レクサス LM 「「LMでなければならない理由」はあるか?」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

瓜生洋明
瓜生洋明(著者の記事一覧
自動車ジャーナリスト
評価

3

デザイン
4
走行性能
3
乗り心地
5
積載性
3
燃費
3
価格
2

「LMでなければならない理由」はあるか?

2024.9.30

年式
2023年10月〜モデル
総評
後部座席の快適さは言うまでもなく、その点だけを求めるならLMは最高の選択肢のひとつだろう。ただ実際には、アルファード/ヴェルファイア、あるいはプレミアムブランドのサルーンやSUVといった非常に多くのライバルと比較検討すると、「LMでなければならない理由」がなければ手を出しにくいモデルであることも事実だ。逆に言えば、それが明確であるならば、LMは唯一無二の選択肢になるだろう。
満足している点
広さと質感、機能性が非常に高いレベルで融合した室内空間は、トップクラスの居心地のよさを持っている。この室内空間に不満を持つユーザーは皆無だろう。
不満な点
「LMでなければならない理由」が見つけにくい点だ。具体的に言えば、アルファード/ヴェルファイアと比較すると割高であり、プレミアムブランドにおけるサルーンやSUVのフラッグシップモデルと比較すると割安という、中途半端なポジションとなってしまっている。2024年5月に6人乗りの「version L」が追加されたことでその傾向はさらに強まった。
デザイン

4

プラットフォームを共有するアルファード/ヴェルファイアとの差別化が必要なことは理解できるが、風船をふくらませたようなシルエットはやや不格好に感じる。フロントマスクに逆スラント型のノーズを用いたアルファード/ヴェルファイアのデザインが非常に優れているだけに少々残念だ。一方、インテリアのデザインはアルファード/ヴェルファイアはもちろん、プレミアムブランドのサルーンやSUVと比べても秀逸だ。複数の素材を組み合わせたその上質な空間は、モダンかつ穏やかな印象を与えており、LMのコンセプトのひとつである「素に戻れる空間」を見事に体現している。LMのインテリアデザインは、当代随一と言って間違いないだろう。
走行性能

3

剛性の高いボディや専用のサスペンションは、後部座席の乗り心地のよさだけでなく、ドライバビリティにも大きく影響する。とはいえ、この手のクルマでドライバビリティをどれだけ優先する必要があるのかは疑問だ。さまざまなドライブモードのほかに、いわゆる「パドルシフト」なども搭載されているが、やや蛇足であるようにも感じる。逆説的ではあるが、機能を充実させたことで、かえってLMのキャラクターをぼやけさせてしまっているのかもしれない。
乗り心地

5

乗り心地のよさを構成する要素は数多くあるが、LMはそのいずれも非常に高いレベルにあると言える。たとえば、剛性の高いボディは不快な微振動と騒音を見事に打ち消してくれるし、しなやかなサスペンションの働きによってミニバンにありがちなロール感もほとんど感じない。もちろん、プレミアムブランドのサルーンやSUVにもこのような傾向は見られるが、LMの場合はそこに「圧倒的な室内空間の広さ」が加わる。やはり、広さは正義であるのだ。
積載性

3

広大な室内空間を持つものの、そのほとんどは乗員用に充てられているため、ラゲッジルームのスペースはそれほど大きくない。とはいえ、通常時でも9.5インチのゴルフバッグを4つ収納できるスペースは確保できているので、日常的な利用において困ることはほとんどなさそうだ。細かな収納スペースは豊富に用意されており、居心地のよい空間を演出するのに一役買うことだろう。
燃費

3

市街地や高速道路を含めた実際の燃費は10km/L程度。アルファード/ヴェルファイアと比べて見劣りするのは否めないが、プレミアムブランドのフルサイズSUVなどと比べるとかなりの低燃費だ。このあたりも、比較検討する対象によって大きく印象が異なる部分と言えそう。
価格

2

4人乗りの「EXECUTIVE」が2000万円、6人乗りの「version L」でも1500万円という価格は、ミニバンとしては高価でありながらプレミアムブランドのショーファーモデルとしては安価という、やや中途半端な設定だ。超高級ミニバンとしては唯一無二の存在だが、実際にはアルファード/ヴェルファイア、あるいは欧米のプレミアムブランドのサルーンやSUVなどと比較検討されることを考えると、コストパフォーマンスに優れた1台とは言えないだろう。
瓜生洋明
瓜生洋明
自動車ジャーナリスト
1987年生まれ。大手IT企業や外資系出版社を経て2017年に株式会社ピーコックブルーを創業。現在では平均年齢25歳のメンバーとともに毎月300本超の記事を配信している。愛車のボディカラーを社名にするほどのエンスージアストだが、新しいテクノロジーへの関心も強く、最新モデルは常にチェックしている。
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