トヨタ ヤリスハイブリッド 「コンパクトハッチバックの主力モデル」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

西村 直人
西村 直人(著者の記事一覧
交通コメンテーター
評価

4

デザイン
4
走行性能
4
乗り心地
3
積載性
3
燃費
5
価格
5

コンパクトハッチバックの主力モデル

2024.1.29

年式
2020年2月〜モデル
総評
2020年2月に「ヤリス」として登場したコンパクトハッチバックモデル。TNGA思想によるGA-Bプラットフォームに新開発の1.5L 3気筒エンジンを組み合わせ、WLTC値で36.0km/Lを記録する。そして2024年1月、ヤリスが小変更を受けた。グリルを中心に外観を変更し、先進安全技術のセンサー認識対象範囲を拡大。また、サブスクリプションサービス「KINTO UnLimited」の第2弾としてUグレードを設定した。
満足している点
ハイブリッドとガソリンモデルがあるが、価格とのバランスが良いのはガソリンモデルだ。直列3気筒DOHC 1.5L直噴ガソリン「M15A-FKS」型エンジンは、120PS/145Nmを発生。これに発進用のギヤを組み込んだCVT「Direct Shift-CVT」と6速MTを組み合わせる。走行性能が高いだけでなく、実用燃費がとてもいい。WLTC値はCVTモデルで21.3km/Lだが、これは掛け値なしで容易に達成できる。
不満な点
走行性能が高く、燃費数値も良好ながら、割り切りがスゴい。それらは性能に影響がないものの、所有欲という部分で少しがっかりする。端的に、目に触れない部分のコストダウンが激しいのだ。エンジンルームの塗色塗り分けやスイッチ類の操作フィールなど、あと少し良くなるだけでグッと総合力が高まるはず……。なので余計に惜しい。160万円台で1.5L主力モデル(CVT)が購入できるが、質感はそれなりだ。
デザイン

4

シンプルで飽きのこないデザイン。多人数乗車のミニバンはコンパクトクラスでも背が高いことが条件になるが、5名乗車のヤリスは実質、前席の2名が快適に移動できて荷物がそれなりに積み込めれば良いということから、デザインにも余裕がある。わかりやすくスマートで、愛くるしいところがあるのだ。小変更でグリル形状が変更された。個人的には従来型のスッキリとしたデザインを好むが、上質感という意味で向上した。
走行性能

4

1.5Lガソリンは発進時から力強い。低速域でのトルクが豊かであること、さらにロングストローク型(ボア×ストローク比1.21)であるためとてもよく粘る。ギヤ機構付自動無段変速機である「Direct Shift-CVT」は、タイヤひと転がり目の力強さを決める駆動力の伝達効率が大きく向上し、出足からスッと車速が伸びていく。ハイブリッドは走りの良さを30%程度向上させたイメージ。出足からすこぶる速く、頼もしい。
乗り心地

3

ガソリン/ハイブリッドモデルともに軽さが際立ち、エンジン特性と同じくコシのある粘っこい乗り味が印象的。具体的には、少し大きなクルマを運転しているような感覚が得られる。これにはシートの表皮やクッション特性も効いていて、座面、背もたれともに柔らかな減衰特性が得られる。よって、乗り始めた瞬間から、身体全体がコシのあるグミに包まれているような感覚が得られる。ただし、後席はやや突き上げが厳しい。
積載性

3

ボディサイズからすれば優秀。ラゲッジルーム容量は、FFモデルで最大270L、E-Fourと4WDモデルで同じく209Lだ。6:4の分割可倒式リヤシートを倒すと最大長は1333mm、最大幅は1153mm、高さは831mmと、容量こそ限られるが工夫を凝らせば荷物の積み込みも困らない。ラゲッジルームの床面高さを2段階に調整できる「アジャスタブルデッキボード」をグレード別装備、もしくはセットオプションとして備える。
燃費

5

燃費性能は群を抜いている。小変更前モデルで、筆者の実測値ながら、ガソリンモデルで23km/L台、ハイブリッドモデルにおいては33km/L台を記録している。計測は満タン法なので多少の誤差はあるが、車載の燃費計ともほぼ合致しているので信憑性は高い。どこまで伸びるのかハイブリッドモデルでエコ走行にチャレンジしたところ、70kmほど走らせて44.0km/Lを達成した。これはもう250cc単気筒バイク並である。
価格

5

1.0LのXグレード150万1000円〜1.5LハイブリッドのZグレード(E-Four)269万4000円まで取りそろえる。軽自動車のスーパーハイトワゴンモデルでターボ+4WDが230万円台となる昨今、トップグレードでも260万円台は相当高い価格競争力がある。ただし、ベストバイは1.5Lガソリンモデルとしたい。ハイブリッドモデルとの価格差34.2万円(ともにZグレード)をランニングコストに回したいからだ。
西村 直人
西村 直人
交通コメンテーター
WRカーやF1、MotoGPマシンのサーキット走行をこなし、4&2輪のアマチュアレースにも参戦。物流や環境に関する取材を多数。大型商用車の開発業務も担当。国土交通省「スマートウェイ検討委員会」、警察庁「UTMS懇談会」に出席。自動運転技術の研修会(公的/教育/民間)における講師を継続。警視庁の安全運転管理者法定講習における講師。近著は「2020年、人工知能は車を運転するのか」(インプレス刊)。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員日本自動車ジャーナリスト協会会員
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