2019年7月
■2019年7月
ポルシェジャパンは、「911カレラ」をフルモデルチェンジした。先行して「911カレラS」、「カレラ4S」を2019年1月30日に受注開始し、同年7月5日に発売した。
8世代目となる911シリーズは、従来まで一部モデルだけだったワイドボディを全モデルに採用。後輪のトレッドを拡大し、バランスを取るために前輪のトレッドも全モデルで拡大。装着されるホイールもフロントは20インチ、リヤを21インチとした。
ボディにはアルミなどを多用することで軽量化を行い、サイズ拡大に伴う重量増を相殺。ボディ単体重量は先代よりも12kg軽い240kgとする一方、ボディの曲げ剛性とねじり剛性をそれぞれ5%向上させている。さらにリヤスポイラーをはじめとする空力パーツを電子制御化することで走行安定性と燃費のバランスを最適化したという。
エクステリアはひと目で911だとわかるもので、新型では曲線や直線をよりシンプルに表現する一方、ワイドなボディを力強い造形で包み込むことで存在感のあるスタイリングに仕立てられている。インテリアでは1970年代の911をモチーフとした水平基調のダッシュボードを採用。10.9インチの大型モニターを装着し、センターのタコメーター以外をデジタル化することで先進的なイメージに仕立てられている。
新型911では初のラインアップとなった「カレラS」、「カレラ4S」には、これまでと同様に3.0リッター水平対向6気筒ターボエンジンを搭載。ターボチャージャーを大型化して過給圧を高めたほか、吸排気系の効率を高めることで従来型を30ps/30Nm上まわる、最高出力450ps/6500rpm、最大トルク530Nm/2300~5000rpmの最大トルクを発生。組み合わされるのは8速デュアルクラッチトランスミッション(PDK)のみとなっている。
安全運転支援システムで注目したいのは新開発のウェットモードで、路面の水を検知し、それに基づいてコントロールシステムが調節されるという。また、衝突被害軽減ブレーキ、自動再発進機能付きアダプティブクルーズコントロール、レーンキープアシストを装備するほか、84素子のLEDを用いたマトリックスLEDヘッドライトなども採用された。
コネクティッド機能も進化しており、スマートフォンを通じてドアの施錠状態や駐車位置を確認できるほか、ナビゲーションシステム、エアコン、オーディオなどを音声で操作するボイスコントロールも充実。万一の事故の際もポルシェアシスタンスに連絡できる機能も装備されている。
ボディサイズは全長4519mm×全幅1852mm×全高1300mm、ホイールベース2450mm。0-100㎞/h加速はカレラ4Sで3.6秒(スポーツクロノパッケージ装着車3.4秒)、カレラSでは3.7秒(スポーツクロノパッケージ装着車3.5秒、最高速はカレラ4Sで306㎞/h、カレラSでは308㎞/hと発表されている。日本仕様は右ハンドルのみが設定される。
■2020年5月
ポルシェジャパンは、「911タルガ4」と「911タルガ4S」の予約受注を2020年5月18日に開始した。
■2020年6月
ポルシェジャパンは、「911タルガ」に特別仕様車「911タルガ4S ヘリテージデザインエディション」を設定して、2020年6月2日に予約受注を開始した。社内コードネームと同じ992台限定で生産される。
「911タルガ4S ヘリテージデザインエディション」は直近に導入された8世代目の新型「911タルガ4S」をベースに、1950年代と1960年代初頭のデザインエレメントを備えた特別仕様車。歴史的なエクステリアとインテリアのデザインエレメントが、ポルシェエクスクルーシブマニュファクチャーのリミテッドエディションとして再解釈され、最新テクノロジーと組み合わせている。
ボディカラーは専用塗装のチェリーメタリックと他の4種類を設定し、ゴールドのロゴをあしらって、1950年代をイメージした外観に仕上げている。エクステリアは、独特な歴史的テーマのホワイトのカラーリングを施した。フロントフェンダーの槍型グラフィックは、ポルシェモータースポーツの黎明期を想起させる。さらなるハイライトは、ラゲッジコンパートメントグリルのポルシェヘリテージバッジで、これは10万kmを走行したときに授与されたポルシェ356のバッジを連想させる。またボンネットやステアリングホイール、ホイールセンターキャップ、車両キーには1963年当時のポルシェクレストをあしらった。この歴史的モチーフは、エンボスヘッドレストとキーポーチにもエンボス加工され、標準装備の20/21インチカレラエクスクルーシブデザインホイールやクラシックな外観のブラック塗装ブレーキキャリパーなどによって、さらに強調されている。
