メルセデス・ベンツ Eクラス セダン 「電動アシストで往年の大排気量感を演出」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

電動アシストで往年の大排気量感を演出

2024.4.30

年式

2024年2月〜モデル

総評

Eクラスはセダンモデルのベンチマークとして長らく君臨してきた。今やセダンボディの優位性はSUVに押され気味ながら、まだまだ欧州市場ではベーシックなクルマとして不可欠な存在だ。電動化を大々的に掲げたメルセデス・ベンツながら、Eクラスは電動アシスト化された内燃機関を新型の主力に据えた。ガソリンとディーゼル、ともに4気筒だ。

満足している点

往年のメルセデス・ベンツはしっとりとした乗り味が特徴だった。それがここ10年ほどは各国のスポーツセダンにならい、やや尖った部分が目立った。新型Eクラスは、大排気量エンジン時代に好評だった上質な出力特性を、2.0Lエンジン＋複数の電動化アシストで再現した。乗り味もゆったりとしたものへと変化させてきた。

不満な点

走行性能はゆったり、そしてパワフル。先進安全技術も世界トップクラス。言うことなしのように思えるが、じつはメルセデス・ベンツらしくない部分がひとつだけある。それは視界の悪さだ。日本の道路環境ではドアミラー部分の死角が大きく、側方にしてもウエストラインとの関係からか視界があまりよくない。これまで大切にされてきただけに残念。

デザイン

3

伸びやかなデザインは見た目だけでなく各部の空力バランスを考慮した高度な設計だ。アルミホイールは従来型からそうだが整流効果を狙ったデザインだ。インテリアでは運転席の12.3インチに加え、センターと助手席には異なるサイズの2つの液晶画面を用いた。情報量は増えたし、ステアリングスイッチも操作性に優れるが、やや煩雑になった。

走行性能

5

試乗したのはセダンがE350eスポーツ・エディションスター、ステーションワゴンが220（ISG）。セダンはPHVモデルで2.0Lガソリンターボに129PS／440N・mの電動モーターで加勢。V6／3.5Lのような加速フィールだ。ワゴンは同じ2.0Lに23PS／205N・mをプラス。発進から40km/h程度までのアシストが強めだ。

乗り心地

4

セダンはエアサスペンションということもあり、フラットな路面ではものすごく上質な乗り味だ。連続する路面の段差では装着タイヤとの関係でバネ下がバタつく印象が出てしまうが、概ね良好。ワゴンは通常のコイル／ダンパーだが、軽快感があり、むしろ好印象。試乗時は空荷だったが積載性を考慮しつつも突き上げは最小限だった。

積載性

3

セダンはPHVモデルということもあり、バッテリーや補機類がトランクルームにせり出している。ただ、従来型のPHVモデルと比較するとトランク容量は大きく拡大した。ワゴンは相変わらず使い勝手に優れ、広さも十分。Cクラスとは荷室容量が大きくことなり、感覚的には1.3倍程度、積載できそうだ。もう少し高さにゆとりがあれば、さらにいい。

燃費

3

PHVのカタログ記載のWLTC値が12.7km/L。ベースのガソリンモデルE200（ISG）が15.7km/Lなので疑問がわくだろう。たしかにそうだが、実際にPHVを市街地で走らせると18km/L台を記録した。開発陣いわく、実際の道路環境に合わせた設定にしたとのこと。素のガソリンを同じ環境で比較したら14km/L台。納得の値だ。

価格

3

むやみに高額でないのは承知ながら、セダンのボトムグレードで894万円、ワゴンでは928万円とすぐには手が届かない額面になった。このボトムグレードにそれなりのオプションを加えるとプラス250万円程度にまでふくれ上がる。売れ筋にはならないだろうが、本国に用意のあるベーシックグレードがセダンだけでもあれば良いと思う。