De Tomaso Pantera
デ・トマソ パンテーラ
ピニンファリーナ バティスタ 完全解説。1900psを誇るハイパーEVを分析する
イタリアとアメリカの合作によって誕生
1970年代にイタリアとアメリカの合作として大きな成功を収めたスーパーカー。イタリアをアレッサンドロ・デ・トマソが率いた「デ・トマソ」、そしてアメリカをリー・アイアコッカというイタリア系アメリカ人が絶対的な権力を持つ「フォード」という言葉に置き換えれば、それがデ・トマソ・パンテーラであることは、スーパーカーファンには容易に想像することができるだろう。
実際にこのプロジェクトを推進する立場にあったアメリカは、スーパーカーにとって世界で最も大きな市場であり、アメリカでの成功は、すなわちグローバルで成功と同義であった。フォードはアメリカ国内に数多くあるリンカーン、そしてマーキュリーのディーラーネットワークを通じて「パンテーラ」をそれまでのスーパーカーの常識からは考えられないほどの低価格で販売することを計画したのだった。それは同様にエンジンをミッドシップし、レースシーンにおいてフェラーリなどのライバルと激しい戦いを演じた、あのフォードGTからのDNAを感じさせるスタイルを持つものでなければならなかった。
トム・チャウダーによるスーパーカーらしいスタイリング
パンテーラのデザインは、イタリアのカロッツェリア・ギアに委ねられ。チーフ・スタイリストのトム・チャーダによって描き出されたボディは、ミッドシップ・スポーツらしいスパルタンなフィニッシュだ。GT40にも共通する、速さや力強さを感じさせるスーパーカーとして洗練されたスタイルを持ち合わせている。
350psを発揮する“クリーブランド”エンジン
ミッドに搭載されたエンジンは、当時、最高出力350ps、最大トルクが451Nmと発表された5.8リッターV型8気筒OHV。アメリカ車のファンにとっては、その生産工場がオハイオ州のクリーブランドにあることから“クリーブランド”のニックネームで呼ばれる非常にポピュラーなエンジンとして知られている。組み合わせられるトランスミッションは5速MT。潤滑は一般的なウエットサンプであるため、重心はスーパーカーとしてはやや高い位置にある。
他のスーパーカーの半額程度でヒットするも・・・
パンテーラの開発中に、すでにデ・トマソはフォード傘下に収まるが、1971年に発売されたパンテーラは、フォードの狙いどおりのセールスを見せる。その最大の要因はやはりリーズナブルな価格で、一般的にスーパーカーと呼ばれるブランドに対して、パンテーラは半額程度のプライスが設定されていたし、さらにアメリカではポピュラーなクリーブランド・エンジンを搭載していたことから、整備性の高さも人気の理由にはあった。
だが、パンテーラにとっての不運は、思わぬところから訪れる。オイルショックに端を発するオイルショックの影響から、パンテーラのみならずスーパーカーのセールスは大幅な落ち込みを見せる。それでもなおパンテーラは1990年代まで、さまざまなバリエーションを生み出しながら生産を続けていく。ファイナルモデルとなったSI=ヌォーバ・パンテーラは、基本的なシルエットはそのままに、マルッチェロ・ガンディーニによる、エクステリアとインテリアの斬新な見直しを行ったモデル。マスタング用に開発された5リッターV型8気筒OHVエンジンを搭載しているものの、最高出力247psと、それまでよりも抑えられてしまった。
文/山崎元裕(Motohiro YAMAZAKI)
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