■メーカーが旧車の維持をサポートしている?
2021年3月17日に、日産は女優の伊藤かずえさんの愛車である初代「シーマ」のレストアをおこなうと発表し、大いに話題となりました。
新車から30年乗り続けている伊藤さんのシーマがSNSで話題となったことを受けた、異例の事態といえますが、実は各メーカーはこうした旧車のサポートをすでにおこなっているのです。
近年、1980年代から1990年代に生産された高性能車の人気が世界的に高まっていますが、こうしたクルマを維持するうえでユーザーを悩ますのが部品の供給状況で、生産終了から数年後から「欠品」する部品が増加します。
一般的な消耗品は欠品するケースは少ないのですが、ボディパネルや内装部品、樹脂部品などは早期に欠品してしまうのが通例です。
修理可能なもの以外では旧車ユーザー同士で手持ちの部品を工面したり、社外品の活用や、なかには愛好家が集まって工場に部品の製造を依頼するケースもあります。
一方で、そうした状況を察知したメーカーも動き出しており、部品の再生産やレストアサービスを展開。
そこで、メーカーによる旧車サポートの事例を、5つピックアップして紹介します。
●ホンダ「NSXリフレッシュプラン」&部品再生産
1990年にホンダは、和製スーパーカーと呼ぶべき初代「NSX」を発売。280馬力(MT車)を発揮する新開発の3リッターV型6気筒DOHC VTECエンジンをリアミッドシップに搭載し、世界初のオールアルミ製モノコックシャシを採用するなど、エポックメイキングなスポーツカーとして、世界中で人気を獲得しました。
このNSX発売から3年後の1993年に、ホンダは「NSXリフレッシュプラン」を開始。あくまでもレストアではなく、NSXのパフォーマンスをリフレッシュによって維持するという目的でした。
NSXリフレッシュプランはNSXの生まれ故郷である栃木県塩谷郡高根沢で今も続いており、さまざまなメニューが用意され、ボディやエンジン、足まわりなど個別のリフレッシュが可能。
とくにアルミモノコックの修復や調整は一般の修理工場では難しいとされていますが、高根沢のファクトリーでは対応しています。
現在、NSXリフレッシュプランへの入庫は約12か月待ちとアナウンスされていますが、ホンダの歴史的なモデルである初代NSXオーナーには強い味方ではないでしょうか。
また、1991年から1996年まで生産された軽スポーツカーの「ビート」についても、数多くの愛好家がいることや現存数も多いという状況から、2017年に一部部品の再生産を開始。
再生産が決定した部品はホンダのホームページで随時アナウンスされ、続々と再生産部品の種類が増えています。
●トヨタ「GRヘリテージパーツプロジェクト」
トヨタがモータースポーツ活動から得られたノウハウを、市販車へフィードバックする目的で誕生したハイパフォーマンスカーブランドの「GR」では、16年ぶりに復活した「スープラ」や、ラリーマシンのベースにもなる「GRヤリス」が代表的な存在です。
一方で、2020年1月には旧型車の部品を再販する「GRヘリテージパーツプロジェクト」も開始されました。
まずは世界的に人気となっている「A70型/A80型スープラ」の部品を復刻し、プロペラシャフト、ドアハンドル、ヘッドライトユニット、ブレーキブースターなどの受注を開始しています。
そして、2020年7月にはトヨタ「2000GT」の生産終了から50年を機に部品の復刻をスタート。トランスミッションのギヤやオイルシール、ガスケット類、ファイナルギヤなどを当時の図面から新規で製作し、供給も始まりました。
さらに、ユーザーが復刻してほしい部品のリクエストも受け付けており、GRヘリテージパーツのホームページにリクエストフォームが用意されているなど、さらなる復刻部品や車種の拡大が期待されます。
●マツダ「NAロードスターレストアサービス」&部品再生産
1989年には発売されたユーノス「ロードスター」は、世界中でヒットしたことからオープンスポーツカー・ムーブメントを巻き起こした立役者です。
この初代ロードスターは1998年に生産を終了していますが今も人気が高く、数多くの愛好家が存在することから、マツダは2017年に「NAロードスターレストアサービス」を開始しました。
また、レストアサービスだけでなく、ハンドルやシフトノブ、フロアマット、ソフトトップ、そのほか補修用部品を復刻。
さらに、マツダとブリヂストンが共同で、初代ロードスター発売当時の純正タイヤ「SF-325」を復刻して販売するなど、これまでにない取り組みも始まりました。
レストアのメニューは全塗装や復刻したソフトトップへの張替えなどを含む基本メニューがあり、ほかに内装、エンジン、サスペンションといった個別のオプションメニューが設定されています。
基本メニューと全オプションがセットになった「フルレストア」も受け付けており、費用は494万2000円から(消費税込)とかなり高額ですが、ボディからパワートレイン、内装までがほぼ新車レベルまで蘇るといいます。
この取り組み以外にも、2019年12月には、量産車世界初のロータリーエンジン搭載車という歴史的なモデル「コスモスポーツ」のブレーキパーツがオーナーズクラブのリクエストによって復刻されるなど、旧車サポートが拡大中です。
■最新技術を駆使して旧車パーツを再生産!?
