トヨタ ヤリスハイブリッド 「車載計での実測44.0km/Lと驚愕の燃費」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

西村 直人
西村 直人(著者の記事一覧
交通コメンテーター
評価

5

デザイン
4
走行性能
5
乗り心地
4
積載性
3
燃費
5
価格
4

車載計での実測44.0km/Lと驚愕の燃費

2022.6.24

年式
2020年2月〜モデル
総評
初代ヤリスは日本名「ヴィッツ」として導入。現行モデルと同じく、小さいけど魅力がぎっしり詰まったクルマだった。派生車としてセダンの「プラッツ」、トールミニバンの先駆け「ファンカーゴ」があった。筆者はファンカーゴの広大なラゲッジルームに惹かれて購入したが、目的を明確に開発されたクルマの利便性はここまで高いのかと感心した次第。ヤリスハイブリッドは市場が求める最高のコンパクトカーだ。
満足している点
スタイル、走り、実用燃費。これに尽きる。ハイブリッドシステムにしても普段通りの運転操作から、走る楽しさを十分に堪能できる。TNGAの設計思想をふんだんに採り入れたボディは高剛性を誇るからサーキット走行でも音を上げない。価格も安価だ。トヨタの誇る先進安全技術をフル装備するとなるとベースグレードから30万円ほど出費がかさむが、それでもコストパフォーマンスは十分に高い。
不満な点
わかっているものの車内は狭い。具体的には前席2名乗車であれば何ら問題ないのだが、常に3名で乗車するとなると後席の乗員からは不満の声が聞こえてくる。後席はシートサイズが小さく、ドア開口部も若干狭いため乗り降りが少々きつい。後席を倒せばラゲッジルームの容量を確保できるが素のままだと狭い。もっともトヨタはそれを承知の上で、「広さをお望みならアクアを!」とのこと。納得だ。
デザイン

4

ギュッと固まり感のあるデザインだ。ヘッドライトを切れ長としながらグリルの開口部を大きくする流れは、トヨタ各モデルが採用するキーンルックから派生した新しい手法である。真横から見るとルーフが小さく、必然的にキャビンが狭いように思えるが、実際は必要十分な広さがある。たとえばドアを大きくえぐることで空間には余裕がうまれた。標準/ハイブリッドモデルの識別点は少なく、リヤバッジくらいだ。
走行性能

5

直列3気筒1.5Lにハイブリッドシステムを組み合わせる。はっきりと力強い。モーター駆動からスタートして30km/h程度でエンジンが始動し駆動を加勢。その後の勢いは歴代プリウスはおろか、2.5Lハイブリッドシステムを搭載する各モデルに近いものがある。試乗した「X」グレードは1050kgの車両重量はガソリン1.5Lの同グレードの60kg増しに留まる。スポーツハイブリッドと呼べる一台だ。
乗り心地

4

ガソリンとハイブリッドを同一ボディで乗り比べると、大概はガソリンの乗り心地が光る。軽さに加えて、重量物であるバッテリーや補機類が乗り心地を左右する後輪軸付近に集中するからだ。一転、ヤリスは違う。ハイブリッドでも乗り心地が悪化しない。もっといえば、しなやかさはハイブリッドがガソリンを上回るシーンがある。勝因はヤリスが採用する許容度の高いダブルウイッシュボーン式リヤサスにある。
積載性

3

ここはヤリスが割り切ったところだ。高い走行性能、前席での優れた空間設計、そして人目を惹き付けるデザインを得た代わりにラゲッジルーム容量は小さい。ただ、ダブルウイッシュボーン式リヤサスながらもラゲッジルームへの張り出しが少なく、その意味では積載性そのものは悪くない。絶対的な容量が不足気味ということだ。もっとも6:4分割可倒式リヤシートを倒せば十分なスペースが誕生する。
燃費

5

タイトルの44.0km/Lは筆者が実際に都内から郊外へ都市高速と一般道路を使って得た数値だ。車載の燃費計の数値ながら驚愕だ。帰路、都内への道程は渋滞路にも遭遇しつつ走行性能の確認も行ったので悪化したが、合計220kmに渡る試乗で給油したレギュラーガソリンは7L弱。32.0km/L近く走った。ガソリンモデルも燃費数値は優秀でハイブリッドの75%程度の数値を記録する。
価格

4

試乗したハイブリッドのXグレードは1,998,000円と大台を切ってきた。実用燃費を考えれば最高のコストパフォーマンスとランニングコストを発揮する一台だ。先進安全技術のうちBSMやパーキングサポートブレーキがオプション装備となるものの、実質的にはフロアマットとETC、そしてドラレコを付ければ最高の移動手段となること間違いなし。しかも、運転していて楽しいから所有満足度も高い。
西村 直人
西村 直人
交通コメンテーター
WRカーやF1、MotoGPマシンのサーキット走行をこなし、4&2輪のアマチュアレースにも参戦。物流や環境に関する取材を多数。大型商用車の開発業務も担当。国土交通省「スマートウェイ検討委員会」、警察庁「UTMS懇談会」に出席。自動運転技術の研修会(公的/教育/民間)における講師を継続。警視庁の安全運転管理者法定講習における講師。近著は「2020年、人工知能は車を運転するのか」(インプレス刊)。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員日本自動車ジャーナリスト協会会員
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