インテリアは、ボルドーレッドレザーかブラックレザーとアタカマベージュのOLEAクラブレザーを組み合わせた。またシートとドアトリムへのコーデュロイの使用は、ポルシェ356に使用されていた素材への回帰と、1950年代の時代精神と流行の復活を意味する。。グリーンで照明されるクラシックな外観のレブカウンターとストップウォッチは、マイクロファイバーファブリックによるパンチングルーフライナーや広範なエクスクルーシブマニュファクチャーレザートリムとともに、コンセプトのエモーショナルな特質を強調。ダッシュボードトリムパネルの金属製エンブレムには、リミテッドエディションナンバーを記載した。
■2020年7月
ポルシェジャパンは、「ポルシェ911」シリーズに「911ターボ」を2020年7月16日に追加、同日より予約受注を開始した。
新たに設定された911ターボは、先代に対して30kW(40ps)、40Nm上まわる最高出力427kW(580ps)、最大トルク750Nmを発生する。専用設定の8速PDKとの組み合わせにより0-100km/h加速は先代を0.2秒上まわる2.8秒、最高速320km/hの性能をもたらすという。
3.7リッターの水平対向6気筒エンジンは電子制御バイパスバルブ付きシンメトリカルVTGターボを備え、インタークーラーとピエゾインジェクター採用と合わせ、動力性能、レスポンス、吹き上がりを向上させている。
ボディはフロントホイールでの幅が45㎜拡大されて1840㎜に、リヤアクスル間は20㎜拡大されて全幅は1900㎜になった。フロントにはPDLS Plus付きLEDヘッドライトを、電子制御の冷却用のエアフラップ、大型化されたアクティブフロントスポイラーと、同様に大型化された可変リヤスポイラーを備える。
スポーツ走行から快適性重視まで幅広く対応するPASMシャシーを標準装備しており、より硬質かつ車高が10㎜低くなるPASMスポーツサスペンションをオプションで用意する。ブレーキはフロントにねずみ鋳鉄製で直径408㎜、リヤには380㎜のブレーキディスクを装着。オプションでPDCC油圧アクティブロール制御システムとPCCBセラミックブレーキシステムが選択できる。
インテリアは911カレラと同じく、ポルシェアドバンストコックピット、ダイレクトタッチコントロールを装備する。14ウェイ電動スポーツシート、スポーツクロノパッケージ、シフトパドル、マルチファンクション/モードスイッチ付きGTスポーツステアリングホイール、BOSEサラウンドサウンドシステムは標準装備。アダプティブクルーズコントロール、レーンキープアシスト、ナイトビジョンアシスト、Burmesterハイエンドサラウンドサウンドシステムなどのオプションも用意されている。
■2021年4月
ポルシェジャパンは、911に「GT3」を設定して、2021年4月7日に予約受注を開始した。
■2021年6月
ポルシェジャパンは、911に「GT3 ツーリングパッケージ」を設定して、2021年6月16日に予約受注を開始した。
「GT3ツーリングパッケージ」と通常の「GT3」との最も大きな違いは、固定式リヤウイングの削除。自動展開するリアスポイラーを装備して、高速走行時に必要なダウンフォースを発生する。またサイドウインドウにハイグロスアルマイト製シルバーカラーのトリムストリップを採用。フロントエンドは、ボディカラーと同色にフル塗装した。
インテリアは、専用でエレガントなブラックのエクステンデッドレザーアイテムを使用。ダッシュボード前部とドアトリムパネル上部セクションには、特殊エンボス加工を施した。
同年6月23日には、新型「911カレラGTS」、「911カレラ4GTS」および「911 タルガ4GTS」の予約受注を開始した。
タイプ992の発売からおよそ2年半を経て発表された「911カレラGTS/911カレラ4GTS/911タルガ4GTS」は、911シリーズに対して運動性能を向上させたスポーティバージョンとなる。
