SUV全盛時代とも言える昨今では、3列シートを備えた大人数乗車が可能なものも増えてきています。けれども、3列目があまりにも狭かったり、3列目を使用するとラゲッジルームがほとんど使えないなどといった、実用性に課題のあるSUVも少なくありません。本当に使える3列シートSUVはどのモデルなのでしょうか?
2022年3月現在、新車で購入可能な3列シートを備えた国産SUVには、トヨタ ランドクルーザー 、トヨタ ランドクルーザープラド、ホンダ CR-V、日産 エクストレイル、三菱 アウトランダーPHEV、マツダ CX-8などがあります。
これらの3列シートSUVの最大乗車定員はすべて7人乗りとなっています。ちなみに、かつてのランドクルーザーなどには8人乗り仕様がありましたが、現在日本国内で新車で購入可能なSUVに8人乗りのものはありません。そのため、8人乗りが必須という場合には、アルファードや、ノア、ヴォクシーのようなミニバンをチョイスする必要があります。
しかし、乗車定員が7人であるからといって、7人全員が快適に乗車できるわけではありません。基本的に、ほとんどのモデルが3列目を補助的な役割と位置付けており、大人が長時間乗車することを想定しているわけではありません。そのため、子ども専用席となっている場合や、そもそも折りたたんだままにして2列シートのミニバンとして利用しているケースも少なくないようです。
とはいえ、せっかく3列シートが備わっているのならぜひ有効活用したいものです。そこで、今回は各車の3列目シートの実用性について比較してみましょう。
●トヨタ ランドクルーザー
2021年6月に発表された新型ランドクルーザーは、全長4950mm×全幅1980mm×全高1925mmという国産車屈指の巨体を持っています。そのため、3列目シートにも期待が高まりますが、実際には大人が快適に過ごせる空間とは言えません。
3列目は、シート表面の素材こそ前席や2列目と同一ですが、シート自体は座面の薄い簡易的なものとなっています。また、床面も高くなっているため、平均的な身長の男性が乗ると膝を抱えるような姿勢となってしまいます。横幅はゆったりとしているのが救いではありますが、日常的に使用するのは難しそうです。
●トヨタ ランドクルーザープラド
ランドクルーザー プラドにも3列目が用意されています。ただ、こちらもやはり緊急用としてとらえるのがよさそうです。ランドクルーザー同様、シート表面の素材は前席や2列目と同じものが採用されていますが、座面は薄く、長時間乗車を想定されたつくりとはなっていません。また、床面が高いため「体育座り」のような姿勢となってしまうのもマイナスポイントです。
ランドクルーザープラドには、3列目を電動で格納できるボタンが用意されていたり、3列目を格納するとほぼフラットなラゲッジルームを作れたりするという特徴があります。そのため、ふだんは広大なラゲッジルームを活用し、いざという時に3列目を“登場”させるという使い方がベストのようです。
●ホンダ CR-V
アメリカを中心に人気の高いCR-Vは、国産車でありながらどことなくアメリカの匂いを感じるSUVですが、それは3列目にも表れています。CR-Vの全長は4605mmと、今回紹介する3列シートSUVの中では特別大きいボディを持っているわけではありません。にもかかわらず、意外と3列目に余裕があるのは、このクルマがアメリカを意識して開発されているからでしょう。
高級感があるわけではありませんが、幅広の3列目シートは大人の身体でもしっかりと受け止めてくれます。2列目を多少前方にスライドさせる必要はありますが、身長170cm程度までであれば、ある程度の余裕を持って座ることができます。その分、2列目のニースペースは狭くなってしまいますが、窮屈というほどではありません。
ただし、3列目を利用してしまうと、ラゲッジルームは軽自動車ほどのサイズとなってしまいます。トランクケースのような大きなものはもちろん、買い物袋ですらギリギリという点には注意が必要です。
●日産 エクストレイル
日産唯一の3列シートSUVであるエクストレイルですが、結論から言ってしまえば3列目の実用性はほとんどありません。2列目を前方に大きくスライドしたとしても、大人が3列目に乗車すると窮屈さを感じてしまわざるを得ず、乗車姿勢も膝を抱える形となってしまいます。
エクストレイルの大きな魅力のひとつは、スキーやサーフィンなどのアクティブな趣味を持つ人に向けた、使い勝手の良いラゲッジルームです。それを活かすためにも、エクストレイルの3列目はあまり使用しないほうが無難かもしれません。
●三菱 アウトランダーPHEV
2021年12月に発売されたばかりのアウトランダーPHEVは、プラグインハイブリッド車(PHV)でありながら、3列シートを備えたグレードが設定されています。
ほかのモデル同様、補助的な役割という印象は強いものの、横幅の広いシートの座り心地はそれほど悪くありません。3列目にもドリンクホルダーが備わっているため、使い勝手も悪くはありません。
また、スクエアなボディが特徴のアウトランダーPHEVは、3列目でも頭上に余裕があるのがうれしいところ。大柄な人では窮屈かもしれませんが、女性や子どもであれば、なんとか快適に過ごすことはできそうです。
●マツダ CX-8
今回紹介する3列シートSUVの中でも、最も快適な3列目を持つのがCX-8です。CX-8は4900mmというランドクルーザーにも匹敵する全長を持ち、ホイールベースも2930mmとクラストップレベルを誇ることから、大人が座っても3列目の足元にはある程度の余裕があります。
また、ほかのモデルとは異なり、前席や2列目と同等の質感を持つシートを採用していることも魅力です。ほかのメーカーとは異なり、3列シートミニバンをラインナップしていないマツダは、CX-8によってミニバン需要を満たすことを目指しています。そのため、補助的な役割という位置付けではなく、大人でも快適に乗車できる空間が目指されているといいます。
そのため、ほかの3列シートSUVに比べて、最も実用的な3列目を持ったクルマに仕上げられていると言えます。
●3列目は、実際にはほとんど使われない?
3列目を備えたSUVは増えつつありますが、日常的に3列目を利用している人はそれほど多くないと言われています。そのため、3列シートSUVを検討する場合は、3列目をどの程度利用する機会があるのかについて、しっかりと考えることが重要です。
もし、3列目を使う機会が少ないのであれば、5人乗りのSUVの方が選択肢は広がります。反対に、日常的に7人の大人が乗車するのであれば、ミニバンの方が使い勝手は良いかもしれません。
さまざまなパターンを想定したうえで、気になったモデルを比較検討し、実車も確認するのがオススメです。
文:ピーコックブルー
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