もくじ
ー 「造りたい」という思いで開発するのがスポーツカー
ー プレミアムブランドにとって情緒的な価値の表現手段
ー スポーツカーがあると技術水準も高まる?
なぜそんなデザインに? 奇妙なインテリアのモデル 17選 後編
「造りたい」という思いで開発するのがスポーツカー
日本では以前から「スポーツカーが売れない」といわれていたが、同じようなことが海外にも当てはまる。
例えばフォード・マスタングやシボレー・カマロは、初代モデルに回帰したようなデザインでカスタマーにアピール。初代を運転した経験があったり、憧れた世代をターゲットにしている。
フォルクスワーゲンは、スポーティクーペを扱わなくなった。
しかしその一方で、トヨタは新たにスープラを発売した。スポーツカーは欧州のプレミアムブランドでも健在だ。そこでスポーツカーを手掛ける開発者に、存在理由を尋ねた。
「スポーツカーは理屈ではありません。メーカーの造りたいという思いで手掛ける商品なのです。ほかの大量に売れる車種で利益を上げて、スポーツカーを開発するという見方もできるでしょう」
「その意味では、F1に似ているかもしれませんね。そしてスポーツカーを造りたい気持ちは、そのままにしておくと、時間の経過に従って薄れてしまうもの。だからスポーツカーは、継続的に造り続けないといけません」
クルマは実用的な移動のツールだが、自分が一体化できる対象でもある。例えば狭い道で両脇に路上駐車したクルマが止まっている時など、ドアミラーと障害物の間隔を1cm程度まで詰めて通り抜けられる、といったように直感的に運転できることも多い。この時には、ドライバーの肩幅が、感覚的に車両の全幅に拡大されているわけだ。
モーターサイクルにも当てはまるが、このような一体になれるツールは特殊で、ドライバーが感情移入しやすい。クルマ好きが集まるメーカーも同じなのだろう。
もちろん商品である以上、利益を上げることが求められるが(稀に利益を無視したスポーツカーもあるが)、市場戦略よりも気持ちが先に立つ商品だ。
プレミアムブランドにとって情緒的な価値の表現手段
フォルクスワーゲンにスポーツカーはないが、メルセデス・ベンツやBMWには用意されている。レクサスにもクーペのRCがある。商品企画担当者に、プレミアムブランドにおけるスポーツカーの価値を尋ねた。
「プレミアムブランドには、ラグジュアリーな価値と、エモーショナル(情緒的)な価値が求められます。すべての車種がこの2つを兼ね備えますが、上級セダンは後席も広く、快適に移動するラグジュアリーな価値が強いです」
「一方、エモーショナルな価値を表現するのは、外観がカッコ良くて運転すると楽しいスポーツカーです。このような意味で、プレミアムブランドにはスポーツカーが不可欠になるのです」
またプレミアムブランドは、セダンを含めて販売台数が少ないため、1台当たりの粗利が多い。そうなると売れ行きが伸び悩むものの、スポーツカーを成立させやすい。
スポーツカーがあると技術水準も高まる?
DOHC(ツインカム)エンジン、スーパーチャージャー、ディスクブレーキといったメカニズムは、かつてスポーツカーから普及していった。
最新のメカニズムは、まず「走る実験室」と呼ばれたレーシングマシンで試され、そこからスポーツカーに採用された経緯がある。
今はクルマの進化もカテゴリーに応じて専門化されているから、スポーツカーの日産GT-Rで採用されたメカニズムが、軽自動車のデイズに直接普及していくことは考えにくい。
それでも例えば構造用接着剤の採用など、クルマ造りの手法とか考え方は、高性能なスポーツカーや高級セダンから採用されることもある。
そしてプレミアムブランドのスポーツカーには、先進メカニズムをいち早く採用した時代から継承されている車種も多い。例えばメルセデス・ベンツSLは、1950年代から用意されているスポーツカーだ。
BMWは新しい8シリーズがCSの流れを汲むスポーティクーペに位置付けられる。そこには「最高の走行性能を発揮するのはスポーツカー」という定石がある。
従ってプレミアムブランドは、スポーツカーが欠けるとバランスを欠いてしまうとも言える。特に今はSUVが加わり、そのほかのカテゴリーがセダン/ワゴン/ハッチバックでは、実用車の集まりになってしまう。ここにスポーツカー、あるいはクーペが加わると、華やかさが生まれるわけだ。
販売戦略的にもスポーツカーは欠かせない。プレミアムセダンをファーストカーとして所有するユーザーが、趣味で乗るクルマを求めると、スポーツカーが必要になるからだ。
この時にスポーツカーがないと、そのユーザーは別のブランドから探し、セダンと併せて2つのブランドを所有するだろう。その新たに購入したスポーツカーの担当セールスマンが有能だったらどうなるか?
ファーストカーのセダンまで、スポーツカーと同じブランドに変えられてしまうかも知れない。つまりプレミアムブランドでは、裕福な顧客のカーライフを独占したいから、スポーツカーを含めて高級車を幅広く扱う必要が生じる。
それでも一番大切なのは「スポーツカーを造りたい」メーカーと「スポーツカーを楽しみたい」ユーザーの想いだろう。だからスポーツカーを運転していると、出会ったことのない開発者と、話をしている気分になることがある。こんな時、自分がクルマ好きで良かったと思う。
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