トヨタ ヤリス 「“便利さ”から“楽しさ”へ生まれ変わったヤリス」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

“便利さ”から“楽しさ”へ生まれ変わったヤリス

2021.1.23

年式

2020年2月〜モデル

総評

これまでのトヨタのコンパクトカーは、小さいながらも、ひとクラス上の広さや利便性を追求するモデルが多かったが、ヤリスはむしろそういった潮流を断ち切り、コンパクトカーらしい運転して楽しいモデルへと舵を切った。もちろん便利なクルマも大切だが、近年のクルマで「使い勝手が悪い！」「作りがひどい！」というクルマはそうそうない。そういった利便性は、既に必要十分。「こんな風に便利に使えるんですよ〜」というテレビショッピング的なクルマづくりを見直して、クルマの本質で真っ向勝負に出たヤリスに対して、大手を振って称賛したい。

満足している点

日本のコンパクトカーの中でも、飛び抜けたハンドリングの良さは◎。運転する楽しさや気持ちよさに振り切って開発されていて、余計な雑音がなく、個人的にはこれくらい割り切って作られているモデルが好きだ。

不満な点

「クルマを運転している時の安心感やワクワク感はいらない！クルマはただの便利な道具！」という方にとって、ヤリスは、競合他車と比較したら「狭い」「荷物が載せられない」というネガティブな印象が強いと思う。個人的には、利便性に関してはそこまで気にならないタイプなので、3点に留めておく。

デザイン

3

一目見ただけで、元気の良さや遊び心が感じられる抑揚のあるデザイン。白や黒、シルバーなどの一般的なボディカラーよりも、カラフルな色の方がそのデザインに映えそう。2トーンカラーが充実しているのも◯。より走りの良さを印象づけるような挑戦的な表情も特徴のひとつ。ただ、近年のトヨタのデザインフィロソフィーである、インパクトのあるフロントマスクが苦手な人には不向きかも…。

走行性能

4

先代のヴィッツと比較すると、「ここまでドライバーズカーに仕上げるか！」と驚くほど、走りの良さはピカイチ。コンパクトカーならではの小回りの良さに加え、右へ左へ自在に取り回せるハンドリングは爽快の一言。運転が苦手な人でも「普段より運転が怖くなくなった」「なんだか運転が楽しくなった」と感じられる人も増えそうだ。

乗り心地

3

運転するにはとても軽快で楽しいクルマだが、その走行性能を優先しているせいか、乗り心地は少々硬め。クルマ好きや若い人たちなどにとっては気にならないかもしれないが、年配の方や車酔いしやすい人などを乗せる時には気を使いそう。

積載性

3

コンパクトな取り回しの良さ、楽しいクルマ作りにこだわったからこそ、無駄な要素は排除されているヤリス。それもあって、荷室の容量も切り詰められているようだ。同クラスのコンパクトカーの積載量と比較すると、どうしても劣ってしまう。ただ、どんなクルマでも荷室いっぱいいっぱいに荷物を搭載することは稀。それを考えると、コンパクトカーとしては十分な積載量だと感じる。

燃費

5

パワートレインのラインナップは、1.0L／1.5L／1.5Lハイブリッド。ガソリンモデルでもWLTCモードで20km/Lを超える燃費を叩き出してしまうところはさすがトヨタ！新開発の『ダイナミックフォースエンジン』は、低速トルクは太く、燃費も抜群。ただ、試乗してみると、発進からある程度のスピードまでは、パワーがありすぎるほどドンと加速するのだが、中速から高速にかけては、アクセルペダルを踏み込んだ量に対して、ちょっと加速を渋る時がある。床まで踏んでしまえば、また思いっきり加速してくれるのだが、おそらく燃費が重視された結果、燃料の噴射を抑えたバランスになっているのかもしれないと感じた。

価格

4

ハイブリッド以外は、車両本体価格が200万円以内に収まっていて、コンパクトカーらしく、誰でも手に入れやすい価格帯になっているのは◎。個人的には、これだけトヨタの新技術が詰まっていて、この価格は正直安い。トヨタの思い入れもとても強いクルマだと思うので、迷っている人も買って後悔することはまずなさそう。