミアムモデルは良くて当たり前だ。それだけに、どれだけ琴線に触れるか?が勝負なわけで、欧州プレミアムモデルと戦う準備を整えつつあるということだろう。
■価格
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
運営ブチギレ!? 一般車が「検問突破」何があった? 国際イベントでありえない"蛮行"発生! ラリージャパン3日目の出来事とは
給油所で「レギュラー“なみなみ”で!」って言ったら店員にバカにされました。私が悪いんですか?怒りの投稿に回答殺到!?「なにそれ」「普通は通じない」の声も…悪いのは結局誰なのか
日本の「ペダル踏み間違い防止技術」世界のスタンダードに! 事故抑制のため国際論議を主導
レクサス新型「小型スポーツカー」がスゴい! “テンロクターボ”×初の6速MTを搭載! 最小SUV「LBX MORIZO RR」どんなモデル?
ホンダ新型「プレリュード」まもなく登場? 22年ぶり復活で噂の「MT」搭載は? 「2ドアクーペ」に反響多数!海外では“テストカー”目撃も!? 予想価格はいくら?
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!
みんなのコメント
この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?