リヤに搭載される3.0リッター水平対向6気筒ツインターボエンジンは最高出力で先代を22kW(30ps)上まわる353kW(480ps)、最大トルクでも20Nm上まわる570Nmを発生する。8速デュアルクラッチトランスミッション(PDK)の911カレラ4GTSクーペの0-100km/h加速タイムは先代を0.3秒上まわる3.3秒。シリーズには後輪駆動の911カレラGTS専用装備として、ショートストロークの7速MTも設定されている。
足まわりは「ポルシェアクティブサスペンションマネジメント(PASM)」が標準装備となり、10㎜低く設定されたスポーツシャシーが組み合わされる。
エクステリアはスポイラーリップ、センターロック式軽合金製ホイール、エンジンフードルーバー、ドアと車両リヤの“GTS”ロゴがサテンブラックで塗装される。これらとその他のディテールをハイグロスブラックで仕上げたエクステリアパッケージも用意されている。また、ヘッドライトとリムのデイタイムランニングライトの周囲はダークカラーとなり、「ポルシェダイナミックライトシステムプラス(PDLSプラス)」を組み込んだLEDヘッドライトが標準装備となる。テールライトはGTSモデル独自のデザインとなっている。
インテリアは電動4ウェイ調節機能を備えた「スポーツシートプラス」、「GTスポーツステアリングホイール」、「モードスイッチ付きスポーツクロノパッケージ」、「ポルシェトラックプレジションアプリ」、タイヤ温度表示が標準装備。車内の断熱材を削減することでエンジンサウンドを“強化”していることも見逃せない。ハンドル位置は左右どちらでも選択可能だ。
■2022年1月
ポルシェジャパンは、「911」に特別仕様車「911 エディション 50イヤーズ ポルシェデザイン」を設定して、2022年1月19日に750台限定で予約受注を開始した。
「911 エディション 50イヤーズ ポルシェデザイン」は、ポルシェデザインの50周年を記念した特別仕様車。「911 タルガ 4 GTS」をベースに、オールブラックのエクステリアや、クラシックなチェック柄のSport-Texシートセンター、スポーツクロノパッケージ(標準装備)のレッドの秒針のポルシェデザイン サブセカンドクロックなど、フェルディナンド・アレクサンダー・ポルシェのアイコニックなデザインにインスパイアされた装備を備えている。
またF.A ポルシェが1972年にデザインした腕時計「クロノグラフI」と同じカラーを採用して、エクステリアとインテリアの両方にブラックを使用。プラチナサテン仕上げの“Porsche Design”ロゴ入りのクラシックなサイドストライプを施した。タルガバーもレーザー加工を施したプラチナサテン仕上げとした。“targa”ロゴはマットブラック仕上げで、リアエンジンカバーのグリルには、F.A.ポルシェのシグネチャーと“Porsche Design 50th Anniversary”バッジをあしらった。
■2022年4月
ポルシェは、4モデルの導入を予定しているヘリテージデザインストラテジーにおける2番目のモデルとなる「911 スポーツクラシック」を2022年4月28日に発表した。世界限定1250台で販売される。
今回発売された「911 スポーツクラシック」は、ポルシェのカスタム部門「ポルシェエクスクルーシブマニュファクチャー」によって、1960~70年代のスタイルを再定義した特別な限定モデル。2009年にデビューしたタイプ997ベースの先代911スポーツクラシックと同様、1964年から1973年に渡って生産された初代911と、1972年に発表された911カレラRS2.7にインスパイアされたデザインを採用。ダックテールスポイラーやダブルバブルルーフなどを装備している。
インテリアは、初期911の特徴である千鳥格子をドアパネルやシート中央部分に配置。またアニリンレザーを使用したブラックとコニャックの2トーンレザーを採用した。
パワーユニットは、550PSの最高出力を発揮するツインターボの3.8リッター水平対向6気筒エンジンで、リヤホイールを駆動する。変速機はシフトダウン時にエンジン回転数を調整する自動ブリッピング機能を採用した7速マニュアルトランスミッションである。またショックアブソーバーの硬さを状況に合わせて瞬時に調整するポルシェアクティブサスペンションマネージメント(PASM)や、車高を10㎜下げたスポーツサスペンションを標準装備した。
