この記事をまとめると
■クルマの工場は混流生産という方式を取っていることが多い
タイヤ1本で4トン超え! 価格も1本数百万円ってマジか! ブリヂストンの「怪物タイヤ」製造工場に潜入した
■混流生産とはさまざまなクルマを同じラインに流し生産効率を上げることを指す
■EVが増えるとパーツの共通化によりさらに高効率な生産体制になる可能性がある
同じラインにいろいろなクルマが混ざってるけどいいの?
電動化や自動運転などの技術革新により「自動車業界は100年に一度の大変革期」といわれることが多い。いまどきの若者からすると『100年に一度って大袈裟じゃん、100年前にはどんな大変革があったっていうの』と思うかもしれない。
じつは、100年前には明らかな自動車業界の大変革があった。それがフォードによる流れ作業による大量生産で、フォード・モデルTをコンベアで流すという単一車種の大量生産が始まったのが20世紀初頭、およそ100年前のことだった。
100年の歴史のなか、それぞれの自動車メーカーが生産技術を磨いてきたが、大量生産によって製造コストを抑え、多くの人が自動車を所有できるようになったというのが自動車業界の大きな流れといえる。
しかしながら、昨今の自動車生産工場を見学すると、初期の大量生産とは異なる風景を見ることができる。とくに目立つのは、生産ラインに流れているクルマは同一モデルではないことが多い点だ。さまざまな車種を同じラインに流す、混流生産となっていることがほとんどとなっている。根本的には、フォードが発明したように単一車種を生産したほうが効率はいいはずだが、なぜ混流生産が主流になっているのだろうか。
これには自動車マーケットの多様化が影響している。各メーカーはユーザーニーズに沿って多くの車種をラインアップしている。グローバルなニーズを限られたモデルで満たすのは現実的に難しい。モデルラインアップが多ければ、販売の予想がよくも悪くも外れてしまうこともある。生産規模が読み切れないといえるのだ。
そうなると、車種ごとに専用の生産ラインを設けることは逆に非効率となってしまう。
仮に1車種専用ラインにするとして、Aという車種を作るラインとBという車種を作るラインを用意して、それぞれ1日1000台の生産能力があったとする。AもBもグローバルに毎日1000台売れているのであれば、大きな問題ないが、Aは人気モデルとなって毎日1500台のオーダーがあるのにBは不人気で500台の受注しかないとすると、専用ラインが仇になる。会社としては、毎日2000台を作る能力があり、オーダーもぴったり2000台集めているのに、Aというモデルはバックオーダーをかかえ、Bを作るラインは閑古鳥が鳴いてしまうのだ。
部品の共通化で今後はもっとスマートな工場に
基本的に工場というのは、生産能力どおりに稼働しているのがもっとも効率がよくなるものだ。前述のような状態であれば、Bを作っているラインでAも製造するという混流生産にすることで、効率よくクルマを作ることができ、ユーザーも納車待ちが最小限で済む。
このような最適化が進んだ結果として、現在は混流生産が主流になっていると考えていいだろう。
ただし、行き過ぎた混流生産にはデメリットも出てくる。たとえばEV(電気自動車)とエンジン車では主にパワートレイン関連で構造がまったく異なる。そうした違いを吸収できるような生産システムを組まないと混流生産はできない。
結果としてラインの流れるスピードが遅くなったり、作業員に高いスキルが求められるようになってしまうのでは、大量生産の本質的なメリットが失われてしまうといえる。どんなに混流生産が当たり前になったとしても、単一車種を大量生産するほうが生産効率は高い。
ホンダの鈴鹿製作所で、N-BOXをはじめとした軽自動車を生産しているラインを見学した経験もあるが、自動溶接マシンなどが軽自動車サイズに合わせて最適化され、非常にスピーディにラインが流れていることが見て取れる。もし軽自動車から大型SUVまで混流生産しているようなラインであったならば、ここまでの最適化は難しいという印象を受けた。
ところで、フォードがはじめた大量生産においては、ベルトコンベアによる流れ作業だけでなく、部品を共通化することも効率アップにつながる要素となっていた。
この点において、EV時代には生産領域での大変革が起きる可能性がある。エンジン車では求められるパワーによってエンジン自体が異なっているが、EVは制御によって出力をいかようにも設定できるのでモーターの共通化が進んでいる。つまり、EVだけで多品種を混流生産するとなれば、エンジン車の混流生産より効率がアップする可能性がある。
また、EVはバッテリーと駆動ユニットによりプラットフォームを作り上げれば、自律走行で工場内を移動することも可能。そうなると、ベルトコンベアなしで流れ作業をできるようなラインも作れるし、自律走行で次の工程に進むとなれば、混流生産における作業効率の最適化もコントロールできることも期待される。
いずれにしても、EVだけの時代になれば、自動車工場の景色も大きく変わることになりそうだ。
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もしもしもし、多過ぎる。