●日産「NISMOヘリテージパーツ」&「NISMOレストアードカー」
1989年に発売された「R32型 スカイラインGT-R」は、16年ぶりとなるGT-R復活を果たした記念すべきモデルで、その後もR33型、R34型と新世代スカイラインGT-Rの系譜は続きましたが、2002年に歴史に幕を閉じました。
近年は世界的にスカイラインGT-Rが注目されたことで価格が異常なまでに高騰してしまいましたが、長年乗り続けているユーザーも数多く存在します。
そうした背景から2017年12月に、日産、ニスモ、オーテックジャパンの3社が共同で、R32型 スカイラインGT-Rの部品の再生産・販売を開始。2018年にはR33型、R34型にも拡大しました。
当初はワイヤーハーネス、ホース/チューブ類、エンブレムなど、約80点の部品からでしたが、バンパーやエンブレムなどの外装部品は新品が早期に欠品となっていたため、オーナーには吉報だったことでしょう。
そして、2021年3月15日には新技術である「対向式ダイレス成形」と、3Dプリンター技術を活用したNISMOヘリテージパーツを発表。
対向式ダイレス成形とはボディパネルの少量生産に対応する技術として2019年10月に発表され、棒状の工具を取りつけたロボットがパネルを徐々に変形させて成形するというものです。
通常、ボディパネルは非常に高価な金型を使ったプレス加工によって生産されますが、少量生産にはコスト的に不向きで、対向式ダイレス成形ならば比較的安価に少量生産が可能です。
なお、現在再販中のNISMOヘリテージパーツは約300点にもなっており、再生産品では対応できない一部の部品は、修理での対応もおこなわれています。
また、ニスモは2020年12月に、R32型/R33型/R34型スカイラインGT-Rを対象としたレストアサービス「NISMO restored car(レストアードカー)」を開始。
視覚的にきれいにするレストではなく、性能も可視化してレストアするという新たな試みで、とくにボディのレストアは基準値に基づいたニスモにしか出来ないレベルといいます。
NISMOレストアードカーはコンプリートカーとしての販売だけでなく、ユーザーのクルマをベースしたレストアも可能となっており、費用はベース車両のコンディションや作業内容により異なるとのことですが、かなり高額なのは間違いないでしょう。
●ボルボ「クラシックガレージ」
これまで、国産メーカーの旧車サポートを紹介してきましたが、欧州メーカーでは古くから同様の取り組みが始まっていました。
とくに少量生産の高額なモデルを中心にレストアサービスがおこなわれていますが、ボルボ・カー・ジャパンは2016年8月から、レストアサービスの「KLASSISK GARAGE(クラシックガレージ)」を開始しています。
ユーザーのクラシックボルボを預かってレストアや修理、リフレッシュをおこなうのと同時に、中古車をレストアして再商品化するプロジェクトとしてスタート。
現在は作業人数の関係からレストア済み中古車の販売が中心で、一般修理の入庫を制限している状況ですが、プロジェクトとしては非常に順調に推移しているといいます。
スタート直後から入庫数は順調に伸びており、2016年は38台、2017年は81台、2019年は69台の修理/メンテナンスを実施。さらにレストアした車両は19台を販売した実績があります。
ちなみに、レストアで商品化された車両は、「240GLワゴン(1991年)」や「850T5-R(1995年)」、「960SXエステート(1993年)」、「780クーペ(1990年)」、「P1800ES(1973年)」など、ステーションワゴンからセダン、クーペまで幅広い車種を展開。
レストア済み中古車の価格について例を挙げると、当時の車両価格が580万円だった1998年製「S90クラシック」が237万円と、比較的リーズナブルといえます。
※ ※ ※
今回、紹介したメーカーによる旧車維持のサポートは、ボルボを除いて車種が限定されています。
比較的現存数が多く愛好家も多い車種ばかりなので、部品の再生産やレストアサービスは理にかなっているといえますが、そうではないマイナーなモデルや、愛好家が少ないモデルでは、こうした対応は難しい状況です。
しかし、日産の対向式ダイレス成形や3Dプリンターの活用は、マイナーモデルでも対応可能なため、今後は状況が変わっていくかもしれません。
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みんなのコメント
ほとんどの1990~2000年頃の走りクルマの「種」はリーマンショックの
国の新車購入補助制度がスクラップ証を要したので、ブーム衰退も手伝い
生贄にもってこいだった。
32GT-Rは現在もかなり残っているが、GT-Sターボは当時生産数を遥かに
上回っているのに、中古市場にほとんど残っていない。
共有部品もかなりあったのに、ほとんどがスクラップにされちまったん
だな・・・?アレ、ホントにイイクルマよ?
窮状にヒトは狂って取り返しのつかない事を良くする。
そしたら70スープラを売らないで済んだと思います。