ボディカラーは、スポーツグレーをはじめ、ブラックやアゲートグレー、ゲンチアンブルーメタリックをラインナップ。ボンネットからルーフ、リアスポイラーにかけて、スポーツグレーで2本のストライプがペイントされている。
■2022年8月
ポルシェジャパンは、新型「911 GT3 RS」を導入して、2022年8月18日に発表、同日に予約受注を開始した。
「911 GT3 RS」は、競技専用車両である「911 GT3 R」をインスパイアして開発されたスポーツカーだ。ベースとなった「911 GT3」と比較して、4リッターエンジンは386kW(525PS)までパワーアップしているが、それ以上に大幅なパフォーマンス向上のベースとなっているのがセンターラジエーターコンセプトだ。同コンセプトは、ル・マン24時間レースにおいてクラス優勝を飾った「911 RSR」に初めて使用された後、「911 GT3 R」にも採用された。以前の車両に見られた3つのラジエーターレイアウトの代わりに、ラゲッジコンパートメントがあるノーズの中に、傾斜した大型のセンターラジエーターを配置している。両サイドにできたスペースを使用して、アクティブエアロダイナミクスエレメントを統合することが可能となり、フロントの無段階調節式ウイングエレメントと2分割リアウイングは、他の多数の空力対策との組み合わせで、200km/h時に合計409kgのダウンフォースを発生。それは、先代の991.2世代の2倍、現行の911 GT3の3倍に達し、285km/h時のダウンフォースは計860kgにおよぶという。
また、ポルシェの市販車として初めてドラッグリダクションシステム(DRS)を装備。DRSとは、サーキットのストレートセクションで空気抵抗を抑えて高速を得るために、特定の作動範囲内においてスイッチを押すだけでウイングをフラットにする機能だ。その逆のエアブレーキ機能は、高速走行中の緊急ブレーキ時に作動。フロントとリアのウイングエレメントが最大に設定され、空力による減速効果を生み出す。
エクステリアでもっとも特徴的なのは、固定式メインウイングと、油圧調節式アッパーウイングエレメントで構成されたスワンネック支持のリアウイングだ。寸法が大幅に拡大され、ポルシェの市販車で初めて、リアウイングの上端が車両ルーフよりも高く設定されている。さらに、フロントエンドからフロントスポイラーが削除された代わりに、空気の流れを上下に分割するフロントスプリッターを装備した。またル・マン覇者の「911 GT1」のスタイルを踏襲したフロントホイール後方のインレットは、ホイールアーチの動圧を低減。リアホイールアーチには、エアフローを最適化するためのインテークとサイドブレードが装備されている。
サスペンションも空力性能を重視しており、ホイールアーチは強力な空気の流れにさらされるため、フロントのダブルウィッシュボーンサスペンションは、ティアドロップ形のプロファイルで設計され、最高速度でのフロントアクスルのダウンフォースを約40kgアップするという。
軽量化も入念である。ドアやフロントフェンダー、ルーフ、フロントリッドをはじめ、標準装備のフルバケットシートなどのインテリアにも軽量なCFRPを使用するなど、1450kgの車両重量(DIN)に抑えられている。
インテリアは、ブラックレザーやRacetex、カーボン織り目仕上げにより、スポーティな雰囲気を演出。スチール製ロールオーバーバーやドライバー用6点式シートベルトが含まれるクラブスポーツパッケージを無料オプションで設定した。また有料オプションで、フロントリッドやルーフ、リアウイングのパーツ、カーボン織り目仕上げのエクステリアミラーのアッパーシェル、CFRP製のフロントとリアのスタビライザーやリアカップリングロッド、リアアクスルのシアーパネル、ロールオーバーバー、8kg軽量化されるマグネシウム鍛造ホイールなどがセットになった「ヴァイザッハパッケージ」が用意されている。
■2022年10月
ポルシェジャパンは、「911」シリーズに新型「911カレラT」を設定して、2022年10月19日に予約受注を開始した。
