ポルシェ カイエン 「SUVの姿をしたスーパースポーツ」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

SUVの姿をしたスーパースポーツ

2023.3.9

年式

2017年10月〜モデル

総評

ほかのハイパフォーマンス系SUVに比べ派手さはないが、只者ではない雰囲気のエクステリアとレーシーなインテリア、そして圧巻のパフォーマンスはまさにSUVの姿をした911。どんな速度でもひたすらドライバーの意図に忠実で、寸分の遅れなく動くその走りはまさにポルシェ的。それでいて、大人4人がしっかりと乗れてラゲッジスペースも実用的、乗り心地も不満はほとんどなく、カイエンのトップグレードに相応しい、全てを兼ね備えた1台となっている。（担当：TAKASHI）

満足している点

大型エアインテークや22インチの大径ホイール、そのスポークから覗くイエローのブレーキキャリパーや“ポルシェらしい”可変スポイラー、専用のチタン製エクゾーストが奏でるサウンドやアルカンターラ貼りのレーシーなインテリアなど、走り出す前から気分を高めてくれるギミックが満載。走り出すと、ホールド性の高いセミバケットシートからの視界が高いだけで、スポーツカーの名門が造った、SUVとは思えない驚異の走りを味わうことができる。

不満な点

好みの問題ではあるが、ストイックにパフォーマンスを追求しているため、見た目の派手さや未来感、わかりやすいラグジュアリーさは薄く質実剛健といった印象。 クーペライクなデザインを採用し、ボディサイズから考えればトランクはやや狭く床面も高いので、使い勝手を求めるならば購入前にチェックすることをオススメする。

デザイン

4

エクステリア、インテリアともに派手さはないが、機能的で質実剛健なポルシェらしいデザインは好みが分かれるところ。アルカンターラ貼りのインテリアや、可変スポイラーといったポルシェらしいギミックも備え、スポーツカー好き、走り好きの琴線をくすぐる演出が多数盛り込まれている。

走行性能

5

1μmハンドルを切る（触れる）だけで車体が反応し“念ずれば曲がる”と錯覚するかのような一体感がありながら、神経質な動きが一切ないのはポルシェならでは。最高出力640馬力を発揮するV8ツインターボの加速力は圧巻だが、パワーデリバリーの緻密さは普段使いでも全く苦にならない。ドライバーの意図にどこまでも忠実なスポーツドライビングを、どんなシチュエーションでも味わうことができる。

乗り心地

4

22インチの大径タイヤにサーキット走行にも対応するスポーツタイヤを組み合わせ、硬く締まった足回りながらも、アダプティブエアサスペンションをコンフォートにすれば実用上は十分及第点。路面の細かい凹凸は拾うが、圧巻の走りから想像するとむしろ驚異的とも言える。

積載性

3

ボディサイズからすれば、クーペライクなルーフラインと高い床面のせいもありややコンパクト。気になるなら購入前にぜひチェックしたい。

燃費

1

短時間の試乗のため実燃費は未計測だが、カタログスペックは7.0km/Lほど。現代の基準に照らせば極悪と言わざるを得ないが、それだけパフォーマンスに全振りしているとも言える。エコも求めるユーザーのために、ポルシェはハイブリッドモデルを用意しているし、何より次期カイエンは全てのグレードでハイブリッドを含む電動モデルとなるハズなので、ピュアエンジンの放つ640PS/850Nmの暴力的な加速を味わうには最後のチャンスと言えるのかもしれない。

価格

4

圧巻のパフォーマンスと、それでいながら大人4人が乗れる高い実用性からすれば決して高くはないのだろうが、庶民の感覚からすれば、今回の試乗車がオプションだけで国産ミニバンが1台買えるほどの金額になっているのには眩暈がしてしまう。オプションを付けると想定よりも値段が跳ね上がるのは輸入車の宿命か。