トヨタ ランドクルーザー300 「ランクルらしさを色濃く残し、時代に適した進化」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

ランクルらしさを色濃く残し、時代に適した進化

2022.6.20

年式

2021年8月〜モデル

総評

色々と話題が絶えない新型モデルであるが、話題やインパクトから受ける印象は様々だと思う。しかし、実際に見たり乗ったりしてみて思うのは自動車、そしてオフロードが得意な車両として、基本的な性能をしっかりと磨き上げて進化してきたということだろう。車体の大幅な軽量化や一新したパワートレインは、時代の進化を大幅に感じるものとなっている。興味ある人は大勢いると思うが、まずは先代ユーザーに実際に見てほしいと思わせるモデルだ。

満足している点

なんといっても悪路での走行性能が高いこと。まずはこれに尽きるだろう。ステータスさ高級感など見栄で乗るというユーザーもいるかもしれないが、ランドクルーザーに最も求められる性能は悪路での走行性能なのである。そのような点が変わっていない点は流石と言える。また、新しいパワートレインも良い。10速ATで確実にトルクを使えるのはもちろん、想像以上に静かでシームレスに仕上がっている。パワートレインだけで言えばサルーンにだって引けを取らない。

不満な点

ランドクルーザーの宿命とも言える状況だが、出たばかりの現行モデルが中古市場で異様な高値となっていることと、注文しても4年もの納車待ちとなることだろう。これは仕方がないとしか言いようがないし、メーカーの努力だけでは解決できることではない。そのほか、クルマだけで言えばオンロードでの乗り心地が気になるという声があるかもしれないが、それならば同じ金額でもっと快適なクルマは他にあるというコメントになってしまう。

デザイン

5

SUVが世界的なトレンドとなり、クロスカントリー走行を得意としていそうなデザインを持つSUVも増えてきた。そのような世の中の流れの中でランドクルーザーらしさを表現しつつも、新世代モデルらしい先進的なイメージを上手く両立したデザインだと感じる。存在感ばっちりのデザインだが、実際に乗って見るとボディサイズの感覚もつかみやすいあたりは、機能性が高く道具としての性能もしっかりと考えられたデザインだと思わせる。

走行性能

4

オフロードでの走行性能、というか走破性は文句ないと言えるだろう。むしろこのクルマで文句あったら他に選択肢はあるのだろうか。オンロードでの走行性能は思ったほど悪くないといった印象だ。大幅な軽量化を実現したためかハンドリングフィーリングも重量級SUVにしては悪くはない、パワーユニットもガソリンであっても車重に対して十分にトルクフルと感じる。ペダル類のフィーリングも適度に重たく自然な印象で、見た目のインパクトをイメージしてオンロードを運転すると、割と普通のクルマという感じでビックリする。

乗り心地

3

純粋なオンロードでの乗り心地だけで言えば、モノコックボディを有するSUVには敵わない。全体的な路面からの入力はソフトで角が丸い印象を受けるものの、リア周りの振動の収束はどこか違和感があるというか、一発ではすべてが収まり切らない感じがある。ただ、高いオフロード性能を有していることを考えると、オンロードでの乗り心地は比較的高いところに位置していると思う。話題性やインパクト、ステータスからオンロードで乗ることが多くなるユーザーもいるかもしれないが、あくまでもオフロードが主戦場であることを考えてほしい。このクルマよりもオンロードでの快適な移動が得意なSUVは他にもたくさんある。

積載性

2

でっかいボディから荷物もたくさん積めると思ってしまいがちかもしれないが、そのイメージから想像してラゲッジスペースを見てみると思ったより狭いかもと感じてしまうかもしれない。確かにボディサイズが大きいのでラゲッジスペースは広いという印象を受けるが、高さがあまりなく、床下収納スペースも特段ない。横幅も全幅の割には狭いと感じる。ラダーフレームの継続などが大きく影響していると思われる。この点も悪路での走行性能を優先した結果と言えるだろう。

燃費

3

悪条件でも確実な信頼性で無事に帰る。ランドクルーザーとはそういった性能が求められるクルマ。そのためハイブリットシステムなどの複雑になるメカニズムは採用されなかった。そのため燃費性能は正直いって期待してはいけない。WLTCモードでディーゼル9.7㎞/L、ガソリン7.9㎞/Lという数値だ。しかし、先代モデルに比べると確実に改善している。むしろ約2.5トンの車重でこれだけの燃費性能を確保しているのは大健闘とも言えるだろう。

価格

4

どうしても中古市場での異常な高価格が話題となってしまうが、エントリーグレード500万円＋α、中間グレード600万円＋α、上級グレード700万円＋α、トップグレード800万円という価格帯は良心的と言えるのではないだろうか。確かにトップグレードの割高感は否めないし先代に比べて高くなっているが、大幅なプラットホームとパワートレインの刷新を考えるとエントリーグレードが500万円前半で狙えるというのはお買い得感があると思う。必要な装備でグレードをしっかりと吟味すれば割と現実的な選択肢と言えよう。