新たに設定された「911カレラT」の「T」は「ツーリング」を意味し、スポーティな装備を備えたピュアなドライビングフィールを凝縮したモデルという。「911カレラ」と「911カレラS」の中間に位置づけられ、911カレラから引き継がれた最高出力283kW(385PS)、最大トルク450Nmを発生するツインターボエンジンを搭載し、0-100km/h加速は4.5秒、最高速度は291km/hに達するという。リミテッドスリップリアディファレンシャルを備えたポルシェトルクベクトリング(PTV)やスポーツクロノパッケージ、PASMスポーツサスペンション(-10mm)を標準装備している。また、従来はカレラS以上のモデルにしか装備されなかったリアアクスルステアリングもオプションで設定している。
さらに専用装備として、フロントは20インチ、リアは21インチのチタニウムグレー カレラSホイールに、それぞれ245/35(フロント)と305/30(リア)サイズのタイヤを装着。GTスポーツステアリングホイールやスポーツエグゾーストシステム、スポーツシートプラス(電動4ウェイ)も標準で備えている。マニュアルトランスミッション仕様車の車両重量は、現行モデルの911最軽量の1470kg。リアシートと遮音材の削減に加え、軽量ガラスや軽量バッテリーを採用して軽量化を図っている。
ボディカラーは、4色のソリッドカラー(ブラック、ホワイト、ガーズレッド、レーシングイエロー)と、4色のメタリックカラー(ディープブラック、ゲンチアンブルー、アイスグレー、GTシルバー)をラインナップ。スペシャルカラーとして、チョーク、ルビースターネオ、カーマインレッド、シャークブルー、パイソングリーンの5色を設定した。さらに、110種類を超える色調の塗装がそろった「ペイントトゥサンプル」プログラムも利用可能となっている。
■2022年11月
ポルシェジャパンは、「911」シリーズに新型「911ダカール」を設定し、2022年11月17日に2500台限定で販売を開始した。
ロサンゼルスモーターショーでワールドプレミアとなった同モデルは、公道およびオフロードでこれまでにない高い走破性を実現した4WDモデル。1984年パリ-ダカールラリーにおけるポルシェ初の総合優勝を彷彿とさせる「ラリーデザインパッケージ」もオプションで用意される。
今回のモデルは、「911カレラ」のスポーツサスペンション仕様車と比較して50mm高い車高を持つ。加えて、特別装備される「リフトシステム」により、さらに30mm車高を上昇させることが可能となっている。170km/h以下の領域では、「ハイレベル」設定でオフロード走行を積極的に楽しむことができ、速度が170km/hを超えると車高は自動的に通常の位置まで下降するという。
タイヤも過酷なオフロード走行へ対応するために専用開発された「ピレリ スコーピオン オールテレインプラスタイヤ」を採用。補強されたサイドウォールとスレッドは2層のカーカスプライで構成され、高い耐カット性を備え、難易度の高い地形にも最適な設計になっているという。「ピレリPゼロ」のサマータイヤとウインタータイヤにも、この2層のカーカスプライを備えた仕様がオプション設定されるが、標準装備の全地形対応タイヤは公道でもスポーツカーのようなダイナミクスを提供可能だとしている。
3.0リッター6気筒ツインターボエンジンは、カレラSを上回る最高出力 480PS(353kW)、最大トルク570Nmを発揮。100km/hまで3.4秒という加速タイムもカレラS以上だが、最高速度は全地形対応タイヤを装備するため240km/hに制限される。加えて、8速PDKとポルシェ4WDシステムが採用され、リアアクスルステアリングや、「911 GT3」から採用されたエンジンマウント、「PDCCアンチロールスタビリティシステム」も標準装備となっている。
また、ステアリングホイールのロータリースイッチで選択可能な二つの新しいドライビングモードもオフロード性能の最大化に寄与する。「ラリーモード」は起伏のある緩い地面に最適なモードで、リア重視の4WD制御である一方、「オフロードモード」では車高が自動的に上昇し、複雑な地形や砂地でトラクションを最大限に引き出す。また、両モードに新たに「ラリーローンチコントロール」が備わり、約20%のホイールの空転を許容することで、緩い地面での加速をより鋭いものとするという。
装備面では、新開発のCFRP製固定式軽量リアスポイラーと、「911 GT3」から採用されたエアアウトレットが特徴のCFRP製フロントラゲッジコンパートメントリッドを特別装備。また、フロントとリアのレッドのアルミニウム製けん引バー、ワイドなホイールウェルとシル、フロント、リア、サイドシルのステンレススチール製保護エレメントなど、オフロード用パーツも備える。さらに、フロントエンドのサイドエアインテークは、ステンレススチール製グリルを採用し、オフロード走行時の飛石からの保護性を高めている。
ルーフにはオプションであるルーフバスケットのヘッドライト用12V電源コンセントが設置される。42kgの耐荷重を備えたこのキャリアには、燃料や水筒、折りたたみ式シャベル、トラクションボードなどのラリー装備を積載することが可能だ。さらに、テクイップメントとしてルーフテントも用意される。
インテリアではフルバケットシートを標準装備し、リアシートを取り除いた2シーター仕様として、スポーツ性を高めた。軽量ガラスと軽量バッテリーの採用による軽量化で、車両重量は「911 カレラ 4 GTS(PDK仕様)」よりわずか10kg重い1,605kgとなっている。また、特徴的なシェイドグリーンのデコレーティブステッチを施した「Race-Tex」トリムを特別装備するほか、エクステリアのメタリック仕上げも今回の限定車専用だ。
エクステリアでは1984 年パリ-ダカールラリーの優勝車の外観を再現した「ラリーデザインパッケージ」がオプション設定される。これは、ポルシェとしては初となるツートンカラー塗装とラッピングの組み合わせを採用した「ホワイト/ジェンシャンブルーメタリック」を基調しており、車両のサイドには1から999までのレースナンバーを選択することができる。また、レッドとゴールドのデコレーティブストライプのほか、ドアには「Roughroads」ロゴがあしらわれる。また、ロールオーバーバー、6点式シートベルトを備えた「ラリースポーツパッケージ」もオプション設定される。
■2023年8月
ポルシェジャパンは2023年8月2日、「911」の誕生60周年を記念する限定モデル「911 S/T」を発表し、受注を開始した。世界全体で1963台限定となっている。
今回の限定モデルは、初代「911 S(ST)」のスピリットを受け継ぎ、「911 GT3」をベースにサーキットではなく一般道でのドライビングプレジャーに焦点を当てた記念モデルだ。フロントボンネットやルーフ等へのカーボンファイバー強化プラスチック(CFRP)の採用、軽量ガラス、超軽量マグネシウムホイールの装備や、インシュレータの削減等により軽量化を図った。車両重量は1380kg(DIN規格、すべてのフルードを含む)と、マニュアル仕様の「911 GT3 ツーリング」よりも40kg軽量化されており、992型の911モデルにおいて最軽量となっている。
パワートレインは、これまで「911 GT3」に搭載されていた最高出力386kW(525PS)を発生する自然吸気の水平対向6気筒4.0リッターエンジンに、6速MTを組み合わせる。今回のモデルのために軽量クラッチが新開発され、シングルマスフライホイールとの組み合わせにより回転質量が10.5kg軽量化している。応答性が向上しており、0-100km/h加速は3.7秒、最高速度は300km/hを実現している。
エアロダイナミクスについてもサーキットではなく公道向けに最適化され、展開式リアスポイラーのガーニーフラップ、20インチ(フロント)と21インチ(リア)の軽量センターロック式マグネシウムホイールを標準装備する。また、CFRP製フルバケットシートが標準装備だが、追加料金なしで4way調節機能付スポーツシートプラスが装着可能だ。インストルメントクラスターとスポーツクロノパッケージに含まれる時計は、クラシックなグリーンのポルシェカラーで仕上げられている。そのほか、オプションとして1960年代後半から1970年代前半の「911 S」のレーシングバージョンからインスピレーションを得たエクスエリアカラーやマテリアルが採用される「ヘリテージデザインパッケージ」も用意される。